【インタビュー】「サギデカ」木村文乃「特殊詐欺がなぜなくならないのか。その理由が分かると思います」

2019年8月30日 / 17:00

 振り込め詐欺や還付金詐欺など、近年、大きな社会問題となっている特殊詐欺。そんな特殊詐欺を取り締まる警視庁捜査二課の活躍を通じて、その実態に迫る土曜ドラマ「サギデカ」が、8月31日からNHK総合で放送開始(毎週土曜午後9時~全5回)となる。脚本を担当したのは、「透明なゆりかご」(18)を始め、数々の話題作を手掛ける安達奈緒子。放送を前に、主人公の刑事・今宮夏蓮を演じる木村文乃が、ドラマの見どころ、撮影の舞台裏について語ってくれた。

刑事・今宮夏蓮役の木村文乃

-出演オファーを受けたときのお気持ちは?

 刑事役はこれまでも経験ありますが、捜査二課は初めて。よく知らなかったので、1人の人間として台本を読ませていただきました。そうしたら、小説かと思うぐらい人物像がはっきりしていて、気持ちの動きにうそがない。たちまち安達さんの脚本の魔力に魅せられました。それぐらいよく練られた台本だったので、「これは受けるしかない」と。

-魅力を感じたのは、どんな部分でしょうか。

 主演ということに加え、感情の振り幅も大きな面白い役柄だったので、挑戦になるな…と。何より、原作のないオリジナル作品をやらせていただくのも貴重な機会ですし、綿密に練り上げられた題材ということで、この作品に懸ける大人たちの意気込みに乗っかりたいと思いました。

-捜査二課の刑事を演じるために、どんな準備を?

 資料をたくさんいただきました。そこには、実際に特殊詐欺の被害に遭われた方々の声や、関係者に取材したインタビューがまとめられていて、読んでいるだけで「これは知らなければいけない」と思わせるものがありました。特殊詐欺を扱ったNHKの番組も見せていただきましたが、一筋縄ではいかない難しい問題だな…と。これだけ厳しく取り締まっているのに、なぜなくならないのか、疑問を持つ方も多いでしょうが、見ていただければその理由が分かると思います。

-そういう準備は、お芝居にどんな影響が?

 今回は、詐欺をする側の事情も細かく描かれているので、聞けば聞くほど、知れば知るほど、迷いが生じてきました。だから、私の中でも、答えが出ないまま、苦しみながらの撮影になり…。そういう生の声を知らずにやっていれば、自分の中で正解を持ち、もっとはっきりしたお芝居になっていたはずです。ただ、その迷いも今宮の葛藤として描かれているので、「正解が分からなくていい。物語を進めながら、自分なりの答えを見つけていこう」と考えました。

-今宮を演じる上で心掛けたことは?

 顔合わせのとき、西谷(真一)監督が「(映像の)つながりは気にしなくていいです」とおっしゃってくれたんです。これまで、どちらかというと「毎回、同じことをしなさい」という環境でお芝居をしてきたので、「その場で生まれてくるものを一番大事にしてください。後は僕たちが何とかします」と力強く言ってくださったことが、涙が出るぐらいうれしくて…。ならば、私も今宮を演じながら、縦横無尽に駆け回ろうと。だから、普段は「この人はこう」と決めてお芝居をしがちですが、「さっきはこうだったけど、ここは今のこういう感情で、このテンションでいい」と、ちょっと肩の荷が下りた感じでやることができました。

-今宮は一度逮捕した詐欺グループの一員・加地颯人(高杉真宙)と深く関わっていくようですが、2人の関係について教えてください。安達さんが「今宮がヒーローで、加地がヒロイン」とおっしゃったそうですが。

 安達さんからまず、「最初から犯罪者で生まれてくる人はいない。犯罪に手を染める人は、絶対に何らかの理由がある。だから、そこを愛してほしい。加地くんを愛してほしい」という話がありました。そう言われると、加地くんは守るべき対象になってくる。そうすると、加地くんを守る今宮はヒーローかな…と(笑)。でもそれは、みんながそう望んだから、自然にそういう空気が出来上がっていったんだと思います。

-次第に2人は信頼関係で結ばれていくようですね。

 そうです。その展開に無理やりな部分がないのが、安達さんのすてきなところ。自分が信じたものを貫くため、今宮は次々と行動を起こしていく。そのきっかけを作るのが、加地くんの役割になります。その中で、次第に憎むべき対象が見えてくるのですが、思っていたものとは違っていたり、100パーセントの悪とも言い切れなかったりと、深いものがあって…。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top