「この映画を作りながら、プリンスが僕の人生を変えてくれたと言っても過言ではありません」『プリンス ビューティフル・ストレンジ』ダニエル・ドール監督【インタビュー】

2024年6月14日 / 08:00

-最近はミュージシャンの伝記映画も数多く作られていますが、劇映画ではなくドキュメンタリーだからこそ見えてくるものがあるとも感じました。

 おっしゃる通りです。最初は、プリンスの周りにいたコミュニティーの人たちにインタビューをしたいと思っていましたが、割と閉鎖的というか、皆あまり話をしたがらないんです。実際に、昔からプリンスのことを知っている人たちの中には、彼の悪いところや汚いところを強調する人たちが結構多かった。例えば、彼がドラッグの中毒で死んでしまったとか、悪い方向に話を持っていってしまうんです。僕は、この映画を通して、プリンスが素晴らしい人物だったことを描きたかったし、純粋に彼をたたえる映画にしたいと思っていたので、そうした思いをコミュニティーの人たちに伝えると、「今までそんなふうに取材をする人はいなかった」と。そこから皆さん打ち解けて、さまざまな真実を語り始めてくれました。正しい意図を伝えたことで、周囲の人たちが真実を提供してくれたと思いました。

-この映画を撮り終えてどんな思いがありましたか。

 プリンスは、もちろん才能あふれる人ではありましたが、もちろん人間なので、何かしらのあらがあったり、何かしらの失敗もしてきた人ではありました。ただ、彼はそこをうまく解消して、消化していったというふうに感じました。それをファンの人たちもよく理解していたのではないかと思います。今までいろいろな映像を制作してきましたが、この映画は、僕にとって一番大切なドキュメンタリーになったと思います。どちらかというと彼の音楽よりも、彼の人間性に引かれたところが多かった気がします。この映画を作りながら、彼が僕の人生を変えてくれたと言っても過言ではありません。僕をよりよい人間にしてくれたと思っています。

-最後に、この映画の見どころを。

 この映画の一番の見どころというか、大切なところは、スパイク・モスという人物の存在だと思います。彼はとてもいいボクサーだったので、ムハマド・アリのようになってもおかしくはなかったのに、彼はその道を行かずに、ストリートにいる子どもたちをいい方向に導きたいという強い信念によって、「ザ・ウェイ」というコミュニティーセンターを作り上げました。そこで、子どもたちがアイデンティティーを形成していく手助けをし、彼らの成長に多大な貢献をしてきた人物です。彼はプリンスにとってはメンター(師)であったばかりでなく父親的な存在でもあったし、「ザ・ウェイ」は後に議員になった人や著名な映画監督、ミュージシャンなども輩出しています。僕もそうしたコミュニティーセンターを作る手助けをしていきたいと思っています。そうした考えに至ったのも、スパイク・モスという素晴らしい人がいたからです。ですから、この映画ではスパイク・モスという人物がかなり大きな存在になっていると思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ゴジラに挑む期待の新鋭・上西琢也監督「自分のゴジラが劇場公開されることがうれしい」『GEMNIBUS vol.1 ゴジラVSメガロ』【インタビュー】

映画2024年6月27日

-ゴジラとメガロのバトルは迫力満点ですが、それだけでなく、実写で人間の芝居も加えた点に前作『ゴジラVSガイガンレクス』からの進化が感じられます。その意図は?  怪獣同士のバトルを盛り上げるためには、やはり「なぜ戦うのか」という背景をきちんと … 続きを読む

鈴木梨央、ミュージカルに「憧れがありました」 ミュージカル「ピーター・パン」出演に「自分なりのウェンディを見つけていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月27日

-初めてミュージカルを見る人や子どももたくさん見にくる作品だと思いますが、そうした人たちに向けて、この作品の見どころを教えてください。  1番楽しんでいただきたいのは、ピーターが空を飛ぶところです。実際に生で、空を飛んでいる人が目の前にいる … 続きを読む

山下智久「ブルーモーメント」最終回は「僕も上海や香港からテクノロジーを駆使して見ます!」【インタビュー】

ドラマ2024年6月26日

-本作では、山下さんがプライベートでも親交が深い伊藤英明さんと田中圭さんが“友情出演”されました。撮影現場ではどんなお話をされましたか。  英明さんとは、以前一緒に共演させてもらっていたことを懐かしむ瞬間があったり、今英明さんがやっている作 … 続きを読む

「大きなスクリーンでこの大自然を楽しんでもらえたら」「いい時代の邦画の匂いを感じていただけたら」杉田雷麟、寛一郎『プロミスト・ランド』【インタビュー】

映画2024年6月26日

-今、熊が街に出て来て話題になっていますが、その熊を獲物にするマタギを演じてみてどう感じましたか。 杉田 僕は、マタギについては今回現地で少し触れたぐらいなんですけど、熊の皮をお尻に敷くものにしたり、内臓を薬にしたり、肉はちゃんと食べて…。 … 続きを読む

西野七瀬、30歳を迎え「素直にうれしい」 2度目となる劇団☆新感線で戦女役に挑む「記憶に残る作品に」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月26日

-ところで、5月25日には30歳の誕生日を迎えられました。ある意味では節目の年なのかなと思います。  節目だということはあまり意識はしていませんが、20代から30代になるのはやっぱり大きな変化だなと思います。そういう意味で、30歳を迎えられ … 続きを読む

Willfriends

page top