【インタビュー】『ダンボ』ティム・バートン監督「他者からは欠点に見えることを肯定的に捉えてみれば、それは美しさに変わるのです」

2019年3月20日 / 10:00

 1941年製作のディズニー・アニメ映画『ダンボ』を実写化したファンタジーアドベンチャー『ダンボ』が3月29日から公開される。サーカス団に飼われ、大きな耳を使って空を飛ぶことができる小さなゾウの子どもが、サーカス団の家族の力を借りて引き離された母親を救うために活躍する姿を描く。本作のティム・バートン監督が来日し、映画製作の裏側を語った。

ティム・バートン監督

-もともとオリジナルの『ダンボ』(41)がお好きだったということですが、今回の実写化について、どんな点に魅力を感じたのでしょうか。

 オリジナルは作られた昔の時代を反映しているので、時代が変わった今はさまざまな事情からそのままリメークすることはできません。ただ、自分が好きだったオリジナルの感覚や感情の部分は取り入れたいと思いました。今の世の中はとても混沌としていて、日々いろいろなことが起きています。だからこそ、こうした単純な感情の物語を伝えることができればと思いました。

-監督の映画は、異形の者、アウトサイダー、個性的なキャラクターを描いたものが多いのですね。その意味ではこの映画はぴったりの題材だったと思いますが。

 おっしゃる通りです。だからこの映画を撮りました。私自身、ダンボというキャラクターをとてもよく理解することができました。周りから奇妙に見られたり、他の者とは違う、合わないと思われているという…。ただ、他者からは欠点に見えることを肯定的に捉えることによって、それは美しさに変わるという点で、とても大きなインスピレーションを得ました。

-監督にとって、オリジナルがあるものを自分流に作り直す楽しさや挑戦する気持ちなどは、どういうところにあるのでしょうか。

 もともとあるものを作り直す場合は苦労や難しさがあります。なぜなら、人々にはそれに対するイメージがあり、それぞれの思いや解釈があるからです。『ダンボ』も例外ではありません。ですから今回私が作ったことを残念に思う人もいるでしょう。オリジナルの作品ならば、比べるものがないので人々はそんなふうには思わないのです。ただ、良いところは、自分がインスピレーションを受けたものであるだけに、強いつながりを感じたり、それを通して自分なりの解釈で人々に語り掛けられるものがあるところで、描かれたテーマをさらに発展させられる可能性があると思うのです。

-本作には、ダニー・デビート、マイケル・キートン、エバ・グリーンなど、監督の映画の常連俳優が出ていますが、彼らをキャスティングした理由は?

 今回、彼らが参加してくれたことはとても重要なことでした。この映画は奇妙な家族の姿を描いていますが、それは映画作り自体にも通じるものがありました。もう20年ぐらい会っていなかったマイケル・キートンとまた一緒に仕事ができてとてもうれしかったですし、ダニー・デビートはいつも本当に素晴らしいのですが、彼とはこれが3本目のサーカス映画になったので「これでサーカス3部作は終わりだよ」という話をしました。またエバはもちろん、アラン・アーキンや、初めてのコリン・ファレルまでが、まるで奇妙な家族のように集まってくれて、この映画を素晴らしいものにしてくれました。彼らがいたからこそ、この映画が出来上がったのだと思います。

-今回ダンボをキャラクター化するときに考えたことは? なぜああしたかわいい感じになったのでしょうか。

 ダンボのフォルムは、有機的な理由で出来上がったものです。この映画には、実写でありながらアニメーションの部分もあり、リアルでありながらファンタジー的なところもあります。その組み合わせで作っていくと、奇妙なものになりかねなかったのですが、いろいろと試行錯誤をしながら出来上がったのが、ハートのようなあのフォルムでした。ダンボ自体に、とてもオープンで、単純で純粋な性質があるので、あまり擬人化せず、感情が素直に伝わる感じにしました。ただ、野生動物を扱うのは難しいので、ダンボはアニメーションで処理しました。

-ではダンボと俳優が絡むシーンはどのようにして撮ったのでしょうか。

 今回は素晴らしい俳優が集まり、セットも立派でしたが、肝心な主人公がそこにいないという現場でした(笑)。ただ、そこに相手がいるふりをするのは、映画作りでは珍しいことではありません。今回はダンボの動きを代わりにしてくれた人もいましたし、俳優にはテープや絵やテニスボールをダンボに見立てて演技をしてもらいました。私も俳優も想像力を使ったのですが、それがまた楽しい作業でした。

-ダンボにとっての魔法の翼は、監督ご自身にとってはどんなものになるのでしょうか。

 それは物理的なものではなく、誰もが心に持っているシンボルのようなものです。空を飛ぶゾウというのは、それだけでいろいろなテーマが伝わると思います。私自身も魔法の翼を持つ瞬間を体験したことがあります。私は絵を描くことが好きなのですが、うまく描けずに諦めかけたときに、「とにかく楽しもう」と気持ちを切り替えてみました。すると自信があふれてきました。魔法の翼を持った瞬間です。皆さんにも、飛ぶことができたと思う瞬間がきっとあると思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

Willfriends

page top