「嫌な親父を楽しく演じさせていただきました」鹿賀丈史(島津斉興)【「西郷どん」インタビュー】

2018年5月28日 / 13:22

 奄美大島へ流された吉之助(鈴木亮平)を呼び戻そうと大久保正助(瑛太)が奔走する中、長期に渡って薩摩藩の実権を握り続けた島津斉興が、ついに大往生を遂げた。老練な斉興を印象的に演じたのは、「翔ぶが如く」(90)以来の大河ドラマ出演となった鹿賀丈史。大久保を演じた「翔ぶが如く」の思い出も含めて、本作を振り返ってくれた。

島津斉興役の鹿賀丈史

 

-「翔ぶが如く」以来の大河ドラマ出演となりましたが、今のお気持ちは?

 最初にオファーを頂いたとき、斉興役と聞いて「僕もずいぶん老けたな…」と(笑)。「翔ぶが如く」も「西郷どん」も、日本が大きく動いた時代で、西郷を中心にした話というのは、やっぱり面白い。その中で、斉彬から西郷という中心ラインの外にいる斉興を、できるだけうまく表現したいと思いながら、嫌な親父を楽しく演じさせていただきました。

-斉興とは、どんな人物だったのでしょうか。

 ドラマでは描かれていませんが、実は藩主として薩摩のためにいろいろなことをした人です。そういう自負もあったので、斉彬を中心とした新しい世代の動きから薩摩を守ろうとした。実質的には薩摩藩の最後の藩主ではないかと。もちろんその後、息子の斉彬が藩主になるのですが、精神的な意味では、最後の藩主だったという気持ちで演じました。

-先進的な斉彬(渡辺謙)、やや頼りないその弟・久光(青木崇高)に対して、老練な父・斉興の対比も魅力的でした。演じる上で、どんなことを心掛けましたか。

 長期にわたって藩主を務めた人間ですから、揺るぎない自信を持っていたに違いありません。しかし、その自信が斉彬の台頭によって揺らいでいく。その変化を大事に演じようと思っていました。

-斉彬の死後、再び藩の実権を握りましたが、感想は?

 第5回で斉彬に藩主の座を譲って隠居するので、そこで出番が終わりだと思っていたんです(笑)。そうしたら、第20回まで出るという話で。斉興もこうして生きていたということが分かると同時に、再び表舞台に立つその生命力やしつこさみたいなものを面白く演じられればと。やりがいがありました。

-この作品では、斉興は悪役でしたが、そのあたりはどう感じていましたか。

 台本を読んでみたら、単なる悪役ではない斉興の人間味みたいなものも感じられました。歴史上の人物でもありますし、そういう部分を少しでも出せたらと。亡くなるときも、天寿を全うしたという最期にしたいと考えました。

-斉彬を演じた渡辺謙さんとのお芝居はいかがでしたか。

 印象的だったのは、やっぱり第4回で斉興と斉彬がロシアンルーレットまがいのことをする場面。あそこは、謙さんが素晴らしい芝居をなさっていたので、僕もそれを受けて断然やる気になりました。あのとき、斉興は自分の頭に当てたピストルの引き金を引けずに投げ捨てるわけですが、実はそのとき、スーッと涙が流れてきたんです。カメラ位置の関係で画面には映っていませんが。そういう緊迫感の中で、俳優同士のぶつかり合いもあって、充実した芝居ができました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことが嬉しい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

栗田貫一「今回はルパンたちが謎の世界に迷い込んで謎の敵と戦って、しかも前に倒した連中もよみがえってくるみたいな感じです」『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 あのルパン三世が、約30年ぶりに2Dの劇場アニメーションとして帰ってくる。舞台は地図に載っていない謎の島。お宝を狙って乗り込んだルパン一行を待ち受けていたのは正体不明の存在だった。前代未聞のスケールで描かれ、全ての「ルパン三世」につながる … 続きを読む

光石研、大倉孝二「ちょっと重いけれどちゃんとエンターテインメントになっていると思います」『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』【インタビュー】

映画2025年6月27日

 日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を題材にした福田ますみのルポルタージュを三池崇史が映画化した『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が6月27日から全国公開された 。本作の主人公・薮下誠一(綾野剛)が勤める小学校の校 … 続きを読む

【週末映画コラム】『トップガン マーヴェリック』と兄弟のような『F1(R)/エフワン』/過酷な救急医療現場にリアルに迫った『アスファルト・シティ』

映画2025年6月27日

『F1(R)/エフワン』(6月27日公開)  かつてF1ドライバーとして活躍したソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、今は身を持ち崩し、フリーのレーサーとしてさまざまなレースに出場していた。だが、最下位に沈むF1チーム「エイペックス」の代表 … 続きを読む

桐山照史「ジュリエットは時生でなければできない」 柄本時生、「見ていいよ」の言葉で「女子になれた」 「泣くロミオと怒るジュリエット2025」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年6月25日

 WEST.の桐山照史がロミオ、柄本時生がジュリエットを務める、Bunkamura Production 2025「泣くロミオと怒るジュリエット2025」が7月6日から上演される。本作は、映画『愛を乞うひと』の脚本などでも知られる劇作家・演 … 続きを読む

Willfriends

page top