生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

2025年12月8日 / 11:43

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当時の絵師総動員で進められたプロジェクトだったというサプライズに続き、12月7日放送の第47回「饅頭(まんじゅう)こわい」では、現在、「写楽の正体」として定説となっている斎藤十郎兵衛を、一橋治済役の生田斗真が一人二役で演じることが明らかになった。その舞台裏を、制作統括の藤並英樹氏が脚本家の森下佳子氏と共に語ってくれた。

(C)NHK

-生田斗真さんが一橋治済と斎藤十郎兵衛の一人二役を演じる展開に、またまた驚かされました。どのような経緯でこのアイデアは生まれたのでしょうか。

藤並 「写楽の正体」と言われる斎藤十郎兵衛をどのように扱うかは長い間考えていたことで、生田さんが一人二役で演じるのは、最初から決まっていたわけではありません。元々は、史実では物語が終わった後も生きる治済に何かしらの罰を与えたいということで、当初は「歴史に名を残せなかった」という形の結末を考えていたんです。でも、次第に森下さんの中で「これだけ悪行を重ねた治済に勝ち逃げさせるのは、いかがなものか?」という気持ちが芽生えたらしくて。

森下 治済がラスボス的な存在になることは、当初の計画通りです。陰で好き放題やっていた卑怯な権力者には誰も感銘は受けないけど、悲惨な最期を迎えた平賀源内(安田顕)も「源内通り」といった形で名が残っているように、一生懸命生きた蔦重たちの足跡は残る。治済に対する仇(あだ)討ちは、今生ではかなわないものの、そんなふうに歴史が下してくれるだろうと。最初はそういう結末を考えていました。

-具体的にはどういう形でしょうか。

森下 それには蔦重が、「斎藤十郎兵衛」の名が世に広まることまで含め、「写楽という謎を仕掛ける」という展開はどうかと。数々の実績を潰されていった蔦重ですが、形は残らなくても、謎が残っていれば、みんながその真相を探ろうとして、名前が語り継がれる。実際、「写楽は誰なのか?」と後年、多くの人が奔走したわけですから。そこまで考えていたとしたら、時を超えたすごい仕掛けだなと思って。

-確かにその通りですね。

森下 でも、それはすごく観念的だし、「果たしてすっきりするだろうか?」という疑問が湧いてきて。それから、すっきりする方法を探して知恵を絞りました。だから、写楽の誕生にかかわる部分は当初の計画通りですが、仇討ちと一体になる展開は、途中で思いついたことでした。

藤並 そうやって森下さんが現在の形を考えてくださる中で、そのトリックに斎藤十郎兵衛を使えないかという話になり、せっかくなら生田さんに一人二役でお願いしようと。

-その話を聞いた生田さんの反応はいかがでしたか。

藤並 長い間、生田さんを含めて多くの方から「写楽は誰なんですか?」と聞かれるたび、「まだ決まっていません」と答えていたんです。最終的に「こういう展開になるので、ぜひ一人二役で」とお願いしたところ、生田さんも「面白そうですね!」と喜んでくれました。生田さんは十郎兵衛の歩き方や立ち方、しゃべり方まで治済とは変え、2人の違いを見事に表現してくださっています。だから、これまで何度か江戸市中に姿を見せていた生田さんが、治済だったのか、それとも十郎兵衛だったのか、ぜひ皆さんも考えてみてください。

-斎藤十郎兵衛役に生田さんがふさわしいと考えた理由を教えてください。

藤並 斎藤十郎兵衛は阿波蜂須賀家お抱えの能役者ですが、主役ではなく、脇役の家に生まれた人間です。当時の人々は、生まれながらの“分”や“家”に縛られる部分があり、そこから脱却していったのが、蔦重と田沼意次(渡辺謙)でした。実はそれは、この作品の大きなテーマでもあるので、脇役の家に生まれた十郎兵衛も、内心では主役に憧れたり、「もっと面白いことをやりたい」という欲があったりする方がいいのではと。でも、それをあからさまに出すわけではない。それは、治済とは真逆の人物像でもあるので、生田さんに演じて頂けたらさらに面白くなるはずだと。森下さんや大原(拓/チーフ演出)とそういう話をした上で、生田さんにもお伝えしました。

制作統括の藤並英樹氏(写真提供:NHK)

 
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