【インタビュー】『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』井浦新「千葉さんの姿は、沖縄の基地問題を変えていく原動力になるはず」

2018年6月27日 / 12:00

-この作品は、NHKが製作したテレビドラマを再編集した映画版ですが、映画化に至った経緯を教えてください。

 ドラマ版を作っているときから、柳川(強)監督と「これは、1回放送されただけで、多くの人に気付かれないまま終わってしまってはいけないのではないか」と話していたんです。そこから映画化という話が出て、そのためにはどうしたらいいのかと。NHKが作っているので、映画にするための手続きは監督に任せて、僕は宣伝をどこにお願いしたらいいのか、全国のどこの映画館で上映してもらったらいいのか、などのアイデアを出していきました。縁のある映画館には、自分から上映を持ちかけたところもあります。

-映画館で上映されることについてはどんな感想を持ちましたか。

 素直にうれしいです。どんなドラマでも映画化されるわけではない中、成るべき作品が映画という形になった。僕も初めての経験です。映像作品は映画館でしか見ないという方たちにもちゃんと伝わる作品になったし、映画館で上映されることで、より多くの人たちに見てもらう機会が得られます。映画館であの戦闘機の音を聞いたら、皆さん何かを感じずにはいられないはずです。

-井浦さんは、本作の他にも社会問題を扱った作品に数多く出演しています。そこにはどんな思いがありますか。

 僕自身、さまざまな事件や、戦争、社会問題を題材にした作品が好きなので、役者としてもやっていきたいという気持ちを持っています。出演することで、より多くのことを学べますから。そういうものと向き合うのはものすごく大変ですが、挑戦できるのは大きな喜びでもあります。その一方、関わった以上、その問題を知っていただくために、自分に何ができるかという責任感も生まれます。例えば、この作品でも、芝居の現場でたくさんのことを頂いた分、今起きていることに僕自身もしっかりと向き合っていかなければいけない。それが“けじめ”だと思っています。

-この映画は沖縄の基地問題解決に役立つでしょうか。

 一つのきっかけになると思います。「アメリカ出て行け!」とか「基地を今すぐ全部なくそう!」ということを言っているわけではありません。それよりもまず、変えていくためにはどうしたらいいのか。そういう根本的な考えを、一人一人がもっと知って、意識することから始めないといけない。実際に行動している一部の人たちだけでは、なかなか大きな変化は生まれません。だから、変化の第一歩として、勇気が必要だということであれば、この作品の千葉さんの姿は、その勇気を生む原動力になるはずです。また、政府官僚の人たちにも見てもらって、自分たちの先輩にこんなに命懸けで行動した人がいることを知ってもらえたらいいですね。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)NHK

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

-ルンメイさん、夫・賢治役の西島秀俊さんの印象はいかがでしたか。 ルンメイ 今回西島さんと一緒にお仕事ができたことはとても光栄でした。西島さんは経験豊かな方なので、私は現場でとても安心して演技をすることができました。西島さんがいろんなエネル … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

-小学生の頃、絵画教室に通われていたそうですが、演じる上で役立った部分はありますか。  僕は子どもの頃から、絵画教室に通ったり、自宅では粘土で架空のモンスターを作ったりしていました。そういう創作を楽しむ部分は、嵩に通じるものがありました。前 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

-なるほど。そうして前に進んだ先に、どんな未来をイメージしていますか。  先のことはあまり考えていないです。友達たちが家を建てたり、子どもが生まれたりしているのを見ると、そうした未来を自分が持ったらどうなるんだろうなと考えることはありますが … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

-年を取ってからの悦子を見て、いろいろとふに落ちたところがあったと聞きましたが。  そうですね。羊さんの悦子さんを通して見ると、被爆体験にはこういう形もあるのかという痛みを突きつけられるような感じがしました。多分、人それぞれに見え方や感じ方 … 続きを読む

Willfriends

page top