エンターテインメント・ウェブマガジン
出てくるのはゲスばっかり!? “共感度ゼロの最低な女と男たち”が繰り広げる沼田まほかる氏の人気ミステリー小説『彼女がその名を知らない鳥たち』が映画化され、10月28日(土)から公開される。蒼井優演じる十和子は、同居する陣治の稼ぎを当てにして自堕落な生活を送り、不倫に走る嫌な女…。そんな十和子に疎まれ、罵声を浴びせられながらも付きまとう下劣な男・陣治を演じているのが阿部サダヲだ。一見、共感し難いキャラクターを魅力的に演じた阿部に、役づくりの苦労や工夫などを中心に聞いた。
映画『凶悪』(13)や『日本で一番悪い奴ら』(16)を見て、「怖い人」「悪い人」というようなイメージがありましたが(笑)、全然違いました。かわいらしい方で。監督のお芝居の作り方は、僕にはすごく合っていました。監督の頭の中にイメージが全てあり、動き方や演じ方を全部説明してくださる。それに対して蒼井(優)さんも反応がいい方なので、現場が止まるということがありませんでした。
相当苦労しました。方言指導の方にせりふを録音してもらったものを毎日聞いて、そして寝る、という感じでした。それをずっと聞いていないと不安でしょうがなかったんです。ロケもずっと関西だったので、なるべく日常会話も聞こうと思って居酒屋に行ったり、関西弁の友達としゃべったり。そうやっていても、やはり演じていて感情が入ってくると、イントネーションが変わってくるらしいんです。「このイントネーション違う」って感じた時に芝居が止まっちゃったりするのがいやなので、難しかったです。
恥ずかしがらないことですよね、きっと。僕はあんまりそういうのに慣れていないですけど、蒼井さんはすごく堂々としている人だから、やりやすかったですね。1、2回の撮影で終わるような。とにかく時間がかからないんですよ、蒼井さんは。「パパッとやって終わりましょう」というような感じで、さっぱりしたかっこいい人。白石監督も「こうすると、実際は触っていなくても、触っているように見えますよ」なんて指導してくださり、僕と蒼井さんも、「なるほど」「あっ、本当だ」なんていう感じでした(笑)。
陣治の役は、衣装もいくら汚れてもいいので、いろいろな所に寝転がっていました。ロケ現場の昭和っぽい畳敷きの部屋でも、コンクリートの上でも。寝そべってダラダラダラダラ。僕はたばこは吸わないんですけれど、役で使うたばこを吸ってダラダラしていました。お弁当も、落としてしまったものも食べていたもんなあ。陣治の気持ちになっていたんでしょう。
一番最初に監督に話を聞いた時から、「陣治にほれ込んでいるな」って強い思い入れを感じて、ただ汚いだけではなく、愛されるキャラクターを作っていかなきゃいけないと思いました。監督やスタッフさんたちも、陣治というキャラクターを作っていく中で、すごく陣治を愛しているのを感じました。現場では、僕と蒼井さんのシーンをまず撮っていって、後から松坂(桃李)くんや竹野内(豊)さんが来たんです。僕が愛されているところに、明日から悪いやつらが来るよっていう感じで、僕はすごく助かりました(笑)。
えー? この中で? いないですね(笑)。理解できないです。(8年前に別れたのに十和子が忘れられない黒崎俊一を演じる)竹野内豊さんと言いたいところだけど、駄目だもんなあ。一番駄目なのは(自分の性欲のためだけに動き、十和子と肉体関係を結ぶ水島真を演じる)松坂桃李くんでしょうね。どうしようもない、救いようがない男の役です。劇中でけがをするシーンなんかも、「痛い!痛い!」ってうるさかったもんなあ(笑)。けがの跡も自慢して生きていくようなタイプですね。
「えーっ!?」と思いました。どういうことなのって。ここまでの愛というか、うーん。僕自身は子どももいるし、ああいう恋をしたことがない。これから先もしないでしょうし…。共感はしないです。あの場面は長回しで撮るっていうのが決まっていたんです。しかも夕暮れ時で、スケジュール的に2回ぐらいしかチャンスがなかったという背景もあり、すごく気持ちが入っています。十和子の「はっ?」っていうあっけにとられたような表情もまた良かったですし。ラストシーンで鳥が飛んだんですよ。カラスだったんで、“その名を知らない鳥たち”じゃなくて名前を知っているんですけど(笑)。かなり盛り上がりました。
(取材・文・写真/千葉美奈子)
『彼女がその名を知らない鳥たち』
10月28日(土)新宿バルト9他全国ロードショー
配給:クロックワークス
映画2024年7月27日
7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む
ドラマ2024年7月26日
NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む
舞台・ミュージカル2024年7月26日
「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む
映画2024年7月26日
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開) 新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む
映画2024年7月25日
高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む