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全身に矢を浴びて討ち取られた和田義盛(横田栄司)と、それを目の当たりにして号泣する源実朝(柿澤勇人)に背を向け、一人、戦場を去る主人公・北条義時(小栗旬)。
その際、誰にも気付かれず、視聴者だけに見せた一瞬の涙。そこには、「和田を滅ぼす」と公言しながらも、長年の友である義盛と戦いたくなかった義時の本心と、その気持ちを誰にも見せることができない孤独がにじんでいた。
NHKで好評放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。10月30日に放送された第41回「義盛、お前に罪はない」では、歴史に名高い“和田合戦”が繰り広げられ、源頼朝の挙兵以来の有力御家人、和田義盛の一族が滅亡した。
これにより、義時率いる北条一族の鎌倉支配が盤石になった。だがそれは同時に、義時の孤独をさらに深めたともいえる。それを象徴していたのが、冒頭に引用したシーンだ。
「鎌倉を守るため」を金科玉条として、それに反する者を次々と排除してきた義時。しかし、父・時政(坂東彌十郎)や、御家人たちの信頼厚い義盛まで標的にするその強引さは、主君・実朝をはじめ、姉の政子(小池栄子)や息子の泰時(坂口健太郎)らの反発をたびたび招いてきた。
それを義時は「全ては頼朝さまから学んだこと」の一言で押し切ってきたが、彼らが納得していないことは明らかだ。にもかかわらず、粛清を進めたのだから、孤立するのは当然ともいえる。
孤立を深める義時の心境を、演じる小栗が番組公式サイトに公開されたインタビューで、次のように語っている。
「義時を演じていて思うのは、心臓があったとしたら、徐々に周りがポロポロポロポロ崩れていくような、そんな感じなんですよ。それでまた一つ心が崩壊するというか、どんどん研ぎ澄まされていって、すごい鋭利なものになっているような感覚です。ドラマのスタートからいえば、義村、重忠、義盛は自分の中では幼なじみのような存在なので、戦わなければいけないというのはやっぱりしんどいです」
心臓の周りがボロボロ崩れ、どんどん鋭利に研ぎ澄まされていくのと同時に、深まっていく義時の孤独。そして、「これからも支え合って行こうぜ」と前回一度は和解した和田義盛を滅ぼした結果、「心を許せるものは、この鎌倉におらぬ」と義時への信頼を喪失した実朝は、京の後鳥羽上皇(尾上松也)に接近していく。本来、支えるべき主君との溝までも深め、孤立した義時はどこへ向かうのか。
源頼朝(大泉洋)が健在で、北条一族がそろった中、笑顔で和やかに餅を丸めていた第25回の頃を思い返すと、ずいぶん遠くに来てしまったと感じる。だが、同時に小栗は前述のインタビューで、こうも語っている。
「義時は、本来は家族が大好きで、どんなに立場が変わっても彼の中で最後に気を許せるのは家族だと思うんですよね」