【インタビュー】『喝 風太郎!!』市原隼人「柴田監督とは、芝居を通じて会話できる感覚がありました」柴田啓佑監督「ブレずにできたのは、市原さんがいてくれたおかげ」

2019年11月11日 / 14:42

 『サラリーマン金太郎』の本宮ひろ志のコミックを映画化した『喝 風太郎!!』が11月1日から全国順次ロードショー公開された。本作は、型破りな僧侶の風太郎が、現代社会でさまざまな騒動に遭遇しつつ、悩める人々の心を開放していくさまを、笑いと人情味豊かにつづった痛快エンターテインメント。風太郎役で、はまり役と言える好演を見せた市原隼人と、好評放送中のテレビドラマ「ミリオンジョー」にも参加している新鋭の柴田啓佑監督に、作品に込めた思いを語ってもらった。

柴田啓佑監督(左)と市原隼人

-オファーを受けたときの感想は?

市原 風太郎という熊のような男が、現代社会に出て、いろいろな騒動に巻き込まれていく物語は、素直に面白いと思いました。エンターテインメントとして、笑えるせりふや面白いシチュエーションもたくさんありますし。ただ、それだけでなく、ある意味、社会派でもあるなと。

-というと?

市原 今は、社会がシステム化され、隣人の顔も分からない、子どもを叱る大人もいない…というように、世の中からどんどん人間味が薄れていっている気がします。そんな中、仏法を掘り下げていくと、「何のために生まれ、何のために生きるのか」という自分を見つめ直すことにもつながる。本宮さんの原作には、そういうふうに世の中を俯瞰(ふかん)した上で、風太郎という男を通して、いろいろなことを伝えようとする意志が感じられました。脚本からも、そういう思いが伝わってきたので、そこは大きな魅力だなと。

柴田 原作が『サラリーマン金太郎』の本宮ひろ志さんなので、熱い話だろうと思って読んでみたら、熱さの中に優しさがあるんです。それが、自分の中ですごくフィットする感覚がありました。熱いし、ハチャメチャなんだけど、いろいろな縁がつながって物事が回っていく物語がすごくいい。原作では後半、かなりファンタジー色が濃くなりますが、「変えてもいい」ということだったので、前半の人間らしい風太郎を軸に、人が社会とどう向き合うのかを描こうと考えました。

-風太郎というキャラクターの魅力をどんなふうに捉えましたか。

市原 登場人物それぞれが、自分の居場所を探しているんです。でも、なかなかそれに気付くことができない。そんな中で、そのヒントをくれるのが風太郎。しかも、それを「ああしてほしい」「こうしてほしい」と押しつけるのではなく、風太郎の行動によって、みんなそれに自然と気付いていく。古き良き日本人の心を思わせる、風太郎のそういう部分が魅力的でした。

柴田 この作品では、今の時代に欠けているものを丁寧に描いてみたかったんです。そういう物語を踏まえた上で、風太郎が語る「(世の中は)縁(えにし)で回っている」と「生きるしかない」という二つの言葉は、胸に迫るものがありました。それは、この映画の軸にもなっています。

-そういう魅力を感じた中で、市原さんが演じる風太郎というキャラクターは、どんなふうに作っていったのでしょうか。

市原 細かく話し合ったわけではありませんが、僕も柴田監督も、原作を気に入った者同士だったので、言葉ではなく、芝居を通じて会話できる感覚がありました。僕も、監督の歩く姿や視線から、いろいろなものを感じ取りましたし…。これこそまさに、役者の醍醐味(だいごみ)だな…と。

柴田 風太郎は「こんな人、本当にいるの?」という型破りなキャラクターです。それを、地に足が着いた感じにしたいとは思っていました。ただ、それだけでは面白みがなくなってしまう。そんな中、市原さんが演じる風太郎は「本当にいそう」に見えたんです。それはやっぱり、俳優としての魅力やお芝居の力だな…と。撮影のときも、台本にない部分を市原さんの方から「こうしましょうか」と提案していただいたり…。僕は全体を見なければいけないので、どうしてもディテールを追い切れない部分が出てきます。だから、そういう部分を丁寧に拾っていただけたのは、すごく助かりました。

市原 信じるのは、すごく勇気のいることだと思うんです。でも、柴田監督はそれを感じさせてくれたので、僕も常に「何かできることはないか」と考えながら現場にいました。そういう環境を作っていただけたので、とてもやりやすかったです。

柴田 全てを言葉で伝えてしまうと、一緒にやる意味がありませんからね(笑)。そういう点では、市原さんのお芝居は、見ていてものすごく安心感がありました。最後までブレずにできたのも、市原さんが同じ目線でいてくれたおかげだと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

「ローマの共和制の問題点は、今の世界が直面している数々の問題と重なる部分が多い」『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』コニー・ニールセン【インタビュー】

映画2024年11月15日

 古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として壮絶な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』。巨匠リドリー・スコットが監督し、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5 … 続きを読む

Willfriends

page top