第一印象は「面倒くせ~」。でも成長や変化を丁寧に演じ「最後まで見てよかったと思われたい」 中川大志(坂場一久)【「なつぞら」インタビュー】

2019年8月31日 / 08:30

 時代の先を行く才能あふれるアニメーションの演出家で、なつ(広瀬すず)の夫でもある坂場一久役を好演している中川大志。良き夫として家庭を支えるも、当初は視聴者はもとより、自身も「面倒くせ~」と嘆くほどの性格で、役をつかむにはいつも以上の時間がかかったという。そんな役へのアプローチ方や演じる醍醐味(だいごみ)を、撮影エピソードとともに聞いた。

坂場一久役の中川大志

-朝ドラは「おひさま」(11)以来ですが、出演が決まったときの心境は?

 当時は小学6年生で、朝ドラに出演できることがどういうことなのかも理解していませんでした。でも俳優を続けていく中で、いつか戻りたいと思うようになっていたので、記念すべき100作目に出演できると分かったときはうれしかったです。ただ、男性キャストのオーディションを受け、合格の連絡をもらってから半年ぐらいは何の役かも分からなかったので、本当に出られるのか不安でした(笑)。役が決定したのはドラマがクランクインしてからでした。

-東洋動画スタジオで勤務していた頃は、アニメーションへの思い入れが人一倍強く、企画力に優れている一方、頑固でアニメーターたちを困らせていましたが、演じていていかがでしたか。

 僕も第一印象は「こいつ面倒くせ~」で、最悪の印象から徐々に好きになってもらうにはどうすればいいのか迷いました。その中で、キャラクターそのものを変えていくより、人との関わりや成長によって、もともと備わっている内面が徐々に見えてくるようにしようと考えました。演じるのはとても難しく、これまで頂いた役の中で軌道に乗るのに一番時間がかかりましたが、役の印象を変えていけるのは、スパンの長い朝ドラだからできるので、やりがいはあります。

-ヒロインの夫役と聞いたときのお気持ちは?

 まさかヒロインの旦那役とは思わなかったのでプレッシャーを感じました。この2人が、どういう夫婦になるかも想像ができませんでした。でも、坂場がなつに「アニメーションにしかできない表現とは何ですか?」と尋ねたシーンで、なつは馬の脚を多く描いてスピード感を表すことで、坂場は「あり得ないことを本当のように描くことです」と言葉で表すことで答えを出したとき、なつには坂場にない発想力やエネルギーがあり、坂場はなつよりも考えを言葉にする力があり、互いに補い合えるからこそ、いい関係になれると感じました。

-しかし、明確に“恋愛”が描かれていないところでの表現は難しかったのではないですか。

 恋愛ものはこれまでもやらせていただいていますが、今回は難しかったです。恋に落ちた瞬間が分からないし、プロポーズもいきなりですから(笑)。ただ、「君の力を一番生かせる演出家になりたかった」というせりふ通り、なつを好きになる入り口はそこだったと思います。その後、意見がぶつかったり、ピンチを救ってくれたり、いろいろある中で、いつも隣で同じ方向を見てくれていたので、いつの間にか恋愛感情が生まれたんじゃないかな。

-結婚してからの坂場は雰囲気が随分変わりましたね。

 子どもが生まれたことによる変化も大きいです。東洋動画スタジオでは私生活が見えなかったので、坂場家での様子から彼のことをより分かってほしいです。彼の成長や変化の過程をしっかり演じることで、「こんな人は絶対に嫌」から「この人と結婚してよかった」と思われたいです。でも、どうだろう…。もうすぐクランクアップですが、撮影が始まったときからずっと、視聴者にどういう受け止め方をされるんだろう…と考えると怖いです。

-不器用な一面は人に誤解を与えがちですが、コミカルにも映し出されていますよね。

 坂場の真っすぐさと、周りにどう見られているか自覚していないところが滑稽で、“笑われる人間”を目指していますが苦戦しています。カレーをこぼしたり、牛のふんを踏んで転ぶところは、職場で屁理屈を言っている姿とのギャップを出して人間味を見せようしましたが、演じていると楽しくなっちゃって、やり過ぎたかな…と反省しました(笑)。

-中川さんは器用な方ですか? 不器用な方ですか?

 坂場ほど不器用ではないです。カレーをこぼすシーンも、いかに自然に見えるかを計算し尽くしてやっているので、逆に僕が不器用であれば、あのシーンは成り立たないです(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十六回「華の影」まひろと道長の再会から窺える物語展開の緻密さ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月27日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月21日に放送された第十六回「華の影」では、藤原道隆(井浦新)率いる藤原一族の隆盛と都に疫病がまん延する様子、その中での主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の再会が描かれた。  この … 続きを読む

宮藤官九郎「人間らしく生きる、それだけでいいんじゃないか」 渡辺大知「ドラマに出てくる人たち、みんなを好きになってもらえたら」 ドラマ「季節のない街」【インタビュー】

ドラマ2024年4月26日

 宮藤官九郎が企画・監督・脚本を手掛けたドラマ「季節のない街」が、毎週金曜深夜24時42分からテレ東系で放送中だ。本作は、山本周五郎の同名小説をベースに、舞台となる“街”を12年前に起きた災害を経て建てられた仮設住宅のある“街”へと置き換え … 続きを読む

【週末映画コラム】全く予測がつかない展開を見せる『悪は存在しない』/“反面教師映画”『ゴジラ×コング 新たなる帝国』

映画2024年4月26日

『悪は存在しない』(4月26日公開)  自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からもそう遠くないため移住者が増加し、緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧(大美賀均)は、娘の花(西川玲)と共に自然のサイクルに合わせたつつましい生活 … 続きを読む

志田音々「仮面ライダーギーツ」から『THE 仮面ライダー展』埼玉スペシャルアンバサダーに「埼玉県出身者として誇りに思います」【インタビュー】

イベント2024年4月25日

 埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」内「角川武蔵野ミュージアム」3Fの EJアニメミュージアムで、半世紀を超える「仮面ライダー」の魅力と歴史を紹介する展覧会『THE 仮面ライダー展』が開催中だ。その埼玉スペシャルアンバサダーを務めるの … 続きを読む

岩田剛典 花岡の謝罪は「すべてが集約された大事なシーン」初の朝ドラで主人公・寅子の同級生・花岡悟を熱演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年4月25日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。明律大学女子部を卒業した主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)は、同級生たちと共に法学部へ進学。男子学生と一緒に法律を学び始めた。そんな寅子の前に現れたのが、同級生の花岡悟だ。これから寅子と関わっていく … 続きを読む

Willfriends

page top