堀田真由「役としての魂がそこにないと、伝わるものも伝わらない」大河ドラマに通じる演技の基本を見つめ直したホラー映画の現場 『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』【インタビュー】

2022年8月25日 / 17:00

 「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズ、『貞子vs伽椰子』(16)などで知られるホラー界の鬼才・白石晃士が監督・脚本・撮影を務めた『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』が、8月27日から全国公開となる。本作は、異界とつながるたたりの森を舞台に、迫り来る恐怖の真相に挑む映画監督・黒石光司ら、5人がたどる運命を描いたオリジナルPOV(ポイント・オブ・ビュー=主観視点)ホラーだ。主演は、NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも好演を見せた若手俳優の堀田真由。演じることの基本を見つめ直す機会となった撮影の舞台裏を聞いた。

堀田真由(ヘアメーク:菅井彩佳(NICOLASHKA)/スタイリスト:小林新(UM)) (C)エンタメOVO

-本作はPOVを用いたフェイクドキュメンタリー形式のホラー映画ですが、出演してみた感想はいかがですか。

 これまでもホラー作品には何度か出演させていただきましたが、それとはまた違った作品だなと。私のようにホラーが苦手な方にも、きっと楽しんでいただける作品になったと思うので、あまり“ホラー”という枠にとらわれなくてもいい気がします。もしかしたら、別の名前を付けた方がいい新ジャンルかもしれません(笑)。

-フェイクドキュメンタリーということで、演じる難しさはありましたか。

 私が演じた助監督の市川美保は、白石監督演じる黒石さんと一緒に怪奇現象の謎に迫っていく強い女性です。強い女性はエネルギーがあるので、その強さを出そうとすると、芝居が大きくなりがちなんです。でも、やり過ぎると、いかにも“演じている感”や“せりふを言っている感”が出てしまい、ドキュメンタリーっぽくなくなってしまいます。その辺を、白石監督と「難しいですね」とお話ししながらやっていました。特に、始まってすぐ、事件の発端となる麻里亜さん(筧美和子)の家を訪ねる場面は、バラエティー番組のロケのような感じなので、すごく難しくて、一番テイクを重ねたシーンでした。

-黒石役で出演する白石監督自身が、カメラを持って撮影していることも本作の特徴です。そういう状況で芝居をするのも、なかなかない経験ですよね。

 監督が演者として現場にいらっしゃるなんて、普通はありません。でも、生でお芝居を見てくださる分、役者側の視点に立ってアドバイスをしてくださるんです。しかも、「こういうふうにやってほしい」ということを、言葉だけでなく、その場で実際に演じて見せてくださるので、とても分かりやすく、やりやすかったです。

-ところで、堀田さんは女優デビューがWOWOWの連続ドラマ「テミスの求刑」(15)だそうですが、本作もWOWOWで放送された連続ドラマを再構成した劇場版です。改めて、今回のオファーを受けたときの感想を聞かせてください。

 WOWOWさんの作品で私は女優としてスタートさせていただいたので、その原点に戻って主演できるのはすごくうれしかったですし、恩返しができたらいいなと思い、今回のお話をお引き受けしました。

-改めて7年前のデビュー当時を振り返ってみて、どんなことを感じますか。

 当時は“怖いものなし”でした。今になってみると、それも怖いと思うんですけど(笑)。仲里依紗さんの妹役だったんですけど、強い女の子で、お姉さんに対してものすごく強い言い方をするんです。それを見た事務所の先輩の寺脇康文さんから、「デビュー作で、こんなに強い口調で先輩にものを言える女優はいない」って言われました(笑)。そんなふうに、当時は「知らないからこその強さ」がありました。経験を重ねた今は、初めてのことが少なくなってきた分、逆に不安が増し、事前にいろんな準備をするようになりました。ただ、考え過ぎもよくないので、当時のような感覚を取り戻せたら…と思っていました。

-そういう状況で、ご自身の原点であるWOWOWの作品に帰ってきたわけですね。では、本作を通じてご自身の成長を実感したことはありましたか。

 実は最近、自分でもどこかナチュラルに芝居をしている感覚が強くなっているんです。一時期、漫画原作の作品が続いたことがあるんですが、そういう作品の場合、原作のニュアンスを表現するため、どうしても大きく芝居をしたり、コミカルに演じたりする必要があるんです。それで、自分自身のナチュラルな感覚を忘れかけていたところがあって。でも、今回はフェイクドキュメンタリーなので、お客さんに芝居だと思わせないようにしないといけなかったんです。最近まであった“苦手意識”みたいなものを克服し、ナチュラルな感覚を取り戻せたのは、白石監督がそういうものを引き出してくださったおかげだと思っています。

 
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