【インタビュー】『リメンバー・ミー』リー・アンクリッチ監督「メキシコに対するネガティブな感情へのカウンターになれば」

2018年3月5日 / 12:00

-本作は主題歌がとても耳に残り、それが映画の全てを言い当てているとも思いました。「ココ」というタイトルは、映画を見ると「なるほど」と思いますが、邦題の『リメンバー・ミー』の方が良い気がしたのですが…。

 実はピクサーも、公開前は『リメンバー・ミー』をタイトル案の一つとして考えていました。ただ、アメリカでのタイトルとしては、響きが柔らか過ぎて、センチメンタルな印象を与えてしまうとして、選ばれませんでした。また、僕自身が『ココ』という音感をとても気に入っているのと、映画を見ないと何で『ココ』なのかが分からないという、ちょっとミステリアスな部分も面白いと思ったのでこのタイトルにしました。

-“死者の国”の色使いがとても印象的でした。アニメーションの技術的にはどんなところに重点を置いたのですか。

 今回は、ビジュアル的に、これまでの映画では見たことがないようなユニークなものにしたいと考えました。イメージとしては、サンゴ礁のようにどんどん住人が増えていく“死者の国”が作りたかったのですが、幸い、とても才能のあるスタッフに恵まれたので、あれだけの奥行きがある街を作ることができました。僕が「こういうふうにしたいなあ」と言うと、スタッフが頑張ってやってくれるのです(笑)。
 色使いという点では、『オズの魔法使』(39)を意識しました。あの映画は、モノクロで始まって、オズの世界に行くとカラーに変わります。本作はモノクロではありませんが、主人公のミゲルが“死者の国”に通じる橋を渡るまでの部分は色の数を抑えています。すると、彼が“死者の国”に入ってから目にする色を、観客にもより大きなインパクトを持って見てもらえるのではないかと考えました。

-本作の“死者の国”もそうですが、『アルゴ探検隊の大冒険』(63)やティム・バートンの映画など、アメリカ映画にはよく骸骨(スケルトン)が登場します。何か理由があるのでしょうか。

 どうなんでしょう。人間の中身は誰もが骸骨であるわけですが(笑)。確かに映画史を振り返ってみても、これまでたくさんの骸骨が表現されてきました。今回も、過去のディズニー映画や、レイ・ハリーハウゼンやティム・バートンのものを参考にしましたが、今まで表現されていないユニークなものを作りたいと思いました。これまで映画に登場した骸骨は、ユーモラスな面はあっても、観客を怖がらせるためのものでした。僕はそれは全く望んでいなくて、今回は骸骨ではあるけれど、生者と同じような豊かさを持ったキャラクターにしたかった。彼らも、かつては生者であったわけで、どのキャラクターも骸骨ではあるけれども魂があるというようにしたかったのです。
 なぜ、骸骨なのか、という点では、本作の“死者の日のお祝い”の部分を見ていただくと分かると思いますが、フォークロア(伝承)アートの世界では骸骨がモチーフとして登場することがとても多いというのも理由の一つです。

-では、最後に日本の観客に向けて一言お願いします。

 ピクサーらしさがたくさん詰まった映画になっています。ユーモアがあって、目を見張るようなビジュアルと楽しい冒険、そして、いい音楽にもあふれた作品です。もちろん感動もあるので、ぜひ楽しんでください。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

-堤さんと高橋さんは高橋さんのドラマデビュー作以来のタッグと聞いています。堤さんは高橋さんの吉良上野介にどのような期待を寄せていますか。 堤 ぴったりだと思いますよ。生き馬の目を抜く芸能界で酸いも甘いも知り尽くしていますから。デビューの瞬間 … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

-治済に対する仇討ちのため、対立関係にあった蔦重と松平定信(井上祐貴)がタッグを組む展開にも驚かされると同時に、思わず胸が熱くなりました。 藤並 白河藩に戻った後の定信は、それまでとは打って変わって、大田南畝や山東京伝に本を書かせているんで … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

-戦場で、田丸が絵や漫画を描くことにどのような意味があったと思いますか。  功績係に任命された田丸には、もちろん何かを書き記すという使命感もあったでしょうが、いつ自分や仲間が命を落とすか分からない状況の中で、自分の世界の中で向き合えるものが … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

  -雰囲気のいい現場だったようですね。  中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問が … 続きを読む

Willfriends

page top