【インタビュー】「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」浦井健治「稽古場は女子高!タピ活中です」

2019年8月20日 / 15:40

 「HEDWIG AND THE ANGRY INCH/ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」が2019年8月から、7年ぶりに日本で上演される。本作は、1997年からオフブロードウェーで初上演されロングランを記録、その後世界各地で上演後、01年には映画化もされ、数々の賞を受賞した。愛と自由を手に入れるため、性転換手術を受けたものの、手術の失敗によって股間に「アングリーインチ(怒りの1インチ)」が残ってしまったロックシンガー、ヘドウィグ。幾多の出会いと別れを経験し、傷つき倒れそうになりながらも己の存在理由を問い続け、「愛」を叫び求める姿が描かれる。日本語版公演では、過去に三上博史、山本耕史、森山未來が主演し、話題となった。本作でヘドウィグを演じる浦井健治に話を聞いた。

浦井健治

-日本では過去にさまざまな人が演じてきた「ヘドウィグ」ですが、浦井さんはこれまでの舞台をご覧になっていますか。

 生では見ていないんです。でもそれが逆に良かったのかも、とも思っています。例えば三上博史さんが演じるヘドウィグを見ていたら、きっと飲み込まれていたに違いないですから。「三上さんがやればいい」って言ってしまいそうだし…。

-この作品を今の日本であえて上演する意義をどのように捉えていますか。

 実はいつの時代も変わらないメッセージを持つ戯曲なので、「なぜ日本で」という視点はちょっと違うのかも、と思うんです。いつだって、どこでだって上演できる作品であり、シェークスピアのような、人間を描いている「古典」であると思うから。だから、今は「今の自分たちでできる『ヘドウィグ~』とはどのようなものだろうか?」を、みんなで考えているところなんです。

-なるほど。では浦井さんは、ヘドウィグ役をどのように作ろうと考えているのですか。

 何しろお手本ともいえる(イツァーク役の)アヴちゃんがいるので(笑)。アヴちゃんは歌い方、存在感、身振り手振りも惜しげもなく全て見せてくれるので、まねではなく、お手本としてそういうところを目指していけたらなと思っています。最初、われわれは「これらの歌をどう歌おうか」という目線で取り組もうとしていたんですが、翻訳・演出の福山桜子さんは、歌を通して、演劇としてうそのない歌詞と芝居を作ろうとしてくださっています。時代背景や情報をワークショップ的な場で体感させつつ、言葉にリアルさを目指しています。

 だから演じる側も、毎回「これが最後のライブ」となるべく、本番になっても毎公演毎公演ガラッと変わるぐらい、いい意味で“キマらない”と思います。音楽監督の大塚茜さんや歌唱指導の冠徹弥さんなど、スタッフもキャストも一丸となって頑張っています。冠さんについては、歌い方や、声の出し方などの技術も全て教えてくださるので、みんなでそれを吸収しようと真剣に見ているんです。

-ヘドウィグは自身を取り巻く存在に対してさまざまな「怒り」を放っていく人物です。以前浦井さんは蜷川幸雄さんに「喜怒哀楽の怒がない」と指摘されたそうですが、そんな浦井さんにとって、この役は少し苦手なキャラクターとなるのではないでしょうか。

 それが今回は苦手だと感じないんです。今回演じる「怒り」は一人で芝居をするときの「怒り」ではないから。ベルリンの壁や家族の問題など、ヘドウィグが抱えているものから放たれる「歌」なんです。今までトライしたことがない歌い方をゼロからやることで、怒りの昇華、表現につなげていこうとしています。(演出の福山)桜子さん、アヴちゃん、(音楽監督の大塚)茜さんたちと「皆で作っていこう」というこの空気が僕の背中を押してくれているんです。

-現在、歌の稽古からようやく顔合わせしての稽古が始まった段階だそうですが、歌ってみて特に好きな楽曲は?

 「The Origin Of Love」ですね。ママの事は絶対許せないんだけど、そういう環境で育てられた中での自分の核となることは…という場面で歌う曲ですが、そこから人類とは、命とは、ということを語っている壮大さに心引かれます。あとは後半で僕が歌うシャンソンのような、歌うというか、ずっと語っていて最後は「無」となるような「Midnight Radio」では表現の極致を目指せる気がします。

 
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