【インタビュー】『マンハント』ジョン・ウー監督「日本で映画を撮るという長年の夢が、ようやくかないました」

2018年2月7日 / 12:00

 『男たちの挽歌』(86)、『M:I-2』(00)などで知られるアクション映画の巨匠ジョン・ウー監督の新作『マンハント』が、2月9日から全国で公開される。無実の罪で逃亡を余儀なくされた弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)と、彼を追う刑事・矢村聡(福山雅治)がたどる運命をつづった第一級のエンターテインメント作品だ。かつて中国で記録的大ヒットを飛ばした高倉健主演で映画化された西村寿行の小説『君よ憤怒の河を渉れ』を再映画化した作品としても注目を集めている。今この作品に挑んだ理由や、日本やアジア各国の豪華キャストが顔をそろえた本作に懸けた思いを聞いた。

ジョン・ウー監督

-本作の基になった日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』は、文化大革命後に初めて中国で公開された外国映画で、大ヒットしたことでも有名です。それを今、再映画化した理由は?

 私は高倉健さんを尊敬し、ずっと憧れていました。一度は映画でご一緒したいと思っていましたが、残念ながらその夢は実現しませんでした。高倉さんの訃報を聞いたとき、悲しむのと同時に、オマージュとして映画をリメーク製作することを思いつきました。ただ、最初は大好きな『駅 STATION』(81)をリメークしたかったのですが、いい脚本が見つかりませんでした。ちょうどその頃、この作品の権利を持つ製作会社のメディアアジアから「撮らないか」という打診があったので、引き受けることにしました。

-再映画化するに当たって、中国で撮影を行ない、中国人俳優だけで撮ることもできたと思いますが、そうしなかった理由は?

 私はもともと、日本映画が大好きで、日本で映画を撮りたいという夢をずっと持っていました。今回、最初は香港や韓国やマレーシアで撮影する構想がありましたが、話が進むうちにそういう案は全て消え、最終的に日本で撮ることになったのです。おかげで、長年の夢がようやくかないました。

-日本、韓国、中国の人気俳優が出演していますが、国際色豊かなキャストをそろえた理由は?

 私は国際色豊かな仕事が好きなのです。それは、複数の国の人間が一緒に仕事をすることで、文化や仕事の仕方などで互いに刺激を与えることができるからです。

-その中には日本の人気俳優、福山雅治さんもいますが、印象はいかがですか。

 福山さんはとても親しみやすい方で、一緒にいると身近な雰囲気を感じさせてくれます。出演オファーをした時も、福山さんは脚本も読まずにOKしてくれたので、とてもうれしかった。彼は歌でも、常に人類や社会、平和や愛に関するメッセージを多く発信していますよね。今回の刑事も、原作の冷たい人物とは異なる、温かみがあって、人間味豊かな上にカッコいい人物として演じてもらいました。

-國村隼さんはいかがでしょうか。

 國村さんとは、もう25年来の友人です。かつて私が香港で撮った『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』(92)という映画に出演してくれました。今回、古い友人として再度出演してくれたことは感無量です。

-スタッフにも多くの日本人が参加しています。

 スタッフには韓国や日本や中国など、いろいろな国の方がいますが、みんなが一つになって仕事をすることができました。中でも感心したのは、何と言っても日本の方のプロ意識の高さです。かつて私はアメリカでアメリカ人と一緒に仕事をしたことがありますが、日本の方も一生懸命に取り組み、同じぐらい高いレベルの仕事をしていることが分かりました。一つのファミリーとして皆さんが協力して、いい仕事をしようとする姿勢には、深く感銘を受けました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(12月5日公開)  太平洋戦争末期の昭和19年。21歳の日本兵・田丸均(声:板垣李光人)は、南国の美しい島・パラオのペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才能を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族 … 続きを読む

氷川きよし、復帰後初の座長公演に挑む「どの世代の方が見ても『そうだよね』と思っていただけるような舞台を作っていきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月29日

 氷川きよしが座長を務める「氷川きよし特別公演」が2026年1月31日に明治座で開幕する。本作は、氷川のヒット曲「白雲の城」をモチーフにした芝居と、劇場ならではの特別構成でお届けするコンサートの豪華2本立てで贈る公演。2022年の座長公演で … 続きを読む

Willfriends

page top