「『タクシー運転手が五輪の組織委員会に入る』と聞き、思わず『どうやって?』と聞き返しました」角田晃広(森西栄一)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年11月10日 / 20:50

 事務総長の田畑政治(阿部サダヲ)を中心に、1964年の東京オリンピックに向けて精力的に活動する組織委員会。その一員として「聖火リレー踏査隊」に参加し、アテネからシンガポールまで2万キロを自動車で走破、陸路での聖火リレーの可能性を検証したのが森西栄一だ。平凡なタクシー運転手から、自ら志願して組織委員会に加わった異色の存在を演じるのは、人気お笑いグループ“東京03”の角田晃広。実は序盤にタクシー運転手役で出演しており、森西役は本人にとってもサプライズな展開だった。その起用の舞台裏、役に込めた思いを聞いた。

森西栄一役の角田晃広

-序盤にタクシー運転手役で出演されていましたが、森西役というのはご存知でしたか。

 全く知りませんでした。第1回と第6回にタクシー運転手役で出演したときは、それで終わりだと思っていましたから。帰り際、スタッフさんとの会話で、「ひょっとしたら、時代が変わって、終盤になったらまた出番があるかも」とは聞いていましたが、「またタクシー運転手かな…?」と思っていた程度で。

-森西役と聞いたときのお気持ちは?

 話を聞いたのは、撮影に入る2カ月ぐらい前です。事務所の方から「出番がありそう」という話がきて、「また運転手役だな」と思っていたら、「組織委員会に入る」と聞き、「はぁ!?」と(笑)。「どういうこと? 別の役?」と聞いてみたら、事務所の方もきちんと把握していなかったので、マネジャーに確認したところ「タクシーの運転手なんですけど、その方が委員会に…」という話だったので、思わず「どうやって?」と聞き返してしまいました。その後、改めて「聖火リレー踏査隊の森西栄一さん」という説明を聞き、ようやく事情が飲み込めた…という感じです。

-台本を読んでみた感想は?

 まさかこんなに物語に深く関わるとは思っていなかったので、最終回に向けて結構、重要な役になることを知ってびっくりでした。

-阿部サダヲさんとは第6回でも共演していますが、森西役で現場に戻った時の反応は?

 森西役で撮影に入る前、僕が別の仕事でNHKに来ていたとき、ちょうど撮影中の阿部さんと遭遇したことがあったんです。「まだ撮影やっていますよ」と話してくれたので、「僕もまた来月ぐらいから戻れるみたいです」と言ったら、阿部さんが「えっ!?」と(笑)。そこから「何の役?」「なんか、委員会に入るみたいで…」「委員会!?」というやり取りがあり…(笑)。撮影に入ったときはお互いに事情を理解していましたが、その時点では阿部さんも「はぁ?」という感じでした。

-森西さんに対する印象は?

 タクシー運転手から組織委員会に…というのは物語上の設定かと思ったら、実話なんですよね。劇中で、自分から「やらせてください」と申し出るシーンがありましたが、それも実話。だから、自分からどんどん道を切り開いていく方なんだなと。そういうイメージを頭の片隅に置きながら演じています。

-志願して聖火リレー踏査隊に加わった森西さんの思いを、どんなふうに理解しましたか。

 たまたまタクシーに乗ったお客さんに、自分から「やらせてください」とはなかなか言えませんよね。オリンピックが国民的な行事ということで、「できれば参加したい」という思いがあったのかもしれません。それに加えて、森西さん自身がいろいろなことに興味を持ち、行動力のある方だったから、できたことなのかなと。しかも、調査の結果「ギリシャから陸路での聖火リレーは無理」という結論になりましたが、森西さん自身はこれがきっかけでサファリレースにはまったそうです。だから、苦労しただけでなく、楽しさを感じる部分もあったのではないでしょうか。

-森西さんのご家族に会う機会はありましたか。

 撮影を見学に来たご家族が、実際に森西さんの使われていたネクタイを持ってきてくださったので、それを締めて撮影しました。そのとき、改めて「僕は森西栄一なんだ」ということを再確認し、重みを感じました。ただその分、「NGは見せられない」というプレッシャーがありましたが(笑)。

-ご家族の感想は?

 実は森西さんご本人は、眼鏡を掛けていないんです。でも、第1回の時に掛けてしまっているので、そのまま行くことになって…。だから、眼鏡に関してはご家族に「ごめんなさい」と謝りましたが、娘さんからは「角度によっては、ちょっと似ている」とおっしゃっていただけました。1歳の頃に森西さんが亡くなっているらしく、「動いているお父さんを初めて見た」とも言われました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

千賀健永、頭が良くてゲームが上手な弟に「かわいい復讐心はありました」【インタビュー】

ドラマ2025年7月7日

 トリンドル玲奈が主演するドラマ「レプリカ 元妻の復讐」が、7日23時6分からテレ東系で放送がスタートする。本作は原作・タナカトモ氏、作画・ひらいはっち氏による同名漫画を映像化。整形して別人として生きる主人公・伊藤すみれ(トリンドル)が、人 … 続きを読む

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

Willfriends

page top