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『お母さんが一緒』(7月12日公開)

(C)2024 松竹ブロードキャスティング
親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。長女・弥生(江口のりこ)は美人姉妹といわれる妹たちにコンプレックスを持ち、次女・愛美(内田慈)は優等生の長女と比べられたせいで能力を発揮できなかった恨みを心の奥に抱えている。三女・清美(古川琴音)はそんな姉たちを冷めた目で観察する。
「母親みたいな人生を送りたくない」という共通の思いを持つ3人は、宿の一室で母親への愚痴を爆発させているうちにエスカレート。互いをののしり合う修羅場と化す。そこへ清美がサプライズで呼んだ恋人のタカヒロ(青山フォール勝ち)が現れ、事態は思わぬ方向へと展開していく。
橋口亮輔の9年ぶりの監督作となるホームドラマ。ペヤンヌマキ主宰の演劇ユニット「ブス会」が2015年に上演した同名舞台を基に橋口監督が自ら脚色を書き、「ホームドラマチャンネル」が制作したドラマシリーズを再編集して映画化。
この映画のキャッチコピーに、「家族ってわずらわしくて、厄介で、それでもやっぱり、いとおしい」とあるが、これは山田洋次監督の『東京家族』(13)の「家族って、やっかいだけど、いとおしい」とよく似ている。
また、三姉妹の乱闘・罵倒のシーンは、「男はつらいよ」シリーズの家族げんかのシーンをほうふつとさせるところがあるなど、橋口監督の映画から山田監督の映画を思い浮かべることは意外な驚きだった。だが橋口監督によれば、意識したのは山田映画ではなく、兄と妹が激しいけんかを繰り広げる成瀬巳喜男監督の『あにいもうと』(53)だという。
そんなこの映画は、性格の違う三者三様の姉妹、そこに天然なのか賢いのか分からない三女の恋人が絡むことで生じる空回りやズレの面白さが見どころの一つ。演じる4人が醸し出すアンサンブルも面白い。
肝心の「お母さん」が登場せず、姉妹の会話から想像させるところには、やはり“主役”が姿を現さない往年の名画『三人の妻への手紙』(49)のことを思い出した。
女性(姉妹)独特の心理やコンプレックス、一重と二重、付けまつげ、鼻に付けたティッシュなどのディテールは、男にはなかなか分からなかったり、気付かなかったりするところ。そうした描写も興味深く映った。
(田中雄二)
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