【インタビュー】映画『初恋』三池崇史監督 三池節全開の痛快エンターテインメントに窪田正孝ら豪華キャストが集結「『よくこの作品を選んでくれた』と感謝したい」

2020年2月26日 / 16:15

 新宿・歌舞伎町。余命わずかと宣告され、当てもなくさまよっていたプロボクサーの葛城レオ(窪田正孝)は、ひょんなことから何者かに追われていたモニカ(小西桜子)を救う。だが、モニカを追っていた男は、やくざと手を組む悪徳刑事・大伴(大森南朋)だった。これをきっかけにアウトロー同士の抗争に巻き込まれたレオとモニカは、逃避行を繰り広げることに…。2月28日に全国ロードショーとなる『初恋』は、窪田正孝、内野聖陽、大森南朋、染谷将太ら豪華キャストが顔をそろえた痛快エンターテインメントだ。メガホンを取ったのは、『悪の教典』(12)、『無限の住人』(17)、『ラプラスの魔女』(18)などの話題作を続々と手掛ける三池崇史。けれん味たっぷりの三池節全開となった本作誕生の舞台裏を聞いた。

三池崇史監督

-この映画が生まれた経緯を教えてください。

 かつての東映映画もそうですが、僕らの世代で言えば、“Vシネマ”というブランドがあって、ある程度約束事を守れば、自分たちの好きに作品を撮っていた時代がありました。多くの観客が求めているものを作るのも、もちろん大事なことです。ただ、そういう動きをしながらも、あの頃のように、撮りたいものを撮って発信していくことで、少しでも自分たちの居場所をキープしていくべきではないか。『孤狼の血』(18)などを手掛けてきた東映のプロデューサーの紀伊(宗之)さんの、そういう発想がきっかけです。それに対して、僕らの方から「じゃあ、こういう話ですね」と提案していったところから始まりました。

-脚本は、三池監督と脚本家の中村雅さんとの間で、どんなふうに作っていったのでしょうか。

 僕の方からは、“昔はあったのに今は見かけなくなってしまったもの”、歌舞伎町が舞台で、くだらないやつがいて…というざっくりとした投げかけだけです。あとは、中村が一気に書いてくれて。それが十分面白いものに仕上がっていたので、僕の方ではちょっと手を加えたぐらいです。

-本作は出演者も豪華ですね。

 「よくこの作品を選んでくれた」と感謝したいぐらいです。みんな他の仕事も抱えていて、スケジュールはいっぱいなはずですから。いくらぴったりな人でも、スケジュールが合わない場合、取れる方法は二つしかありません。その人に合わせてスケジュールを変更するか、もしくは、合う人の中から選ぶか。そんな状況の中で、みんながこの作品を選んでくれた。そういう意味では、「出会うべくして出会った人たち」という気がしています。

-なるほど。

 “キャスティング”と言うと、選んでいるように見えますが、実は選ばれているのは僕ら。そういう意味では、役者はお客さんで、監督はサービス業です。だから、現場では厳しい状況に追い込まれながらも、役者が楽しんでくれているかどうか。ただ、現場で1人ずつと話をしようとすると、それぞれ伝え方が異なってしまう。そこで、その場の空気に合わせて、一括して「こんなふうに」と伝える。そうすると、役者同士の化学反応が起こってくるんです。

-その中でも、ヒロインのモニカ役の小西桜子さんは、オーディションで選んだ新人だそうですが。

 オーディションで選ぶ際、「この子ならできるんじゃないかな…?」という感触では駄目なんです。そうではなく、「この役をやるべくして生まれてきた人」を探している。具体的には、「入ってきた瞬間にホッとできる人」。そこに立っているだけでビジュアル的に説得力があって、あとは声を聞けばもうOK。今回の小西さんは、まさにそんな人でした。キャリアを聞いてみたら、「まだ新人で、映画もほぼ出演経験がない」ということだったけど、全く問題なかったです。

-主演の窪田正孝さんは、「ケータイ捜査官7」(08)以来、10年ぶりの三池監督作品の主演ですよね。

 「ケータイ捜査官7」以降も『十三人の刺客』(10)に出てもらったり、現場に遊びに来てくれたりしていましたが、役者としてしっかり生きている、なかなかいないタイプだと思います。でも、受ける印象は最初に会ったときと何も変わらない。いろんなことを感じたり経験したりしてきているはずなのに、彼の場合、中身はあの頃のままです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top