大竹しのぶ、演じるモチベーションは「たまたま私が演じるチャンスをもらえた。それは感謝しかない」という思い 舞台「ヴィクトリア」で21年ぶりの一人芝居【インタビュー】

2023年6月13日 / 08:00

 「ピアフ」や「GYPSY」など、舞台作品で多くの観客を魅了し、ドラマ「PICU 小児集中治療室」や「犬神家の一族」など、数々のドラマでも存在感を発揮する大竹しのぶ。6月24日から開幕する舞台「ヴィクトリア」では、21年ぶりに一人芝居に挑む。大竹に作品への意気込みや演じることへの思いを聞いた。

大竹しのぶ (C)エンタメOVO

-今回、21年ぶりに一人芝居に挑もうと思った心境を教えてください。

 一人芝居だからというよりも、まず最初に(イングマール・)ベルイマンが書いた台本に興味を持ちました。その後に、改めてこれを一人でやるんだと驚いたのですが、興味を持ってしまったからどうしようと(笑)。

-一人芝居だとは思わずに脚本を読んだということですか。

 もちろん最初にプロデューサーさんから「一人芝居をやりたい」というお話をお伺いして、それで「とにかく読んでみます」と言って読み始めたのですが、読み始めたら一人で演じるということを意識せずに読んでしまって…。今になって、ひしひしと一人芝居なんだと恐怖を感じているところです。

-それほど魅力的な脚本だったということですね。

 ヴィクトリアという一人の女性の人生を描いている作品です。彼女の人生が狂っていくさまが悲しいなと思いながら読んだのですが…、今日、こうして取材を受けていて、こんな悲しい話を、誰が見たいんだろうと思い始めました(笑)。なので、よっぽど(演出の)藤田(俊太郎)くんが頑張ってくれないと(笑)。ただ、21年前に出演した(一人芝居の)「売り言葉」という作品は、不安もありましたがすごく楽しかったので、また一人芝居にトライできることはとてもうれしいです。

-通常の演劇作品と一人芝居とでは、臨むときの意識も大きく変わりますか。

 (取材当時は)まだお稽古に入ってないので、どういうイメージになるか分かりませんが、(一人芝居は)相手役との呼吸ではなく、自分で呼吸を作れるので、いいも悪いも自分の責任になる。一人で作れるという意味では楽な部分もありますし、面白いところでもあります。21年前は、(本番で)一人でその世界になってしまって、勝手に演じているのを見てもらえるのが楽しかったです。どんどん入り込んでいくのをお客さんはただ見ている。付いてきたい人は付いてくればいいという感覚でした(笑)。

-今回は、そんな芝居を藤田さんと作っていくことになりますが。

 藤田さんは蜷川(幸雄)さんの演出助手をやっているときから知っているので、俊太郎!という感じです(笑)。何度か泣かせてしまったこともあります(感激の涙を含めて)。今は彼の困った顔しか浮かんでこないですね(笑)。2人で必死になって道を見つけていこうと思います。

-本作の脚本を読んで、ヴィクトリアに共感できるところはありましたか。

 共感というのはないです。ただ、悲しい人だなと。愛されることに自信が持てず、弱くてプライドが高くて…。劇中に「ここは現実の世界じゃないんだ」というせりふがあるのですが、すごく悲しいせりふだと思うんです。ここは現実じゃない、つまり逃避するということだと思うのですが、それで楽になってしまうのがこのヴィクトリアで、「欲望という名の電車」で演じたブランチにも通じるものを感じています。

-話に出たブランチも本作のヴィクトリアもそうですが、悲劇的な女性を演じることに対する面白さはありますか。

 精神が崩壊していくというのは、現実に起こったら嫌ですが、お芝居の中だとすごく面白いんですよ。自分とかけ離れていればいるほど、その面白さはあるように思います。とても繊細な、まるで1ミリくらいの隙間を見つけながらお芝居をしていくチリチリした感覚があって、それを観客の皆さんと一緒に味わうのも好きです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top