【インタビュー】『ソローキンの見た桜』阿部純子「人と人とが別れるときの痛みや感情の流れは、今の私たちにも共通すると思います」

2019年3月20日 / 12:00

 日露戦争下、松山に実在したロシア兵の捕虜収容所を舞台に、日本人看護師の武田ゆいと、ロシアの将校ソローキンの許されない愛の行方を、現代のテレビディレクターの高宮桜子が探る。日露合作の『ソローキンの見た桜』(3月22日公開)で、ゆいと桜子の二役を演じた阿部純子に話を聞いた。

ゆいと桜子の二役を演じた阿部純子

-まず、この映画に出演することになった経緯を教えてください。

 お声掛けをいただいて、それから脚本を読ませていただきました。読めば読むほど脚本にほれ込んでしまって、ぜひこの役をやりたいと思いました。役に決まったときはとてもうれしかったです。

-ゆいは英語が堪能な役でしたが、ご自身もニューヨーク大に留学しているので、言葉の面では苦労はあまりなかったですか。

 英語はまだまだ勉強したいと思っているので、英語のせりふは、脚本を読みながら、声に出してたくさん練習をしました。

-二役の演じ分けは大変でしたか。

 ゆいと桜子という2人は違うタイプの女性なので、演じ分けが難しいところもありました。ただ、現代の桜子の方は、私にも近い感じがしましたし、昔のことは全く知らないという設定だったので、観客にとっても近い存在なのではないかと思いました。

-この映画は、史実とフィクションを融合していますが、史実については、事前に調べたりはしましたか。

 はい。原作はもちろん、ロシア人捕虜の日記を読んだり、いろいろな資料を集めたりしながら、自分にできることをやってみました。それで、当時の人たちが、いかにロシア人の捕虜を大切にしていたのかを知って感銘を受けました。日露戦争中に、当時の人たちがどんなふうに生きていたのかは想像するしかなかったのですが、資料を読んだり、実際に松山にお墓参りに行って、今でもきれいに掃除されているのを見ると、当時の人々の思いがちゃんと現代に伝わっていることを実感しました。

-では、想像するしかなかったという、明治時代の女性を演じた感想は?

 私自身の感覚としては、お見合いの相手がいるから好きな人とは結婚できないとか、戦争で弟を亡くしたのに、その痛みに耐えながら敵国であるロシア兵の世話をすることについての、ゆいの複雑な気持ちを考えると、とても重いな、という印象を受けました。ただ、それは気分が沈み込むような重さではなくて、彼女の強さをしっかりと受け止めなければ、という意味でした。そうした気持ちを大切にしながら演じようと思いました。

-この映画には「日露戦争時代のロミオとジュリエット」というキャッチコピーも付いていますが、ゆいとソローキンの関係をどう思いましたか。

 2人の間に戦争という背景があったので、悲劇のストーリーになってしまいましたが、もし戦争がなかったら、人と人とが出会って恋に落ちるという、とてもシンプルでロマンチックな話だと思いました。その背景の重みを感じるほど、ピュアな関係だと思いました。

-共演したロシア人俳優の印象は?

 ソローキン役のロデオン・ガリュチェンコさんは、もちろん俳優さんとして素晴らしく、共演してとても勉強になることが多かったのですが、普段はとてもチャーミングな面白い方でした。コメディーもされているので、たくさん笑わせてくれました。ロシアの俳優さんは劇団に所属されている方が多いので、演技の基本的なことは舞台で勉強しながら身に付けていくようです。ですから、発声やお芝居に柔軟性があり、演技に説得力があると思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月25日

 WEST.の桐山照史がロミオ、柄本時生がジュリエットを務める、Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」が7月6日から上演される。本作は、映画『愛を乞うひと』の脚本などでも知られる劇作家・演 … 続きを読む

Willfriends

page top