エンターテインメント・ウェブマガジン
それは違います。大河を担当することになったとき、「今、オリジナルで大河を書けるのは森下さんしかいない。だから、森下さんとやりたい」という考えが先にありました。その上で、題材はこれ、という形です。
まず一つは、ストーリーテラーとしてのうまさ。歴史的に分かっている事実の裏に、こういう人と人との関係があったというストーリー運びのアイデアの豊かさと奇想天外な発想。そして、それが最終的に実際の出来事に合流していくあたりの自由自在でドラマチックな構成が実に見事です。もう一つは、せりふの説得力がすごい。例えば、みんなが死んでしまったつらい状況の中から立ち上がっていくとき、「こう言われたら、立ち上がらざるを得ない」という説得力あるせりふを書かれるんですよ。「こんな気持ちだろうな」と、なんとなくモヤッとしているものがバチッと言葉になって出てくる気持ち良さ。そういう言葉そのものの持つ力がすさまじい方です。
そうですね。皆さんも台本を愛して寄り添ってくださって、どうお芝居をするかということを真摯(しんし)に考えてくださったので、非常にありがたい現場でした。
菅野さんは天才です。どんなジャンルの音楽も生み出し得る人で、戦国風のものから若々しい打ち込みの曲、アジアの民族系のものまで、バリエーション豊かにやっていただきました。加えて、脚本の読解力が素晴らしい。一つのせりふや一つのシーンの向こうに連なる世界観とかテーマみたいなものを読み取って、大きな世界を提示してくれるんです。井伊谷という土地の小さな国衆の話ですけど、そこに流れる悲しみや苦しみ、目指す理想みたいなものをとても大きく描いてくれました。私たちは日々収録に追われ、せりふの一言、二言にこだわっていると、どうしても地面の方を見がちですが、菅野さんの音楽を聞くと、うつむいて歩いていたことに気付いてハッとさせられました。
最初に直虎の生涯を知ったとき、この人はきっと自分の人生に満足して、未来に希望を感じながら亡くなったんだろうなという気がしていました。歴史や社会というものは、どこかで終わることはなく、人が変わってもずっと続いていきます。私たちは変化の激しい時代に生きていて、一つとして変わらないものはありません。そんな中で、大事にしていたものがきちんと次の世代につながっていくであろうと希望を抱くことができるのは、とても素晴らしいことではないでしょうか。そういう希望にあふれ、明日に向けて軽やかな気持ちになれる最終回に仕上がっていますので、楽しみにしてください。
直政(=万千代)は“赤鬼”といわれたりして、乱暴者のような伝承も残っていますが、歴史的に彼がしたことを考えると、実は優秀な外交官だったのではないかと思っています。外交や交渉というのはなかなかドラマになりにくいのですが、最終回ではこの物語の集大成として、森下さんがそのあたりを非常に生き生きと書いてくださっています。演者の皆さんもはつらつと演じてくださっているので、ぜひ期待してください。
(取材・文/井上健一)
ドラマ2024年4月20日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月14日に放送された第十五回「おごれる者たち」では、藤原道長(柄本佑)の長兄・道隆(井浦新)を筆頭に、隆盛を誇る藤原一族の姿やその支配下の世で生きる主人公まひろ(吉高由里子)の日常が描かれた。 … 続きを読む
映画2024年4月19日
長野県の自然豊かな高原を舞台に、代々つつましい生活を続けてきた住民の、レジャー施設の開発をめぐる生活の変化を描いた『悪は存在しない』が、4月26日から全国公開される。本作で第80回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で銀獅子賞に輝いた … 続きを読む
映画2024年4月19日
『あまろっく』(4月19日公開) 理不尽なリストラに遭い尼崎の実家に戻ってきた39歳の近松優子(江口のりこ)は、定職に就くことなくニートのような毎日を送っていた。 ある日、「人生に起こることはなんでも楽しまな」が信条の能天気な父・竜太郎 … 続きを読む
舞台・ミュージカル2024年4月19日
上演の度に大きな話題を呼ぶミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の3年ぶり6度目の上演が決定。5月16日に東京・新国立劇場 中劇場で幕を開ける。 本作は、2001年にフランスで生まれ、世界20カ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミ … 続きを読む
映画2024年4月18日
映画監督の小島桐子はロードムービーを撮りたいと思っているが、限られた予算や決まらないキャストなど、数々のトラブルに見舞われる。理想と現実がずれていく中で、彼女はある選択をする。台湾出身で日本に留学し、東京藝術大学大学院映像研究科で学んだ蘇 … 続きを読む