「最初は宮藤官九郎さんを、疑いの目でしか見られませんでした(笑)」神木隆之介(五りん)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年10月31日 / 18:43

 謎を秘めたキャラクターとして、第1回から登場してきた落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)の弟子・五りん。第39回で、ついに亡き父・小松勝(仲野太賀)と志ん生のつながりが明らかになり、10月27日放送の第40回では、金栗四三(中村勘九郎)の弟子として、マラソンでオリンピック出場を目指していた父の過去を知った五りんが、自ら走り始める姿も見られた。1964年の東京オリンピックに向けた最終章が幕を開けた今、五りんはどこへ向かうのか。演じる神木隆之介が、役に込めた思い、撮影の舞台裏を語ってくれた。

五りん役の神木隆之介

-ずっと謎だった父親が小松勝だと知ったときの気持ちは?

 「太賀かよ!?」と(笑)。小松勝がどうかということよりも、まずそこに驚きました。同級生が父親役というのは、すごく不思議な気分で…。劇中では直接会う機会がありませんが、どこかで会ったら彼を「お父さん」と呼ばなければいけないわけですから。知り合いでなければ「この人がお父さんだな」で済みますが、よく知る相手で親近感がある分、「あいつが…?」という微妙な気持ちになりました(笑)。

-改めて、五りん役のオファーを受けたときのお気持ちは?

 「浮かないかな…?」と心配になりました(笑)。1人だけ“五りん”というオリンピックを象徴するような名前で呼ばれるわけですから。どんな人物なのか聞いても、最初は「落語に興味のない弟子」としか教えてもらえず…。とはいえ、絶対に落語は話の中に出てくるだろうから、興味がないって、どんな立ち位置なんだろう…?と。そうしたら、自分も落語をやることになった上に、まさかこんなふうに物語をつなぐ役割になるとは…。結果的にはとてもいい役でうれしかったですが、最初は宮藤(官九郎/脚本家)さんを、疑いの目でしか見られませんでした(笑)。

-これまで何度か出演してきた宮藤さんの作品に、改めて出演してみた感想は?

 宮藤さんの作品では、僕は人をカチンとさせる役が多いんですよね。しかも、なぜか毎回、痛い思いをするんです。今回も、無事に過ごしてきたと思ったら、今後やっぱりバレーボールをぶつけられる場面があって…(苦笑)。宮藤さんの中では、僕はそういう役割なんだと再確認できました(笑)。ただ、人をカチンとさせるけど、どこか憎めないところがなければいけないんだろうな…とは思っています。

-落語はいかがですか。

 一生懸命やっていますが、個人的にはいっぱいいっぱいです(苦笑)。練習については、最初の頃に2、3回、扇子や手拭いの使い方、話し方、抑揚の付け方など基本的なことを先生から教わりました。撮影の際は、分からないことを、その都度質問するような形で見守っていただいています。

-落語の場面、お客さんの反応はどんなふうに受け止めていますか。

 お客さんはエキストラの方たちですが、お芝居でも、笑ってくれると僕も乗ってくるので、すごくうれしいです。ただ、五りんの落語は、決してうまくはありません。それでも、お客さんはちゃんと聞いて反応してくれる。ということは、たとえ下手でも、聞いて楽しいものでなければいけない。そのためには、まず自分自身が楽しまなければいけないな…と。だから、ものすごく緊張しますが、仮に失敗してもやり直しができる、と覚悟を決めて、思い切り楽しんでやることを大事にしています。

-五りんの師匠、古今亭志ん生役のビートたけしさんの印象は?

 初めてお会いしたときは、『アウトレイジ』だ! と(笑)。世界の北野武監督ですし、芸人としてもすごい実績を残されている方。だから、勝手に怖いイメージを持っていたんです。でも、五りんは師匠に対して、ものすごく失礼な態度を取るんですよね。それを芝居でやらなければいけないということは、僕自身も気後れしてはいけない。そうしないと、反射的な対応やアドリブのとき、どこか気を使った部分が芝居に出てしまいますから。そういう中途半端なことはしたくなかったので、僕の方から、雑談も含めて積極的に話しかけるようにしました。もし怒られたら、「こういう役なので…」と謝ろうと。

-その結果はいかがでしたか。

 実はものすごく優しい方だということが分かりました。僕の質問にもきちんと答えてくださいますし、芝居でも「俺がこうするから、こうして」といろいろ仕込んでくださって…。本当に器の大きさが無限大な方です。だから師匠なんだな…と改めて思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十六回「華の影」まひろと道長の再会から窺える物語展開の緻密さ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月27日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月21日に放送された第十六回「華の影」では、藤原道隆(井浦新)率いる藤原一族の隆盛と都に疫病がまん延する様子、その中での主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の再会が描かれた。  この … 続きを読む

宮藤官九郎「人間らしく生きる、それだけでいいんじゃないか」 渡辺大知「ドラマに出てくる人たち、みんなを好きになってもらえたら」 ドラマ「季節のない街」【インタビュー】

ドラマ2024年4月26日

 宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え … 続きを読む

【週末映画コラム】全く予測がつかない展開を見せる『悪は存在しない』/“反面教師映画”『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

映画2024年4月26日

『悪は存在しない』(4月26日公開)  自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からもそう遠くないため移住者が増加し、緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧(大美賀均)は、娘の花(西川玲)と共に自然のサイクルに合わせたつつましい生活 … 続きを読む

志田音々「仮面ライダーギーツ」から『THE 仮面ライダー展』埼玉スペシャルアンバサダーに「埼玉県出身者として誇りに思います」【インタビュー】

イベント2024年4月25日

 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内「角川武蔵野ミュージアム」3Fの EJアニメミュージアムで、半世紀を超える「仮面ライダー」の魅力と歴史を紹介する展覧会『THE 仮面ライダー展』が開催中だ。その埼玉スペシャルアンバサダーを務めるの … 続きを読む

岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年4月25日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていく … 続きを読む

Willfriends

page top