エンターテインメント・ウェブマガジン
パルコ・プロデュース2021「ザ・ドクター」が10月30日から上演される。本作は、医療研究所の所長でありエリート医師のルースが、ある少女の死をきっかけに、宗教、ジェンダー、階級差など、あらゆる社会問題を通して、医師としての自分を見つめ直していく物語。19年にロンドンで初演され、大きな話題を集めた。日本初演に当たっては、大竹しのぶが主演し、栗山民也が演出を担当する。大竹に、本作の魅力や公演への意気込みを聞いた。
言葉は全て理解できたわけではありませんが、主演の女優さんのお芝居が素晴らしく、演劇のすごさを改めて感じた作品でした。演出もすごく細やかで、立ち方や首の振り向き方や表情で、その人が何を思っていたのかが分かったんです。役者全員があるレベルの水準に達していて、みんなで作っている感があって、それがすてきでした。
ロンドンで観劇したときには、自分もこの作品に出たいとか、こういう作品をやりたいということは思ってもみませんでした。(主演の女優が)ただただ、理知的ですてきな女優さんだと思っていただけだったので、このお話を頂いたときに、初めてお芝居を海外から持ってくるってそういうことかと思いました(笑)。「ピアフ」もそうだったんですが、「えっ、あの作品を私がやるの?」という驚きが大きくて。ですが、すてきな作品ですので、お話を頂けたのはすごくうれしかったです。
ジェンダーや宗教、医療現場の裏側など、今、現代人が抱えるありとあらゆる問題が描かれているところが興味深かったです。人間はこんなにも問題を抱えながら生きていかなければいけないんだと、改めて考えさせられます。この作品を書いたロバート・アイクは、なんでこんなにも問題をいっぱい提示するんだろうと思うほど、ルースにはたくさんの問題が降りかかりますが、そこがこの作品の見どころになっていると思います。
そう言われて、ああ、そうだったんだ、と思いました(笑)。自分の中では、ギリシャ悲劇を演じていても、シェークスピアを演じていても、それが現代劇ではないという感覚がないんですよ。ギリシャ悲劇「メディア」の旦那さんに浮気された女性が復讐(ふくしゅう)するというストーリーは、現代でも通じますよね。何千年も前から、人間はあまり変わっていない、進歩していないのかもしれません。ですが、現代劇は、よりリアリティーを求められるとは思います。今回は、11人の役者の会話劇がリアルでなかったらつまらないと思うので、そこは追求していきたいです。
ロンドンでこの作品を見たときに、役者の立ち位置が面白かったんです。栗山さんはすごく細やかな演出をしてくださる方で、役者のフォーメーションもいつもきれいに作ってくださるので、今回も舞台転換を含めてどうなるのか楽しみにしています。栗山さんの演出を初めて受けたのは「太鼓たたいて笛ふいて」(02)だったのですが、そのときから稽古に行くのが楽しくて仕方ありませんでした。まるで学校に通い始めたばかりの小学生のような気持ちで(笑)、栗山さんにお芝居をつけてもらうと「また得しちゃった」と思って、スキップしながら稽古場に行っていたんです。今はもう、私に細やかな動きまで演出してくれる方もあまりいないので、小さなことまで演出してくださるのが本当に楽しいです。栗山さんは、いいお芝居をすると稽古場でニコニコになるんですよ。でも、良くないと機嫌が悪くなる(笑)。今回も、栗山さんのニコニコする顔が見たいなと思っています。
舞台・ミュージカル2025年12月13日
稲垣吾郎が、2026年2月7日から開幕するPARCO PRODUCE 2026「プレゼント・ラフター」で傑作ラブコメディーに挑む。本作は、劇作、俳優、作詞、作曲、映画監督と多彩な才能を発揮したマルチアーティスト、ノエル・カワードによるラブ … 続きを読む
映画2025年12月12日
イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月10日
元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む
ドラマ2025年12月8日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む
映画2025年12月5日
戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む