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慶喜のことは将軍になる以前から尊敬していましたが、民間人になった後もその気持ちは変わりません。だから、どれだけ自分が出世しても、栄一は何度も静岡まで会いに行くことになります。その関係性は、ずっと変わらないと思います。
小学生のときからいろんな作品で見てきた大スターなので、共演する前から「すごい人だな」と思っていました。だから、栄一が慶喜を尊敬する気持ちと、僕が草なぎさんを尊敬する気持ちがリンクしている部分があるかもしれません。演じる上でも、その関係性が自然と出ればいいなと思いながらやっています。
僕が演じていて感じたのは、「栄一、大人になったな」ということです。皆さんにも、「あんなに無邪気だった少年が、こんなに大人になったか」というある種の寂しさを感じていただけるのではないでしょうか。栄一の最大の特徴と言えるのが、「最後まで生き延びた人」ということ。いろんなスターからバトンを受け継ぎ、最後まで生き延びたから、さまざまな業績を残すことができた。その姿から「生命力」はもちろんですが、それだけでなく「生き延びた人の寂しさ」みたいなものも伝わればいいなと。
そうですね。今までは、「自分がこうしたい」ということを相手にぶつけ、栄一はその相手とだけ戦ってきました。でも、栄一自身が有名になることで、そこに栄一を見る“第三者の目”が加わってきます。その中には栄一をヒーローだと考える人もいれば、「ただ理想を語っているだけだ」という人もいて、自分のやっていることと周囲からの見られ方の違い、みたいな部分も生まれてきます。そういう意味では、より栄一の人物像が人間らしく、生々しくなっていくのかな、と。僕としては、それをすごく楽しく演じているところです。
(取材・文/井上健一)
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