【インタビュー】「おいしい給食 season2」市原隼人「“向こう側の世界”に行かないと甘利田を演じることはできない」

2021年11月18日 / 13:00

 2019年10月期に放送され、話題となった「おいしい給食」の2年ぶりの続編「おいしい給食 season2」が現在、テレビ神奈川、TOKYO MX、BS12トゥエルビほかで放送中。本作は、給食マニアの教師・甘利田幸男と、給食マニアの神野ゴウによる、「どちらが給食をおいしく食べるか」という闘いを描く学園コメディー。前作に引き続き、主人公の甘利田を演じる市原隼人に、作品に懸ける思い、自身の給食にまつわるエピソードなどを聞いた。

甘利田幸男役の市原隼人

-「season2」の制作が決まったときの心境を教えてください。

 これはひとえにお客さまの気持ちのたまものですので、感謝しかないです。役者が作品を作る醍醐味(だいごみ)というのは、お客さまに満足していただいて初めて形になるものだと思います。「おいしい給食」のスタッフ・キャスト一同の気持ちが少しでも伝わったのかなと感激しております。

-再び甘利田を演じるに当たって、「season1」と変化をつけたところはありますか。

 2年の月日がたっているので、作り手である僕らも、作品自体も、成長していると思います。ある種のドキュメントだと。2年前とは社会の状況もだいぶ変わりました。これまでのように、給食時に机をつなげて食べることができなくなったり、大声で笑い合うことができなくなったり、友達の顔もマスクで隠れ、ちゃんと見たことがなかったり…。物事を一生懸命楽しむことや、人に寄り添う気持ちにブレーキが掛かってしまう時代に対して、ものすごく葛藤があります。この作品には、出演者をはじめ、スタッフ全員が抱いている未来への希望も入っています。

-「season2」の最初に、成長した神野ゴウとの再会がありました、演じた佐藤大志さんの印象に何か変化はありましたか。

 せりふにもありますが、声変わりしているなと(笑)。それが第一印象でした。背も高くなっていますし…。とはいってもやっぱり関係性は変わりません。「おいしい給食」の世界に入れば、僕も自然と甘利田になれましたし、大志も神野ゴウとしてそこに居てくれたのでありがたかったです。

-今回は、給食に箸が登場し、甘利田は「マイ箸」を持参するようになりました。給食シーンを演じる上で意識していることは何ですか。

 台本には「食べる」としか書いてないので、全部自分で考えながら演じています。何パターンも長回しで撮っているのですが、オンエアで使われているのはほんの少しだけ。毎回苦しんでいますよ(笑)。今回も、甘利田をどう演じようかとものすごく考え、四六時中向き合いました。原作がない完全なオリジナル作だからこそ、現場で何かを生み出していける。これは作り手として貴重なことなので、その喜びと楽しさを精いっぱい活用し、僕も綾部監督も田口監督も、細部にわたり何周も回って考えながら、試行錯誤をしています。

-給食シーンの動きは、全てアドリブで演じているということですか。

 ほとんど動きも、踊りも自分で考えています(笑)。

-放送前の記者会見で「撮影前日は眠れなかった」と話していましたが、それは緊張のためでしょうか。

  緊張とはまた違ったもので、何と言うのでしょう。“向こう側の世界”に行かないと甘利田を演じることはできない(笑)。そう思うと、アドレナリンが出過ぎるのか、眠れなくなってしまって。こんなに強烈なキャラクターは初めてなので。今回は、「season1」よりもさらに動きが多いんです。主観と俯瞰の目で、大胆さと繊細さの間の振り子をどこまで揺らすか話し合いながら、いろいろ試しています。使われなかった幻のシーンもたくさんあるんです(笑)。

-大人になってから、「給食って改めて深いなと思った」ともお話されていましたね。

 献立には、地域の特色、経済、日本情勢など、多くのことが含まれているものだと思うんです。それに、和食に限らず、中華、洋食、どんなご飯にも牛乳が付いてきたり、和洋折衷ごちゃごちゃになって出てくるのですが、世代を超えて、どんな時代も変わらず出てくるメニューもありますよね。それも栄養面もちゃんと考えられた上で、歴史と文化の重みとともに差し出されるものが給食だと思います。

-給食でなければ食べられないメニューもありますね。

 僕は、きなこパンが大好きなんですが、きなこパンは、家や外食でも中々巡り会えない希少価値がありますよね。当たり前のように食べていた給食ですが、もう1回食べたくなります。

-苦手なメニューはありましたか。

 果物のキウイがあまり得意じゃなかったです。小学3年ぐらいのときに、給食に出てきて「ワァァ~!」と世界の終わりみたいにテンションが下がりました(笑)。そうしたら、先生が「牛乳をかければ食べられるよ」と言いながら、目の前で牛乳をかけられたのですが、「えっ!?」って思って。余計食べられなくなっちゃいました(笑)。いまでは、他のフルーツと混ぜてジェラートにしておいしく頂いています。

-劇中では、生徒に厳しい甘利田ですが、もし市原さんが教師になるとしたら、どんな教師になると思いますか。

 子ども目線もちゃんと持った大人になりたいです。子どもの頃に、大人が子どもの話を聞かないとか、「大人はいいんだよ。子どもは駄目だけど」とか、そういうことを平気で言う人がすごく嫌いだったので。目標への秩序を共有し、しっかりと子どもの立場にも立ちながら、同じ方向を向いて、共に笑って、泣いて、目の前のことに真剣になり、悔しがる姿も隠さず、子どもに対しても負けを認められ、厳しさにも勝る愛情を持った先生になりたいです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

門脇麦、「芝居に対してすごく熱い」田中圭と夫婦役で5度目の共演 舞台「陽気な幽霊」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月2日

 田中圭を主演に迎え、若村麻由美、門脇麦、高畑淳子ら豪華共演者で贈る舞台「陽気な幽霊」が5月3日から開幕する。本作は、20世紀を代表する劇作家ノエル・カワードによるウェルメイド・コメディー。1945年にはデヴィッド・リーン監督により映画化も … 続きを読む

今田美桜「『アンパンマン』のように、幅広い世代に愛される作品に」連続テレビ小説「あんぱん」いよいよスタート!【インタビュー】

ドラマ2025年4月1日

 3月31日から放送スタートしたNHKの連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶと柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『 … 続きを読む

坂本昌行&増田貴久がミュージカルで初共演「笑顔になって、幸せになって帰っていただけたら」 ミュージカル「ホリデイ・イン」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月1日

 坂本昌行と増田貴久をはじめとした豪華キャストが出演するミュージカル「ホリデイ・イン」が4月1日から開幕する。本作は、1942年に公開された映画『Holiday Inn』(邦題『スウィング・ホテル』)をもとに舞台化されたミュージカル作品。「 … 続きを読む

藤原竜也が挑む「マクベス」 「1日1日、壁を突破することが目標」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月29日

 2024年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。待望の二作目となる「マクベス」が、藤原竜也を主演に迎え、5月8日から上演される。藤原に初めて挑む「マクベス」への思いや吉田とのクリエイトに … 続きを読む

竈門炭治郎を演じる阪本奨悟が語る、舞台「鬼滅の刃」の魅力 「生身の人間が演じているからこそ、リアルに共感できる」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年3月28日

 「週刊少年ジャンプ」で2020年5月まで連載していた吾峠呼世晴による大ヒット漫画『鬼滅の刃』。2020年に初めて舞台化されて以降、シリーズを重ね、4月11日からはシリーズ5作目となる、舞台「鬼滅の刃」其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里が上演される。 … 続きを読む

Willfriends

page top