【インタビュー】『おじいちゃん、死んじゃったって。』岸井ゆきの「森ガキ組でなければ、こんなに変われなかった」

2017年11月4日 / 13:59

 祖父の葬式のため、久しぶりに集まった家族の本音がぶつかり合う姿をユーモアたっぷりにつづった『おじいちゃん、死んじゃったって。』が、11月4日から全国公開された。岩松了、光石研、水野美紀といった実力派の俳優がそろう中、主人公・春野吉子を演じたのは、大河ドラマ「真田丸」(16)、「99.9-刑事専門弁護士-」(16)などで注目を集めた若手女優・岸井ゆきの。これが映画初主演となる岸井だが、その裏では大きな葛藤と成長を経験していた。

映画初主演の岸井ゆきの

 

-映画初主演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。

 まだまだドラマも映画もそんなに出ているわけでもなくて、経験値が全然足りていないような気がして、「背負えるんだろうか」というのが正直な気持ちでした。台本を読んでも、この作品に私が主人公でいることがなかなか想像できず、不安がとても大きくて。

-どうやって気持ちを切り替えたのですか。

 結局、やるしかないなって。腹をくくったというか。森ガキ組に入る前は、現場でコミュニケーションを取ることも少し苦手で。森ガキ(侑大)監督とも撮影に入る前に何度か役について話をする機会を頂いたのですが、何か質問されても「そうですね…」という感じの素っ気ない態度を取ってしまったり…。本当に申し訳なかったです(笑)。

-いつも明るく演じている岸井さんの姿を見ていると、意外に感じます。

 よく言われます(笑)。その頃は、群れないことがカッコいい、なんて思っていたところもあったんですよね。だけど、せっかく頂いた初めての主演というところでもあるし、自分が変わるいい機会なのかもしれないと思って。それまで閉ざしていた自分の心を、無理やりにでも開いてみようと覚悟を決めて現場に行ったんです。

-その結果は?

 無理やりこじ開けなくても、開けられる空気を森ガキ組の皆さんが作ってくれていました。私が主役であることには変わりないけど、みんなで一つの作品を作るんだという空気があったので、背負うものが軽くなりました。おかげで、自分のできることを一生懸命やるという方向にシフトすることができました。

-考え過ぎだったのでしょうか。

 行ってみたら、心配していたことは全部、自分の独り善がりだったと気付きました。実は、この作品が決まってから撮影に入るまでの間に、初めてのゴールデン(タイム)のドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」や(大河ドラマの)「真田丸」なんかも決まったんです。「きついけど、家賃を上げてみたら給料が上がった」みたいな話がありますけど、そういうふうに先に主演が決まって、少しずつだけど、そこに向けて進んでいっているのかもしれないと考えることができるようにもなりました。

-一歩踏み出したからこそ、得られた成果かも知れませんね。

 (ロケ地の)熊本に行く前、悩みを打ち明けられる友達ができたのも大きかったです。私、役の影響もあるのか、明るい子だと思われがちなんですが、もともとは1人で自問自答するような人間だったんです。でも友人ができて、心を開いたら楽になって…。今でも「主役」と言われると、「私が主役なんだよな…」と、どこか遠慮した気分になるんですけど、完成した映画は胸を張って「好き」と言える作品になりました。だから、私が主役だからというよりも、面白い作品だから見てほしいな、というのが今の素直な気持ちです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田章大「体験したことのない違和感を持ち帰ってくれたら」 アングラ演劇の旗手・唐十郎作品に関西弁で挑む『アリババ』『愛の乞食』【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月18日

 2024年に亡くなったアングラ演劇の旗手・唐十郎の初期作品『アリババ』『愛の乞食』が、全編関西弁で、8月31日から9月21日にかけて世田谷パブリックシアターで二作連続上演される。現実と幻想、現在と過去が溶け合うふたつの物語は、叙情的に紡が … 続きを読む

【映画コラム】7月前半『スーパーマン』『ストレンジ・ダーリン』『「桐島です」』『生きがい IKIGAI』

映画2025年7月18日

『スーパーマン』(7月11日公開)  1938年に発行されたコミックに始まり、何度も映画化されてきたアメコミヒーローの原点をジェームズ・ガン監督が新たに映画化。  いきなり、戦いに敗れ、傷だらけになったスーパーマン(デビッド・コレンスウェッ … 続きを読む

俳優デビュー25周年の上戸彩が15年ぶりの写真集を発売 台湾で幻想的な夜市でのロケから寝起き姿まで多彩な魅力満載

イベント2025年7月14日

 俳優デビュー25周年を迎えた上戸彩の写真集『Midday Reverie(ミッドデイ・リヴァリー)』(宝島社)が、7月10日に発売された。発売記念イベントが、7月12日(土)に大阪で、そして7月13日(日)に東京・紀伊国屋書店 新宿本店で … 続きを読む

JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

映画2025年7月11日

 シリアルキラーの恐怖に包まれた街を舞台に、とある男女の出会いが予測不能な展開へと突き進んでいく様子を、時系列を巧みに交錯させた全6章の構成で描いたスリラー映画『ストレンジ・ダーリン』が7月11日から全国公開される。米映画批評サイトのロッテ … 続きを読む

鹿賀丈史「演じることよりも感じることの方が先だったかなと思います」『生きがい IKIGAI』【インタビュー】

映画2025年7月10日

 2024年の元旦に発生した地震で甚大な被害を受け、さらに8カ月後の豪雨によって2度目の災害に見舞われた能登で、ボランティア活動に参加した宮本亞門監督が、復興支援を目的に製作したショートフィルム北陸能登復興支援映画『生きがい IKIGAI』 … 続きを読む

Willfriends

page top