「金栗四三、田畑政治という全く知らなかった人物を中心に描いていく点に魅力を感じました」大根仁(演出)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年3月3日 / 20:50

 ついにオリンピックの開催地ストックホルムにたどり着いた金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)。3月3日放送の第9回は、日本を発った2人のシベリア鉄道での旅を中心に、初めての外国人との交流や、日本を離れた四三の戸惑いなどが描かれ、見どころ満載のエピソードとなった。この回の演出を担当したのは、『モテキ』(11)、『バクマン。』(15)などで映画監督としても活躍する大根仁。NHKの外部から演出家を起用するのは、大河ドラマ初の試みとなる。第9回の舞台裏や、初参加となった大河ドラマの印象を語ってくれた。

大根仁監督

-第9回の演出を依頼されたときの感想は?

 最初に脚本を読んだときは、「シベリア鉄道?」と。スポーツを撮りに来たのに、座りっ放し(笑)。とはいえ、経験のないことに挑戦できるのが楽しみでした。100年前にシベリア鉄道でユーラシア大陸を横断して、ストックホルムまで行く…。そんな話は、普通の仕事では撮れませんから。しかも、45分たっぷり使うことができる。脚本も面白かったので、とてもワクワクしました。

-シベリア鉄道の旅はどのように撮影を。

 オリンピック選手の気持ちは僕には分かりませんが、シベリア鉄道に乗ってストックホルムまで行く追体験ならできる。そう考え、プロデューサーに頼んで、実際にシベリア鉄道で旅をさせてもらいました。それからどう再現するか、勉強しながらいろいろ考えましたが、まさか客車と食堂車をそのまま再現するとは(笑)。しかも、窓の外に配置したLEDのスクリーンに背景の映像を映すという、映画『オリエント急行殺人事件』(17)とほぼ同じシステム。おかげで、スケジュールは厳しかったですが、じゅんたくな環境で撮影させていただくことができました。

-中村勘九郎さん演じる金栗四三の印象は?

 第8回までの金栗さんは、走ることが大好きな分かりやすいキャラクターでしたが、第9回ではこれまで見られなかったブラックな部分が出てきました。僕がシベリア鉄道に乗ったときにも感じたことですが、2週間も狭い部屋に男同士でいると、ものすごくストレスがたまって、ブラックな部分が出てくるんです(笑)。そんな四三を演じる勘九郎さんも、今までにない表情をたくさん見せてくれたので、「こんな顔をするんだ!?」と驚きました。昔から、勘九郎さんにはダークな役が似合うと思っていたので、いつかそういう役で撮ってみたいです。

-三島弥彦役の生田斗真さんとは久しぶりの顔合わせだそうですが。

 斗真と最初に仕事をしたのは1997~98年頃。彼は「天才てれびくん」に出ていて、まだ14歳ぐらいでした。それから何度か深夜ドラマでも仕事をしましたが、その後、彼はどんどんステップアップしていき、僕も違った道を歩んでいたので、一緒に仕事をするのは13年ぶりです。照れくささもありましたが、すぐに関係性を取り戻すことができました。シベリア鉄道の狭いセットでは、深夜ドラマの頃を思い出し、「懐かしいね」などと話しながらやっていました。久々でしたが、楽しかったです。

-ところで第9回では、暗殺される伊藤博文を、昨年の「西郷どん」に引き続き、浜野謙太さんが演じていましたが…。

 ハルピンに立ち寄った際、「伊藤博文が暗殺された場所」と言及する場面が脚本に書かれていたので、説得力を持たせるためには映像があった方がいいだろうと。そこで、誰にやってもらおうかと考えているとき、彼を思い出したんです。「西郷どん」の終盤、歴史上の人物が次々と亡くなって行く中、伊藤博文は生き残ったので、最期を撮ってやろうと(笑)。「西郷どん」から「いだてん」にたすきをつなぐ意味も込めて、出演してもらいました。

 
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