【インタビュー】舞台「フェードル」大竹しのぶ コロナ禍での“伝説の舞台”再演に「生半可なものは届けられない」

2021年1月4日 / 14:08

 2017年に主演・大竹しのぶ、栗山民也演出で上演され、第52回紀伊國屋演劇賞の個人賞を受賞した、舞台「フェードル」が1月8日から再演される。ギリシャ悲劇「ヒッポリュトス」から題材を得た本作は、義理の息子に恋をしたことから悲劇へと向かう女性の姿を美しく、破滅的な激情を表現しながら描く。主人公のフェードルを演じる大竹に、本作の魅力、そしてフェードルを演じることの楽しさを語ってもらった。

フェードルを演じる大竹しのぶ

-再演が決まったときの気持ちを教えてください。

 初演の幕が開いてすぐに、栗山さんが再演をしたいとおっしゃっていたんです。栗山さんは、すごく手応えを感じていたのかもしれません。私自身は、ただただフェードルを演じるのが楽しかったので、再演が実現したことも、再びフェードルという役を演じられることもうれしかったです。

-今回は、林遣都さんや瀬戸さおりさんなど新キャストも参加します。キャストが新しくなったことで、大竹さん自身の役への向き合い方も変わりましたか。

 それは、もちろん変わります。イッポリットが若くなったということが大きいかもしれないです。そりゃ、アリシーを選びますよね(笑)。でも、それでもフェードルはイッポリットが好きでたまらない。その姿は、より悲しいですし、恋に狂ってしまった様子を表現しやすいようにも思います。もちろん、演技をしている間は、そういったことは考えませんが、客観的に見たら、その悲しさが際立つのではないでしょうか。ただ、具体的に、相手が変わるから、再演だからこうしようということは考えていないです。

-初演時にフェードルを演じるのが楽しかったとおっしゃいましたが、どんなところが楽しかったのですか。

 この作品に出てくる人物はみんな、すごくストレートに感情を表現します。突然乙女になったり、相手の態度を見て瞬時に発狂したり…。それが青春っぽいんです(笑)。そういう戯曲はあまりないですし、分かりやすく感情を表現できるのは演じていて面白いです。

 それから、この作品は、ギリシャ悲劇をモチーフに作られていますが、ギリシャ悲劇は演劇の原点だと思っているので、そういった意味でも面白さがあります。2003年に(同じくギリシャ悲劇を題材にした)「エレクトラ」という作品に出演させていただいたのですが、その作品に出演したときに、「これが演劇なんだ」と感じました。舞台上には何の装置もなく、ただそこに立って、役者の肉体と感情だけでみんなを引っ張っていくというのが、とてつもなく面白かった。最近の演劇では、映像を使ったり、音楽を使ったりと舞台の見せ方にもいろいろな手法を用いることが多いですが、役者の声と肉体だけでその世界を作り出すというのは、役者にとって最高の面白さがあると思います。そして、それができるのがギリシャ悲劇などの古典作品なんだと思います。

-逆に、古典ならではの難しさは?

 この作品で言えば、とにかくストーリーがスピーディーだということ。フェードルの周りで起こる出来事が、次々と描かれているので、感情も目まぐるしく変わっていきます。旦那さんが死んじゃった。ラッキー。私はイッポリットが好き。権力もあげる。そうしたら、旦那さんが生きて帰ってきた。じゃあ…というように、とにかくすごいスピード感があるんです。なので、感情が乗り遅れないようにしなければいけない。常に感情を爆発させられるような状態を保たなければいけないので、そこは大変ではありますね。

-現在(取材当時)、稽古のまっただ中ですが、稽古場の雰囲気はいかがですか。

 栗山さんのお稽古の進め方がすごく早いので、(再演から参加した)さおりちゃんや遣都くんたちは大変だと思います。この作品は、いわゆる「せりふ劇」なので、スピードのある稽古だと、「どうしよう」ってなってしまうんですよ。私たちも初演のときはそうだったので、慰めたり励ましたりしながら、日々、稽古しています(笑)。でも、2人とも、「すごく楽しい」って言っています。遣都くんなんか「できないところがあるから楽しい。やっていることが楽しい。見ているのも楽しい。注意されるのも楽しい。こういうのが自分に合っていると思う。好きです」と言っていたので、うれしくなりました。演劇の原点とも言えるギリシャ悲劇の作品を好きだと言えるなんて、本当にお芝居が好きなんだと思います。だから、キラキラしていますよ、稽古場でも。でも、それは、遣都くんだけではなくて、この座組み、みんながそうなんだと思います。意識が同じ人間が集まると、稽古場の空気が澄みわたるんです。ベテランも若手も関係なく、ただ芝居が好き、いいものを作りたいという思いが一致した稽古場は、空気がきれいです。

 
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