【インタビュー】『響 -HIBIKI-』月川翔監督「平手友梨奈さんと2人で話し合い、響のキャラクターを突き詰めていきました」

2019年3月3日 / 10:00

 マンガ大賞2017で大賞を受賞した柳本光晴の人気コミックを原作に、天才女子高生小説家・鮎喰響の型破りな活躍を描いた映画『響 -HIBIKI-』のBlu-ray&DVDが3月6日にリリースされる。本作で主人公・響を演じた平手友梨奈は、映画初出演ながら圧倒的な存在感を示し、各方面から高い評価を受けた。その平手を間近で見守り、二人三脚で響というキャラクターを作り上げた月川翔監督が、平手=響誕生の舞台裏を明かしてくれた。

演出中の月川翔監督(中央)

-映画初出演とは思えない平手友梨奈さんの存在感が圧巻でした。撮影中の様子はいかがでしたか。

 平手さんは、響そのものでした。現場で演技の話をすることはほとんどなく、僕からは必要なことを伝えて、やってもらうだけ。時々引っ掛かることがあったときに、それを指摘すると「じゃあ、こうしましょう」と応じてくれる。逆に僕が「ここはどうなるか読めない」と思ったときに、「どうなりそう?」と聞くと、「多分こうです」と返ってくる。経験豊富な北川景子さんや小栗旬さんを相手にするのと同じように、平手さんと接することができました。おかげで撮影はとてもスムーズに進みましたが、そこに行くまでは大変でした。

-と言うと?

 僕が最初に映画化のお話を頂いて原作を読んだとき、とても面白かったのですが、響を演じられる女優さんが思いつかなかったんです。そうしたら、「原作者の柳本先生は平手さんをイメージしている」とのこと。「その手があったか」と思いましたが、平手さんには「一筋縄ではいかなそう」という印象を持っていたので、不安がありました。演技ができるのかどうかも分かりませんでしたから…。ただ同時に「彼女の響が見てみたい」という気持ちが湧いてきたのも事実です。

-そこからどのようにして出演が決まったのでしょうか。

 オファーをした結果、僕とプロデューサーが本人と会うことになったのですが、そのときは全くしゃべってくれませんでした。ただ、ひりひりとした空気を漂わせるあたりに響らしさを感じたので、出演する方向でもう一度会いましょうと。そのときもほとんどしゃべらなかったのですが、最後に「何か聞きたいことは?」と尋ねたら、真っすぐに僕を見て「監督は最後まで向き合ってくれますか?」と聞いてきたんです。だから、僕も覚悟を持って「もちろんです」と答えました。

-響の役作りはどのように?

 ぴったりな役とはいえ、演技の練習は必要だと思ったので、こちらで準備を整えて来てもらいました。でも、彼女は演技練習よりも「監督と話がしたい」と。それから、「響はどんな人なのか、どんなときにどんな行動をするのか」ということを、ひたすら2人で話し合って突き詰めていきました。毎回、一対一で3時間ほど話し合うようなことが2カ月ぐらい続いたでしょうか。何度か「果たして撮影に入れるのだろうか?」と思ったほどで、ものすごくエネルギーを使いました。

-平手さんが話し合いを希望した理由は?

 彼女に「演技ってなんですか?」と聞かれたことがあります。難しい質問だったので、「何が心配でその質問を?」と尋ねたところ、「演技って、うそをついているようで嫌なんです」と。「今まで音楽活動では、うそをつかずにやってきたので、それが全部台無しになるのが怖い」ということだったようです。そこで僕は、「鮎喰響という人が生まれてから16歳になるまでを、平手さんが今から同じように生きることはできない。だから、彼女がこれまでどんな人生を歩み、いろいろな局面でどんな行動をする人なのか、想像して表現するのが演技だと思う。できますか?」と聞きました。これに対して彼女は「やってみます」と答えてくれました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top