「現場では『もす』があいさつになっています」迫田孝也「鹿児島弁の辞書はコテコテ過ぎて使えませんでした(笑)」田上晃吉(薩摩ことば指導)【「西郷どん」インタビュー】

2018年2月11日 / 20:50

 序盤から見逃せない展開が続く大河ドラマ「西郷どん」。毎回、俳優陣の熱気あふれる演技にくぎ付けになっている視聴者も多いことだろう。さらに、このドラマで話題になっているのが、出演者たちが話す鹿児島独特の方言だ。その指導を行っているのは、「薩摩ことば指導」を担当する俳優の迫田孝也と田上晃吉。知られざるその仕事内容や撮影の舞台裏を聞いた。

「薩摩ことば指導」の迫田孝也(左)と田上晃吉

-「薩摩ことば指導」というのは、具体的にどんな仕事をするのでしょうか。

迫田 まず、台本が出来上がると、必要なせりふを薩摩ことばに直します。それに修正を入れて全体のレベルを合わせたものが完本になります。その完本ができた段階で、田上さんと2人で全てのせりふを吹き込んだテープを、早いバージョンと遅いバージョンの2種類作って、演者の皆さんに送って覚えてもらいます。

-撮影現場だけの仕事ではないのですね。

迫田 ここからが現場での作業です。皆さんがせりふを話されるとき、僕たちが台本を読んだときに考えていたものと違う感情になると、イントネーションが変わってくる場合があります。また、現場で言葉を足したり、はしょったりすることで、イントネーションが変わることもあります。そういう細かいところを直したり、監督の要望やアドリブに対応したりです。他にも、エキストラの方の声がもっとほしいという場合には、新しく言葉を作って当てていく作業もあります。現場では即興感が大事です。

田上 シチュエーションや役柄に合わせて、その場で生まれていく言葉が多いです。役者さんによっては、「この場でこう言いたい」という要望が出てきます。それに対して適切な言葉を選ぶのは、なかなか難しい作業です。

-「薩摩ことば指導」と聞くと、現場で言い方だけを指導しているようなイメージですが、もっと幅広いのですね。

迫田 9割ぐらいは、ご本人たちがどう言いたいのかという要望に合わせてイントネーションを付けていく作業になります。

-お二人の役割分担はどのように?

迫田 序盤の作業は僕がリードしながらチームワークでやっています。せりふを吹き込んで音声データを送るあたりからは田上さんにも協力していただいて。キャストの方に関しては、田上さんは人当たりが良くて年配の方にかわいがられるので、大先輩の方々は全てお任せしています(笑)。

田上 大村崑さん、水野久美さん、風間杜夫さんといった先輩方を担当させてもらっていますが、やっていく中で、お一人ずつ接し方を変えないといけないことに気付かされました。皆さん、方言を大事にしてくださっているのは同じですが、その中でもお芝居に重点を置きたい方と、より方言に力を入れたい方がいらっしゃいます。そんなときにアプローチの仕方が同じだと、うまくいきません。言うタイミングも、微妙に計りながらです。

-指導する上で気を付けていることは?

迫田 同じ鹿児島でも、場所によって鹿児島弁が違うので、僕と田上さんの間でそろえることに一番力を入れています。そうしないと、聞いている方はどちらが正しいのか混乱してしまいます。最初の作業としては、そこが一番大切です。

-今回、「薩摩ことば指導」を担当するに当たって、何か準備したことはありますか。

迫田 昔の言葉なので、実は鹿児島でも知っている人があまりいないんです。だから、郷土研究をしている方からお話を聞いたりして、意味と言葉を書いたメモを自分で作りました。辞書みたいなものです。最初のうちはその中から、「この場合はこれを使おう」という感じでやっていました。

-地道な努力の積み重ねですね。

迫田 ただ、やっているうちに「どうやったら生きた言葉になるだろう?」と考えるようになってきました。イントネーションの付け方は、同じ鹿児島の中でも何種類もあるので、あまり厳密にこだわっても仕方ないなと。だから今では「正解か不正解か」で判断するのではなく、「アリかナシか」と考えたときに、芝居に言葉が乗っていて、少しでもアリだと思ったらOKという判断の仕方をしています。

田上 最初は「古き良き言葉を大切に、全国に伝わる方言を」という目標を掲げて鹿児島弁の辞書を買ったのですが、コテコテ過ぎて使えませんでした(笑)。

迫田 僕も2種類買ったけど、新品のまま残ってる(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【2.5次元インタビュー】映画『メサイア』最新作、杉江大志が最先端アクションで見せる「一瞬の緊張感」

映画2018年11月14日

 高殿円の小説『MESSIAH -警備局特別公安五係』を原案とし、テレビドラマや舞台、実写映画などのメディアミックスを展開している「メサイア・プロジェクト」の映画シリーズ4作目となる『メサイア -幻夜乃刻-』が11月17日から公開される。本 … 続きを読む

【インタビュー】『ラプラスの魔女』三池崇史監督 “バイオレンス監督”の称号に疑問…それでもバイオレンスを撮る理由とは?

映画2018年11月13日

 ベストセラー作家・東野圭吾の同名小説を、嵐の櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰ら豪華キャストで実写映画化した映画『ラプラスの魔女』のBlu-ray&DVDが11月14日にリリースされる。本作を手掛けたのは“バイオレンス映画の巨匠”三池崇史監督。劇 … 続きを読む

「若い頃の伊藤博文の写真が僕に似ていたので、自信が付きました」浜野謙太(伊藤博文)【「西郷どん」インタビュー】

ドラマ2018年11月12日

 岩倉使節団の一員として欧米視察に出ていた大久保利通(瑛太)が帰国。朝鮮との外交問題を巡り、西郷隆盛(鈴木亮平)率いる留守政府組との対立が表面化する。そんな状況下、政府内に居場所を失った大久保に接近したのが元長州藩士たち。その中には、後の初 … 続きを読む

「長所も短所も、江藤と僕はものすごく似ています」迫田孝也(江藤新平)【「西郷どん」インタビュー】

ドラマ2018年11月11日

 西郷隆盛(鈴木亮平)、大久保利通(瑛太)らを筆頭に、維新に功績のあった薩長土肥の旧藩士たちが中核を占める明治新政府。その中で、元佐賀藩士として活躍するのが、「維新の十傑」「佐賀の七賢人」にも挙げられた江藤新平だ。西郷と共に、欧米視察に出た … 続きを読む

【映画コラム】本物の4人がそこに映っているかのような錯覚に陥る『ボヘミアン・ラプソディ』

映画2018年11月10日

 1970年のメンバー同士の出会いから85年のライブエイドでのパフォーマンスまで、ロックバンド・クイーンの紆余(うよ)曲折の軌跡を、リードボーカルのフレディ・マーキュリーの屈折と葛藤を中心に描く『ボヘミアン・ラプソディ』が公開された。監督は … 続きを読む

page top