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伝説の女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの子ども時代を、西部開拓を目指す旅団の中で、困難に立ち向かう一人の少女・マーサの話として描いたアニメーション映画『カラミティ』が、9月23日から全国公開される。前作『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(15)に続いて、絵画的な美しい映像の中で少女のたくましい冒険談を描いたレミ・シャイエ監督に、映画に込めた思いを聞いた。
特に西部劇が好きだったからというわけではありません。西部劇というと、どうしても銃を持って戦うようなイメージがあって、そういうものを作りたいとは思いませんでした。ただ、今回は馬車での旅が描けることにとても興味を引かれました。車輪の上の村というか、コミュニティーが移動していく感じがとても面白いと思いました。
たくさん見ました。特に、スタッフの中に西部劇が大好きな人がいたので、新たに西部劇のカルチャーを勉強した気分になりました。特にマリリン・モンローの『帰らざる河』(54)や、女性の主人公が素晴らしい『大砂塵』(54)が印象に残っています。ドリス・デイの『カラミティ・ジェーン』(53)はキッチュな感じがして面白かったです。今回はロケハンができなかったので、スタッフの皆と一緒に、景色のイメージを得るために、ワイオミングを舞台にした映画をたくさん見て参考にしました。また、オレゴントレイルに関する本もたくさん読みました。
いろいろとカラミティに関する文献を調べた結果、彼女がミズーリから出発して、その2年後ぐらいに弟たちを置いて一人で旅立ったという記述を見付けました。ただ、その間のことはほとんど分からないので、ここが創造のしどころだと思いました。彼女の伝記などを読んでも、ほとんどがうそだらけです。彼女自身も証言者も皆うそをついている(笑)。そこがまた面白いのです。その中で道筋を作っていくことは、自由でもあり、面白いことでした。あとは、「カラミティは作り話が上手な女の子」という史実を映画の中に取り入れました。それを、難局を乗り越えるために話が作れる子、機転の利く子という形で表現しました。
この時代の西部開拓の地域には、女性が1~2パーセントしかいなかったそうです。その中で、マーサが性別を超えてトライしていく姿を描きたいという思いはもちろんありました。映画の流れとしては、女性は馬車の周りにいて座っている、男性は動いているという、二極を描いています。また、見た目も、女性は明るい色のスカートを履いていて、男性はモノトーンに近いものを着て帽子をかぶっているというふうに対照的なものにして、動く範囲の違いも性別を意識しました。マーサはそれらを超えていく人間として描きたかったのです。
確かに、19世紀に引かれたり、フェミニズムを描きたいという思いは何となくあります。ただ、そうした話を意識的に探しているわけではありません。あとは、広大な背景に対する憧れがあるので、前作の北極点や今回の米西部の荒野が舞台になったのだと思います。
広大な自然を描くのはとても難しく、特に今回の米西部の荒野を描くのはとても苦労しました。パイロット版を作ったときに、広大な風景を表し切れていないと感じて、もう一度初めから作り直しました。そのときに、色使いも含めて参考にしたのが、鉄道のポスターでした。それらを見ながら、広さを意識しながら作っていきました。色使いにはとても気を使いました。見た目に強い印象を与える映画を作りたかったので、印象派やナビ派の画法を取り入れて、光が入って色が押し寄せてくるような感じにしました。あとはアメリカの風景画も参考にしました。色は人間の感情をかき立てるものだと思うので、ストーリーだけではなく、色でも、見る人の感情を揺さぶるようなものを作りたかったのです。
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