【インタビュー】『科捜研の女 -劇場版-』内藤剛志「一度でも『科捜研の女』に加わった人間はみんなファミリー」

2021年9月2日 / 07:01

 科学捜査研究所(通称:科捜研)のスペシャリストと京都府警の刑事たちが、科学を駆使して難事件に挑む。1999年の放送開始から20年を越えたテレビ朝日系の人気ドラマ「科捜研の女」待望の劇場版が9月3日に公開される。本作で、科捜研の法医担当として活躍する主人公・榊マリコ(沢口靖子)と協力して事件の捜査に当たるのが、刑事の土門薫だ。土門を長年演じてきた内藤剛志に、番組の長寿の秘訣(ひけつ)とも言えるチームワークの良さを中心に、劇場版の見どころを含めて話を聞いた。

土門薫役の内藤剛志

-放送開始から20年を超え、俳優人生の半分近くを一緒に過ごしてきた土門薫という役は、内藤さんにとってどんな存在でしょうか。

 「こういう男になりたい」という理想の男です。正義感があるし、誰に対しても距離が一緒。上司に対しても、部下に対しても同じで、まったくブレがない。現実の社会ではなかなかできることではありません。だから、「混じりっ気のない男」あるいは「一筆書きで描いたようなシンプルで力強い男」というイメージがあります。

-視聴者には、土門=内藤さんに見えるのでは?

 そうだったらうれしいです。僕は基本的に、犯人役のような特別なものを除いては、“役作り”みたいなことはあまりしないので、土門にも僕自身の要素がたくさん入っている気がしているんです。人生の大事な時期を20年近く一緒に生きてきた男でもあるので、どこかに自分が入っていなかったら寂しいですし(笑)。

-土門を語る上では、主人公・榊マリコとのコンビが欠かせません。マリコ役の沢口さんの座長ぶりを、どんなふうにご覧になっていますか。

 どれだけ準備をして、どれだけ真正面から向きあっているか。その姿を見せるのが、彼女の座長としてのあり方のような気がしています。真正面から向き合い、一切手を抜かない。生真面目、几帳面、そして熱心。「疲れた」と絶対に言わない。それが、沢口靖子という女優です。その姿がみんなに影響を与え、座長としての空気を作っているんじゃないでしょうか。

-沢口さんは実際、どんな準備をしているのでしょうか。

 せりふは完璧です。僕は「ある程度、意味が通じればいい」という感覚でしゃべりますが、彼女は何度録音しても、全部一緒。例えば、「昨日、公園に行った」を「昨日公園に、行った」または「昨日公園に行った」と言っても意味は通じますよね。でも、沢口さんは「てにをは」や「、」の位置まで全部台本通り。

-すごいですね。

 撮休の日も、恐らくずっとホテルで勉強しているんじゃないでしょうか。一度、冗談半分で彼女に「寂しかったら電話しなよ。飯でも食いに行こう」と言ったことがあるんです。そうしたら、「大丈夫です」って(笑)。多分、自分の中でルーティンを作っているんでしょうね。ここでこれを撮るから、ここから準備して…と何日も前から時間割を作ってこなしていく。だから、僕が食事に誘ったりしたら、それが狂ってしまうんでしょう。

-長く俳優として活躍してきた内藤さんから見ても、そういう人は他にいないと?

 いませんね。“沢口靖子”というジャンルですよ(笑)。僕は「科捜研の女」以前から共演が多かったので、彼女との共演経験はかなり長い方だと思います。大ざっぱな僕とは全く違いますが、だからコンビとしてやっていけるんでしょう。僕までそんなに几帳面だったら、大変です(笑)。でも、そういう彼女の努力があったからこそ、20年間、番組の魅力が失われなかったんだと思います。

-今回の劇場版は、そうやって続いてきた「科捜研の女」20年の集大成として、過去の登場人物が数多く登場するのも見どころの一つですね。

 昔の仲間がまた戻ってきてくれるのは、すごくうれしい。ただ、僕の中では彼らもずっと同じ世界の中で一緒に生きてきたと思っているんです。たまたま今回は映ったけど、それ以外の場面でもきっとどこかで会っているんじゃないかと。

-そういう意味で今回、懐かしい顔ぶれがそろったのは心強かったのでは。

 そうですね。僕はいつも、今までいたメンバーが番組を卒業していくときに、送る言葉として必ず言うんです。「卒業しても、一度でも『科捜研の女』に加わった人間はみんなファミリーだぞ」と。それは、犯人役の方も含めてです。だから、いつ帰ってきてもいい。今回出てこなかったメンバーはまだまだいますから、毎年1本ぐらい劇場版が撮れるといいんじゃないかな(笑)。

-そういう気持ちを持っていることも、番組が長く続いてきた理由の一つかもしれませんね。その点、今回の劇場版は、今までのファンだけでなく、初めて見る人もそういう人間関係を知ることができ、入門編的な楽しみ方もできますね。

 人間関係の大まかな相関図が把握できますよね。マリコに関しては、実は結婚歴があったことを知らない人も多いでしょうし。他にも、過去にこういう人たちがいた、ということが分かるので、気になったら映画を見た後、再放送や配信で過去のシリーズを楽しんでいただけたらうれしいです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

宮藤官九郎「人間らしく生きる、それだけでいいんじゃないか」 渡辺大知「ドラマに出てくる人たち、みんなを好きになってもらえたら」 ドラマ「季節のない街」【インタビュー】

ドラマ2024年4月26日

 宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え … 続きを読む

【週末映画コラム】全く予測がつかない展開を見せる『悪は存在しない』/“反面教師映画”『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

映画2024年4月26日

『悪は存在しない』(4月26日公開)  自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からもそう遠くないため移住者が増加し、緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧(大美賀均)は、娘の花(西川玲)と共に自然のサイクルに合わせたつつましい生活 … 続きを読む

志田音々「仮面ライダーギーツ」から『THE 仮面ライダー展』埼玉スペシャルアンバサダーに「埼玉県出身者として誇りに思います」【インタビュー】

イベント2024年4月25日

 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内「角川武蔵野ミュージアム」3Fの EJアニメミュージアムで、半世紀を超える「仮面ライダー」の魅力と歴史を紹介する展覧会『THE 仮面ライダー展』が開催中だ。その埼玉スペシャルアンバサダーを務めるの … 続きを読む

岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年4月25日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていく … 続きを読む

瀬戸利樹、セラピスト役は「マッチョな体も見どころ」 役作りは「実際に施術を見学して、レクチャーを受けました」

ドラマ2024年4月24日

 現在放送中のドラマ「買われた男」で主演を務める瀬戸利樹が取材に応じ、本作の魅力や役作りについて語った。  本作は、三並央実氏と芹沢由紀子氏による漫画『買われた男~女性限定快感セラピスト~』が原作。セックスレスの主婦、芸能人、女社長、風俗嬢 … 続きを読む

Willfriends

page top