【インタビュー】舞台「ザ・ドクター」大竹しのぶ 「座右の銘はまあいいか」でも「お芝居のことになると熱くなる」

2021年9月17日 / 08:05

 パルコ・プロデュース2021「ザ・ドクター」が10月30日から上演される。本作は、医療研究所の所長でありエリート医師のルースが、ある少女の死をきっかけに、宗教、ジェンダー、階級差など、あらゆる社会問題を通して、医師としての自分を見つめ直していく物語。19年にロンドンで初演され、大きな話題を集めた。日本初演に当たっては、大竹しのぶが主演し、栗山民也が演出を担当する。大竹に、本作の魅力や公演への意気込みを聞いた。

ルース・ウルフ役の大竹しのぶ (C)エンタメOVO

-出演が決まる前の2019年に、「本作をロンドンで観劇して感動した」というコメントを出していましたが、どんなところに心を動かされたのですか。

 言葉は全て理解できたわけではありませんが、主演の女優さんのお芝居が素晴らしく、演劇のすごさを改めて感じた作品でした。演出もすごく細やかで、立ち方や首の振り向き方や表情で、その人が何を思っていたのかが分かったんです。役者全員があるレベルの水準に達していて、みんなで作っている感があって、それがすてきでした。

-感銘を受けた作品の日本初演に出演が決まったときはどんな心境でしたか。

 ロンドンで観劇したときには、自分もこの作品に出たいとか、こういう作品をやりたいということは思ってもみませんでした。(主演の女優が)ただただ、理知的ですてきな女優さんだと思っていただけだったので、このお話を頂いたときに、初めてお芝居を海外から持ってくるってそういうことかと思いました(笑)。「ピアフ」もそうだったんですが、「えっ、あの作品を私がやるの?」という驚きが大きくて。ですが、すてきな作品ですので、お話を頂けたのはすごくうれしかったです。

-改めて、本作の脚本を読んで、どんなところに面白さを感じましたか。

 ジェンダーや宗教、医療現場の裏側など、今、現代人が抱えるありとあらゆる問題が描かれているところが興味深かったです。人間はこんなにも問題を抱えながら生きていかなければいけないんだと、改めて考えさせられます。この作品を書いたロバート・アイクは、なんでこんなにも問題をいっぱい提示するんだろうと思うほど、ルースにはたくさんの問題が降りかかりますが、そこがこの作品の見どころになっていると思います。

-大竹さんにとって本作は、久しぶりの社会派現代劇となりますね。

 そう言われて、ああ、そうだったんだ、と思いました(笑)。自分の中では、ギリシャ悲劇を演じていても、シェークスピアを演じていても、それが現代劇ではないという感覚がないんですよ。ギリシャ悲劇「メディア」の旦那さんに浮気された女性が復讐(ふくしゅう)するというストーリーは、現代でも通じますよね。何千年も前から、人間はあまり変わっていない、進歩していないのかもしれません。ですが、現代劇は、よりリアリティーを求められるとは思います。今回は、11人の役者の会話劇がリアルでなかったらつまらないと思うので、そこは追求していきたいです。

-栗山さんの演出で楽しみにしていることは?

 ロンドンでこの作品を見たときに、役者の立ち位置が面白かったんです。栗山さんはすごく細やかな演出をしてくださる方で、役者のフォーメーションもいつもきれいに作ってくださるので、今回も舞台転換を含めてどうなるのか楽しみにしています。栗山さんの演出を初めて受けたのは「太鼓たたいて笛ふいて」(02)だったのですが、そのときから稽古に行くのが楽しくて仕方ありませんでした。まるで学校に通い始めたばかりの小学生のような気持ちで(笑)、栗山さんにお芝居をつけてもらうと「また得しちゃった」と思って、スキップしながら稽古場に行っていたんです。今はもう、私に細やかな動きまで演出してくれる方もあまりいないので、小さなことまで演出してくださるのが本当に楽しいです。栗山さんは、いいお芝居をすると稽古場でニコニコになるんですよ。でも、良くないと機嫌が悪くなる(笑)。今回も、栗山さんのニコニコする顔が見たいなと思っています。

 
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