小栗旬「納得のいく終わり方。大河ドラマの主演は、またいつかやりたい」「鎌倉殿の13人」クランクアップ後の心境を語る(前編)【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

2022年11月20日 / 11:05

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。物語はいよいよクライマックスに差し掛かりつつあるが、一足先に全48回の撮影を終えた主演の小栗旬(北条義時役)が、約1年半近くにおよぶ撮影を振り返りながら、現在の心境を語ってくれた。

北条義時役の小栗旬 (C)NHK

-長期間の撮影、お疲れさまでした。まずは、クランクアップしたときの気持ちを聞かせてください。

 今まで経験してきたアップとは、またちょっと違う感じでした。まだまだ続けたい気持ちももちろんあったし、同時に「やっと終わったんだな」とほっとする気持ちもあって…。一言ではなんとも言い難い心境でした。

-放送開始当初、「大河ドラマの撮影は仕事というより、生活の一部」という話をしていましたが、それがなくなった今の気持ちは?

 本当に納得のいく終わり方をさせていただいたので、引きずるような感覚もなく、スパッと切り替わった感じです。さっき、制作統括の清水(拓哉)さんとも冗談みたいに話していたんですけど、「今からもう一回、義時をやって」といわれても、「全くできません。何も覚えていません」という気分です、今は。

-それぐらい、きれいに終われたということですね。それでは、この作品を通じてご自身の成長を感じた部分は?

 俳優としては、1年4~5カ月、48回をかけて、若い頃から晩年の義時までやらせていただき、1人の人間を生き抜くとか、人物を作るには、ここまで深く読み取っていかなければいけないんだなという経験をすることができました。もちろん、これまでも同じように役に臨んでいたつもりですけど、義時という役をやる中で、回を重ねるほど、「なぜここでこのせりふを言うことになったんだろう?」と考える時間が多くなってきたんです。だからこそ、作品が今、自分や他の皆さんの役を通して、お客さんに楽しんでもらえるものになったのかなと。おかげで、今後は、事前にこのぐらい、役を深堀りしておかないといけないなとも感じるようになりました。

-役への向き合い方が今までと違った部分も?

 この義時に関しては、それこそ後半は、台本をそんなに読み込まなくても、場面がなんとなく思い浮かぶようになり、台本にも「自分がやってきた義時だったら、きっとこう行動するだろうな」ということが書かれていたんです。だから、自分はただの器で、北条義時としてそこにいればいいという感覚になってきました。それはある意味、一つの自信になったというか。ただ、僕は不器用なので、そんなふうに「演じる」ということを越えて人間を表現するには、1年5カ月ぐらい使わなきゃいけないんだなとも感じたりしました。

-「鎌倉殿の13人」を通じて、北条義時という人物に対するイメージはどう変わったでしょうか。

 学生時代、僕はその名前すら知らなかったですし、もう少し歴史を学んでいる人たちにとっても、承久の乱ぐらいでしか名前が出てこない人物だったと思うんです。しかも、『吾妻鏡』という幕府公式の歴史書が残っているのに、“悪者”と思われてきた。確かに、やってきたことがすごいので、仕方ないのかもしれませんが…。そういう人物が、この大河を経て、新たに「孤独な男だった」というイメージで受け取ってもらえるようになったんじゃないかと。

-なるほど。

 そのために前半、ものすごく明るく、真っすぐだった彼をしっかり見せてきたわけです。後半は、本当はそこから何も変わっていないんだけど、執権という立場にある以上、「こう振る舞わなければいけない」という、彼の中で大きな矛盾とともに突き進まなければいけなくなった。それによって、北条義時という人物を、ものすごく面白い人間像に育て上げることができたんじゃないかと思います。

-小栗さんの「全部大泉のせい」という発言を始め、Twitterなど、SNSでも毎回大きな反響がありましたが、そういう視聴者の反応をどう受け止めていましたか。

 あれは本当に、言ってよかったですね。やっぱり、毎回オンエアが終わると、その話のキーフレーズみたいなものが話題になるのはうれしいです。現場でもよく話題になっていましたし、みんなの励みにもなっていました。あと僕は、いつかトレンドワードに、「女子はみんなキノコ好き」が上がればいいなと思っているんですけど(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

Willfriends

page top