【インタビュー】「連続ドラマW 松本清張 『眼の壁』」小泉孝太郎「この作品に出会えた幸せをかみ締めたい」ベストセラー小説が原作のサスペンスに主演

2022年6月17日 / 10:00

 バブル経済真っただ中の1990年。会社の資金繰りに奔走するウキシマ電業製作所の経理課長・萩崎竜雄は、部長の関野が2億円の手形詐欺にあった末、失踪する事件に直面。恩人の関野を救おうと、友人の新聞記者・村木満吉の協力を得て真相究明に乗り出した萩崎の前に、謎の女・上崎絵津子が現れる。果たして、事件の裏に隠された驚きの真実とは…? 『点と線』に並ぶ松本清張のベストセラー小説を原作にしたサスペンス「連続ドラマW 松本清張 『眼の壁』」(全5話)が6月19日(日)午後10時からWOWOWで放送・配信開始となる。主人公・萩崎竜雄を演じる小泉孝太郎に撮影の舞台裏を聞いた。

小泉孝太郎(ヘアメーク:石川武/スタイリスト:北村彩子) (C)エンタメOVO

-今回の主演の話を聞いたときの気持ちを聞かせてください。

 WOWOWでは7年ぐらい前に「連続ドラマW 死の臓器」(15)で主演させていただきましたが、僕は、どの仕事も最初で最後だと思って臨んでいるので、またオファー頂けたことがうれしかったです。しかも、松本清張の骨太な社会派サスペンスですから。でも、やりがいを感じつつも、だんだん冷静になってくると、「苦しくなりそうだな」と(笑)。

-「苦しくなりそう」というのは、具体的にはどんな点でしょうか。

 WOWOWのドラマって、ものすごく演じがいがありますが、苦しいシーンもいっぱいあるんです。実際、今回も真冬の寒い廃工場の中で、縄で縛られたり、夜遅く真っ暗な森の中で格闘したり。映っているのはほんの少しですけど、そのために1日中、現場にいますから(笑)。

-松本清張作品の特徴をどんなふうに考えていますか。

 善人でも悪人でも、人間をものすごく深くとらえていて、“人間臭”みたいなにおいが伝わってきそうな生々しさがありますよね。善人のにおい、悪人のにおい、女性の香り…。そういう生々しさが特徴的なのかなと。

-そんな物語の主人公・萩崎を演じる上で、どんなことを心掛けましたか。

 心の奥底に熱くメラメラと燃えたぎるものを抱えてはいますが、まずは信頼できる男だと思ったので、なるべく“松本清張作品”ということは意識せず、萩崎の実直さや純粋さ、普通っぽさ、みたいなものを大切にしました。

-萩崎に協力する親友・村木満吉を演じる上地雄輔さんは、小泉さんご自身にとっても昔からの親友だそうですね。

 親友どころか、腐れ縁のような感じです(笑)。雄輔は一つ年下ですけど、お互いを知り尽くしているので、むしろ「雄輔が親友役で大丈夫かな?」と不安になったぐらいで(笑)。でも、今までこんなに雄輔に感謝したことはなかったです。萩崎にとっても村木は心のよりどころだったので、雄輔とのシーンは本当にホッとできましたし。仲が良過ぎて最近は会う必要もないぐらいで、雄輔とはしばらく会っていなかったんですけど、今回の撮影が終わった後、数年ぶりに食事に行きました。

-久しぶりに会った上地さんはどんな様子でしたか。

 僕がそういう感謝を伝えたところ、雄輔も「コーチンとこういう親友の役は本当にうれしかった。また作品でがっつり一緒にやりたい」と素直に喜んでくれました。

-そうすると、萩崎と村木の関係には、実際のお二人の関係が重なる部分もあったのでしょうか。

 そうですね。自分でも、本当にホッとしているな、と思いましたから。例えば、村木の部屋のソファーに座って2人で食事しながら会話するシーンでは、お互いに寄りかかって僕と雄輔の体がぴたっとくっついているんです。あれは、雄輔でなければ生まれなかったでしょうね。普通は親友役でも、役者さんと触れ合ったら「近過ぎたな」って、ちょっと離れますから。そういうちょっとしたところに出る安堵(あんど)感や笑顔は、相手が雄輔だからこそだったと思います。

-続いて、物語の鍵を握る女・上崎絵津子役の泉里香さんについて教えてください。絵津子は“ミステリアスな女”として萩崎の前に現れますが、そういう距離感などを含め、泉さんとの共演ではどんなことを心掛けましたか。

 泉さんとは適度な距離感を大事にしました。彼女は映画で一度ご一緒したことがありますが、今回は萩崎がミステリアスで魅力的な絵津子に一目ぼれしてしまうという関係。だから、ある種の緊張感や初対面の初々しさを出したいと思って、前半は距離を詰めるような会話は控えました。ただ、中盤から会話も増えていくので、終盤はプライベートなことも含め、いろんな話をするようになりました。その点、彼女はオンとオフの切り替えをとてもうまくやってくれたので、すごく救われました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】「2025年映画ベストテン」

映画2025年12月28日

 今回は、筆者の独断と偏見による「2025年公開映画ベストテン」を発表し、今年を締めくくりたいと思う。 【外国映画】  2025年公開の外国映画を振り返った時に、今年の米アカデミー賞での受賞作は最近の映画界の傾向を象徴するようで興味深いもの … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】家族の情緒が国境を越える、俳優ムン・ソリが語る「おつかれさま」ヒットの理由

ドラマ2025年12月26日

 今年のヒットドラマ、Netflixシリーズ「おつかれさま」。子どもから親へと成長していく女性の人生とその家族を描き、幅広い世代から支持され大きな話題を呼んだ。IU(アイユー)との二人一役で主人公エスンを演じたムン・ソリに、ドラマの振り返り … 続きを読む

田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

映画2025年12月24日

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

 2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

Willfriends

page top