【インタビュー】『愛がなんだ』岸井ゆきの「『この役を逃したら駄目だ!』と思いました」今泉力哉監督「テルコ役は『ぜひ岸井さんで』とお願いしました」

2019年4月18日 / 12:00

 友人の結婚式の二次会で出会った田中マモルに恋した山田テルコ。その日からテルコの日常は、マモルこと“マモちゃん”一色に染まり始める。平日の朝でも電話で呼び出されれば、平気で仕事もぶっちぎる。だけど、そんなテルコにマモちゃんは気まぐれな態度を繰り返し…。4月19日公開の『愛がなんだ』は、角田光代の同名小説を原作に、平凡なOLテルコのいちずな片思いを、独特のユーモアと切なさあふれるタッチでつづったラブストーリー。数々の恋愛映画で注目を集める今泉力哉監督の下、主人公テルコを演じたのは、NHKの連続テレビ小説「まんぷく」(18~19)でも好演を見せた岸井ゆきの。日本映画界期待の2人が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

(左から)岸井ゆきの:ヘアメイク・星野加奈子/スタイリスト・岡本純子(アフェリア)と、今泉力哉監督

-マモル一筋のテルコのキャラクターが、岸井さんにぴったりでした。テルコのどんなところに魅力を感じましたか。

岸井 とにかく真っすぐなところです。これだけ真っすぐで、ちょっとエキセントリックだけど、とにかく思いだけは強い。そんな主人公を演じられることは、そうそうないんじゃないかと。私は好きな人がいたとしても、テルコのように仕事も友人も捨てられないけど、だからこそぜひやりたいと。「これを逃したら駄目だ!」ぐらいの勢いでした(笑)。

今泉 僕も、テルコ役を決める際、いろいろな人の名前が挙がる中で、岸井さんの名前が出たとき、「ぜひ岸井さんで」とお願いしました。マモルとの関係がどれだけ深刻になっても、ムードが暗い方に行かないんですよね。いくら落ち込んでも、おいしそうに食事をするし、絶対に死ぬことはない(笑)。それが、テルコのキャラクターであり、岸井さんの魅力でもあるなと。

-テルコとマモルの距離感は大事なポイントですが、そのあたりはどのように?

岸井 成田(凌/マモル役)くんとはあまり話をしないようにしました。テルコとマモちゃんは、会話しているように見えて、実はすれ違っているので、成田くんと仲良くなり過ぎて、楽しい気分が画面に出てしまってはいけないだろうな…と。もちろん、大事な共演者なのでコミュニケーションは取りましたが、深入りしないように気を付けて。おかげで、成田くんの背景を知らない分、マモちゃんのせりふがものすごくダイレクトに降りかかってきました。それこそ「ゴツン!」という感じで(笑)。

-マモルのせりふには、さりげなくテルコにキツいことを言っているものも多いですね。

岸井 かなり堪えました(笑)。「もうやめて!」と思ったのも、一度や二度では…ない(笑)。ただ、そのおかげでできた場面もあって。例えば、マモちゃんが吐き捨てるようなことを言ってタクシーで去った後、街角にぽつんと取り残されたテルコが怒りのラップを歌うシーン。あそこは、あのマモちゃんのせりふがなければ歌えませんでした(笑)。

-撮影を通じて受けたお互いの印象は?

岸井 一つのお芝居の中で必要なカットだけ撮るという形も多いと思うのですが、今泉さんはそういうことをしないんです。時間がたくさんあるわけではないのに、通しでお芝居をして、その流れの中で撮ってくれる。それを徹底してくれたので、とてもありがたかったです。

今泉 その方が感情を作りやすいんじゃないかと思って…。

岸井 その通りですけど、そういうやり方をする現場はなかなかないので…。

今泉 僕は全部を自分で決めるのではなく、役者さんと相談しながら映画を作っていくのですが、そのやり方を受け入れてくれたので、とても助かりました。大事なシーンを撮るときは、岸井さんの方から話をしに来てくれたり…。

-例えばどんな話を?

今泉 いろいろ話しましたが、印象深かったのは、テルコとマモルのキスシーンを撮ったときのこと。僕はOKを出したんですけど、終わった後、岸井さんが近づいてきて「もう1回やらせてほしい」と。

岸井 1回でOKになったので、絶対にそれが使われるじゃないですか。でも、「テルちゃん、これで大丈夫なのかな」と思って(笑)。

今泉 完全にテルコになっていて、岸井さんではなくテルコが言いに来たんですよね(笑)。「別に、愛情もなくて、好きと思われてなくてもいい。寂しさを埋めるためのただの肉でいいんだけど、肉としてすら思われていない感じがして、これほど寂しいのは…」と(笑)。

岸井 あまりに寂しい…と(笑)。

今泉 なので、微調整しながら何回かやりましたね。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【2.5次元】EXILE 橘ケンチ「京極堂を徹底的に解明したい」 舞台「魍魎の匣」インタビュー

舞台・ミュージカル2019年5月20日

 京極夏彦の大人気小説『百鬼夜行』シリーズ。その中でも最高傑作の呼び声が高い『魍魎の匣』が舞台化される。戦後間もない昭和20年代後半を舞台に、シリーズの中心人物で「つきもの落とし」を副業にし、営む古本屋の屋号にちなんで「京極堂」と呼ばれる中 … 続きを読む

「役所広司さんは、中学生の頃から憧れていた俳優。こんなに長い間一緒にいられて幸せです」古舘寛治(可児徳)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

ドラマ2019年5月19日

 今や正月の風物詩となった箱根駅伝が、金栗四三(中村勘九郎)の発案でついに誕生。そんな四三の活動を見守るのが、恩師の一人でもある可児徳だ。嘉納治五郎(役所広司)を支え、日本のオリンピック参加に尽力したほどの人物でありながら、本作ではしばしば … 続きを読む

【映画コラム】ドキュメンタリーと劇映画を融合させた『アメリカン・アニマルズ』

映画2019年5月18日

 米ケンタッキー州で実際に起きた4人の大学生による強盗事件を映画化した『アメリカン・アニマルズ』が公開中だ。  退屈な大学生活を送るウォーレン(エバン・ピーターズ)とスペンサー(バリー・コーガン)は、自分たちが普通の大人になりかけていること … 続きを読む

【インタビュー】「二度目の夏」東出昌大「ついにきたかという思い」太賀「僕の俳優人生にとってすごく大きなことになる」

舞台・ミュージカル2019年5月18日

 舞台「二度目の夏」で、東出昌大と太賀が映画『桐島、部活やめるってよ』以来、7年ぶりの共演を果たす。本作は、演出家・映画監督・そして俳優としても知られる岩松了がM&Oplaysと定期的に行っているプロデュース公演の最新作で、湖畔の別 … 続きを読む

【2.5次元】エイベックス・エンタテインメント 山浦哲也プロデューサーに聞く舞台制作への思い「何にでも挑戦していきたい」

舞台・ミュージカル2019年5月18日

 浜崎あゆみや倖田來未などを生み出し、音楽事業に強いイメージのあるavex groupだが、シアタービジネスも積極的に手掛けていることをご存知だろうか。現在、多数の招聘(しょうへい)作品や日本オリジナル作品をプロデュースするかたわら、2.5 … 続きを読む

page top