田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

2025年12月24日 / 13:00

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこじらせる40代の小説家・矢添の滑稽で切ない愛の行方を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら描き出した本作で、矢添と交渉を持つ娼婦の千枝子を演じた田中麗奈に話を聞いた。

田中麗奈【スタイリスト:岩田麻希/ヘアメーク:ナライユミ】 (C)エンタメOVO 

-まず脚本から読んだ印象から伺います。

 もう脚本の全てが荒井(晴彦)さんという感じでした。「ジャンル荒井晴彦」とでも言うような。荒井さんの香りがすごく湧き立っていて、本当に色っぽいなと思いました。

-純文学のような雰囲気もありましたね。

 そうですね、言葉の美しさなどはまさに純文学。とても文学性と芸術性の高い作品だと思いました。登場人物のそれぞれが選ぶ言葉が本当にすてきで色気があるんです。私が演じる千枝子のせりふを早く言いたいと思いました。

-脚本を読んだ後で原作を読んだんですね。

 はい。読んでみたら「本当に原作そのままだ」と思って。荒井さんが、脚本として交通整理をしている感じだったので驚きました。吉行淳之介さんの原作のままで脚本が成立していると思いました。

-千枝子のキャラクターをどのように捉えましたか。

 千枝子の矢添への思いはすごく感じました。感じたけれど、矢添という社会的な地位のある有名な作家の立場や状況を考えると、親しくはしているけど、一歩外へ出れば全く立場の違う2人であるということ。一緒に歩いているだけでもスキャンダルになりかねないという思いがある。だから一緒にいれば楽しいけれど、矢添が帰るとすごく寂しいというのは感じました。矢添にとって千枝子は、大きな月だったんじゃないかなと思うんです。暗闇を照らす月のような存在だけど、近いようで遠い。そういう存在です。

-演じる上で、気を付けたことや心掛けたことはありましたか。

 作品に入る前に、千枝子が今まで生きてきた道みたいなものを自分なりにたどってみました。彼女の家族のことを考えたり、人生の選択の中でなぜ今娼婦をやっているのか、彼女の同世代の人たちはどういう動きをしたのか、友達はいるのか、矢添みたいに話せる相手は他にいるのか、お休みの日は何をしているのかとか、そういうことを全部自分の中でふに落ちるようにしていきました。それで、「私はそうやって生きてきたの」という感じで現場に入れれば、千枝子が生きてきた状態が香り立つのではないかと考えましたけど、いざ現場に入ったら、相手をしっかり見て、相手の声を聞きたいし、相手に集中したいなと思いました。

-自分なりに千枝子のバックグラウンドを考えて、それを役に生かしていった感じでしょうか。

 そうですね。自分でノートを1冊作るんです。彼女のプロフィールや好きなものなどを書いていって、彼女の思いなどを日記風に書いてみる。そんな感じで彼女と私の経験を一体化していくようなことはしました。私の中での千枝子のイメージはドビュッシーの「月の光」なんです。撮影に入る前にこの曲を聴いたら、彼女の心情にピタッとはまって、本当に涙が出てきてしまい、「これだ」と思いました。

-タイトルにも月が入っていますからね。田中さんの娼婦役は新境地というか、新鮮な感じがしましたが。

 娼婦役は(朝ドラの)「ブギウギ」でも演じました。確かに新境地と言ってくださる方もいらっしゃいますが、自分で決めることではないのかなと思うので、持っていただけた印象のままにしておこうと思っています。私としては新境地だとは思ってはいないのですが…。

 
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