山本耕史「鎌倉殿の13人」三浦義村役を振り返る「危ない橋を、絶妙なバランスで渡り切るような勘と判断力の見事さが爽快」【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

2022年12月5日 / 17:31

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。激動する時代に翻弄(ほんろう)され、数々の人物が散っていく中、第1回から最終回まで生き抜いた数少ない人物の1人が、主人公・北条義時(小栗旬)の盟友・三浦義村だ。物語はいよいよ大詰めを迎えるが、無事に三浦義村を演じ切った山本耕史が、一足先に作品を振り返った。

三浦義村役の山本耕史 (C)NHK

-長期間の撮影お疲れさまでした。ここまで無事に義村を演じ切った感想を聞かせてください。

 すごく気持ちよかったです。義村は、義時と違って、言っていることが第1回から全く変わらないんですよね。のらりくらりといろんなところに行くんですけど、そういう生き方に迷いがない。よくいえば真っすぐで、ブレがない。しかも、北条だけでなく、和田からも比企からも頼られるわけですから。つまり、それぐらいの実力者だったということで、三浦が味方した方が生き残ったというのは、史実からも明らかですし。だから、この大河ドラマの中では、真っすぐに生き抜いたな、というのが率直な感想です。

-本心を巧みに隠して、さまざまな人物の間を渡り歩く義村の処世術は見事でした。

 少しでも重心を崩したら落ちてしまいそうな危ない橋を、絶妙なバランスで渡り切るような勘と判断力の見事さは爽快でした。僕自身、台本を読んでいても「なるほど、こっちに付くのか」と思ってページをめくってみたら、「やつは話に乗ってきたぞ」みたいなことを言っていたりするので、「どっちなんだ?」とよく分からないときがあったぐらいで(笑)。

-そこまでとは(笑)。

 追い詰められたときの言い逃れも巧みでしたし。義時に向かって「俺を信じるか信じないかはそっちの勝手だ。俺を信じておまえは死ぬかもしれないし、信じて助かるかもしれない。だが、俺を信じなければ、おまえは間違いなく死ぬ」と言う場面(第41回)も、すごく義村らしくて好きなせりふです。「ゼロか100かじゃないんだ」と思って(笑)。小栗くんも、「いいな、義村は楽しそうで」と言っていましたけど、正直、義時よりずっと楽しく演じられたと思います(笑)。

-最後まで共に生き抜いた小栗さん演じる義時との関係についてはいかがでしょうか。

 今回は僕自身も非常にいい距離感でやれました。義村と義時って、すごく近いようで、お互い腹の底を探り合っているのも否めない関係性だったんですけど、小栗旬と山本耕史の関係性においても、お互い、思うことはあるんだろうけど、語らずとも通じ合っている、みたいなところがあったんです。1年半もやっていると、義村が言っているのか、自分が言っているのか、分からなくなるときもあったりして。

-まさに役と一体化したような感じですね。では、座長としての小栗さんはいかがでしたか。

 小栗くんは、本当にタフな精神力と肉体の持ち主です。大河ドラマの主役は1年半、48回にわたって同じ役を演じ続けなければならないので、精神的にも体力的にも、本当に大変なんです。それなのに、最初の頃はたくさんの先輩方にきちんと気遣いをして、先輩方が去っていくのを見届けた後は、新しく入ってきた同世代や後輩の俳優たちにも目を向けて。自分が一番、気を使われるべき立場なのに、「そんなことまで?」というぐらい、周りに気を使っているんです。その点は、最初の頃の義時みたいだなと。それでいて、後半の義時のような強さも持っている。そういうことも含めて、義時には小栗くんのいろんな人間性を見たような気がします。

-ところで、山本さんは三谷幸喜さんが脚本を手掛けた大河ドラマ3作全てに出演していますが、本作で改めて感じた三谷脚本の魅力を教えてください。

 僕が言うのもせんえつですけど、大河という世界の中で、確実に磨きがかかってきています。スピード感や、エピソードを省略する際の切れ味とか。いい意味で「視聴者の期待を裏切っていく斬新さ」というか、大河ドラマだったら絶対に描くような史実や表舞台を、三谷さんは描かなかったりするじゃないですか。普通だったら、「弁慶の仁王立ち」のような名場面は見たいはずなんです。でも、そこは描かず、お堂にこもっている義経(菅田将暉)の姿を見せて、「そのとき、彼らは何をやっていたんだろう?」ということを、それ以上に面白く描く。こういうのは、三谷さん以外ではあまり見たことがありません。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

Willfriends

page top