【インタビュー】映画『キャッツ』葵わかな「真っ白な状態の猫なので、純粋さを失いたくないという思いを込めました」

2020年1月21日 / 12:00

 ミュージカルの金字塔「キャッツ」がついに実写映画化され、1月24日から全国公開される。監督は、『英国王のスピーチ』(10)や『レ・ミゼラブル』(12)で知られるトム・フーパー。主人公の白猫ヴィクトリア役を、英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルを務める、フランチェスカ・ヘイワードが演じる。本作の日本語吹き替え版で、ヴィクトリア役に挑戦する葵わかなに、本作の見どころや、初めて挑むアフレコでのエピソードを聞いた。

ヴィクトリア役の吹き替えを担当した葵わかな

-ヴィクトリア役はオーディションで決まったと聞きました。オーディションにはどんな気持ちで臨んだのでしょうか。

 最近、ミュージカル映画はとても人気があり、注目を浴びていますが、それらの作品を見ていて、自分も出てみたい、やってみたいという思いがあったので、オーディションに声を掛けてもらえたことに感謝の気持ちでした。私にこんなチャンスが巡ってくるなんてと、楽しみながら受けることができました。実は、オーディションを受けたときにはまだ台本も頂いていなくて、ヴィクトリアが歌う「ビューティフル・ゴースト」という楽曲だけを聞いて臨んだんです。オーディションでもその歌を歌わせていただきました。台本を読んでいなかった分、まだ気負いは感じていなくて、ただただ、この歌を本番でも歌いたいというシンプルな気持ちを込めて歌いました。

-そんなオーディションを経て、ヴィクトリア役に決まったときの心境は?

 とにかく「よかった~!」って(笑)。オーディションで歌ったときに、もっとこうすればよかったとか、いろいろと思うこともあったので、もう1回、歌えるということにホッとしました。今回の収録では、ヘッドマイクを着けて自由に動きながら吹き替えを行ったのですが、オーディションでも同じスタイルで行わせてもらえたんです。なので、オーディションのときは、本番を人より早く体験してしまったような気持ちになっていたのですが、本当の本番を迎えられることが分かって、うれしかったのを覚えています。

-実際に吹き替えを行った感想は?

 お芝居と似ているようで、全く違って、難しいこともたくさんありました。ただ単にヴィクトリアという役を演じればいいわけではなくて、ヴィクトリアを演じているヘイワードさんの気持ちを考えながら吹き替えをしなくてはいけないというのが難しかったです。悲しいときに、私だったらこう表現するけど、ヘイワードさんはこうやって表現しているから、こんな気持ちなのかな? とスタッフの皆さんと話し合って、想像しながら行いました。

-オーディションでも着けたというヘッドマイクを使っての収録も珍しい試みですね。

 私自身はこの作品が初めての吹き替えなので特別な感じはしませんでしたが、動きながら声を出せたので、私にはやりやすかったです。例えば、映像の中でジャンプしながら話しているシーンを、立ち止まったまま吹き替えるのは難しいので、ジャンプしたり、動いたりしながらやっていました。その方が声の弾み具合や、息の出方が再現できると思ったので。動きが制限されずにできたことは、私にはありがたいことでした。

-大ヒットミュージカルを原作にしているということで、ミュージカル版と映画版の違いは誰もが気になるところだと思いますが、葵さんはどう感じましたか。

 作品の雰囲気や、どちらも素晴らしいダンスやパフォーマンスが見られるという点では、共通しているものがあると思います。でも、ミュージカル版はステージで見るものですから、エンターテインメント性が高く、ショーとして成り立っているという見応えがあります。映画版は映像を通して細かいところまで見られるので、キャラクターそれぞれの表情や喜怒哀楽、猫らしさが楽しめると思います。

-ミュージカル版は音楽とダンスで物語をつむいでいく作品のため、せりふがほとんどありません。今回の映画版ではせりふは増えているのでしょうか。

 一般的な映画と比べたら少ないとは思いますが、ミュージカル版よりもせりふはありますし、ストーリーも分かりやすいと思うので、お子さんにも楽しく見ていただけると思います。華やかですし、さまざまなダンスも見られるので、たくさんのショーを一度に見た気持ちになれるんです。ミュージカルを見たことがない人や、ダンスが好きな人にも気に入ってもらえる作品になっていると思います。

-葵さんはヴィクトリアという役をどのように捉え、どんな点を意識して演じましたか。

 ヴィクトリアは、すごく無知な猫なんです。まだ若くて何も知らない、真っ白な状態の猫なので、純粋さを失いたくないという思いを込めました。それから、たくさんの猫が出てくる中で、どうしてヴィクトリアが主人公になったんだろうって考えたときに、きっと個性豊かで濃いキャラクターの猫たちがたくさんいる「キャッツ」の世界に誘えるのは、ヴィクトリアのようなフラットでクリーンな猫が必要だったんだと思いました。なので、お客さんがヴィクトリアを通して「キャッツ」の世界に入り込んでいけるような、そんなキャラクターになればいいなと思っていました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月25日

 WEST.の桐山照史がロミオ、柄本時生がジュリエットを務める、Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」が7月6日から上演される。本作は、映画『愛を乞うひと』の脚本などでも知られる劇作家・演 … 続きを読む

Willfriends

page top