【インタビュー】『望郷』生い立ちが役柄とリンク…貫地谷しほり「家族に縛られています」 大東駿介「自分をどう生きるか以外は考えていません」

2017年9月6日 / 12:00

 ミステリー作家・湊かなえ氏の連作短編集を基に、ある島に暮らすふたつの親子の悲しい過去と希望の光差す未来をつなぐ感動の物語を描いた映画『望郷』。その中の一編「夢の国」で、家に縛られ、自由を求めるあまり、ある事件を起こしてしまう平川夢都子を演じた貫地谷しほりと、「光の航路」で、確執を抱えたまま死別した父の本当の思いを、その死から17年もたってから知ることになる大崎航を演じた大東駿介。本作に出会えたことを喜ぶ二人がその理由と共に、自身の生い立ちや家族への思いを語った。

貫地谷しほり(左)と大東駿介

-「故郷とは自分そのものであり、望郷とは自身を回顧すること」とも思える作品でしたが、お二人はどのような感想を持たれましたか。

大東 その通りですね。人には、過去や生きてきた環境、故郷が一生つきまとうものだと思ったし、故郷と向き合うと、結果的に自分と向き合うことになると分かりました。

貫地谷 すごく重い作品ですよね…。私は夢都子ほどの閉塞感を持って育ってはいないけど、「親は絶対」という意識がどこかにあって、ちゃんと話せば「いいよ」って言ってくれることでも、「駄目」と言われそうで伝えられないことがたくさんあったので、自分が子どものころにリアルに感じたことをそのまま役に投映していました。キラキラしている世界だと思っていた芸能界という所に入ったものの、現実は泥くさい仕事もあって、思い描いていたものとは全然違うっていう気持ちも、大人になった夢都子とリンクしていて、共感する部分がたくさんありました。

-では、演じやすかったですか。

貫地谷 う~ん、私と夢都子の本質は違うので…。ただ、親が子どもを見るかのように(菊地健雄)監督が丁寧に見て、導いてくださったので、それがすごくうれしくてやる気が出たし、自分をさらけ出すことができました。すごく貴重な経験でした。

-印象に残るシーンはありますか。

大東 「夢の国」で、お母さんはおばあちゃんの生き方をいいものと思っていなかったのに、いつの間にか似てしまい、自分がされたように夢都子を束縛するのですが、それが現実だなと思いました。一人一人が持つ世界(価値観や生き方)のサイズって、いつの間にか頭の中で決まっちゃって、そこからはみ出せないんですよ。だから、自分は外をちゃんと見なきゃいけないなと思いました。

-家族についても考えさせられる作品ですが、お二人にとって家族の存在とは。

貫地谷 一番に考える存在で、ある意味すごく縛られています。以前、占い師に「海外に行って家族と離れ、自分の人生に没頭してください」と言われたこともあります(笑)。でも、できないですね。やっぱり家族が絶対なので。

大東 俺は真逆で、家族に縛られた生き方を全くしていないから、その話は衝撃です。親父は8、9歳の時に会わなくなってそのまま亡くなったし、おかんも中学ぐらいからずっと会っていないから、自分をどう生きるか以外は考えていません。でも、こうやってそれぞれの家族の在り方を『望郷』を通して話せるようになったので、本当にやって良かったです。

-劇中で、見付けたら願いがかなうという十字架が登場しますが、お二人だったら何を願いますか。

大東 1日を30時間ぐらいにしたい。今は足りないです。無駄なことをする時間も含めて、30時間だともっとできることが増えるのになぁと思います。

貫地谷 すごい記憶力がほしい。29から30歳になった時に、すごく若いわけでもないし、すごく味があるわけでもないのに役柄が変わってきて、自分の変化を受け入れることがとても難しくて、「私、大丈夫なのかな」と不安になったんです。でも、流して生きてきた今までと違い、その時初めて受け止めて、新しい自分を知る時期として向き合うことができたので、その思いも全部忘れない自分になりたいです。

-お二人は湊さん原作の映画『白ゆき姫殺人事件』(2014)にも出演されましたが、湊作品の魅力とは?

貫地谷 なんか分かる…そのワナワナ感、みたいな気持ち悪い感じ。でも、それは自分が日常で感じたことがあるものだから共感もするし、心がえぐられる感じもして(作品を)読める日と読めない日があります。

大東 無意識のうちに意識していることや、どこかに縛られている感情にハッと出くわす作品が多くて、人間っぽくて好きです。あと、台本を読んで演じる役者みたいな、1を複数にする人より、小説家のような0を1にする人が偉いと思っているので、湊さんはすごいなぁと尊敬します。あの因島(本作のロケ地で湊氏の故郷)で、よくこれだけ(自分の)世界を広げたと思いますもん。

-過去に何度も共演されていますが、それぞれの印象も教えてください。

貫地谷 大東さんのキャラクターが舎弟みたいで、ずっと年下だと思っていたんですよ(笑)。そうしたら、最近知ったんですけど、同級生だったんです!

大東 それを言うなら、俺も年上やと思って、めっちゃ気ぃ遣って話してたんですよ。

-役者としてはどうでしょうか。

貫地谷 いつ会っても真面目な人という印象で、作品のことをすごく考えていると思います。あと、人の懐に入っていくのがうまい! 大東さんがいると現場が明るくなります。

大東 撮影現場でもこういう取材の時でも、自分のことを客観的に見て、現在や過去の自分とちゃんと向き合いながら、その先を見ている感じがするので、「さすが姉さんっすね!」って思います。

貫地谷 だから、姉さんじゃないから!(笑)

-お二人とも31歳ですが、30代になっての変化を感じますか。

貫地谷 20代はいろんなことに興味があったけど、30代は外に向かう興味よりも自分の中にあるものを考え直す作業がすごく増えました。

大東 30代は世界が広くなりました。政治とか、こんなもんに一生興味持たんやろ…と思っていたことに興味を持って、いろいろ調べるようになりました。最近、興味が爆発しています(笑)

(取材・文・写真/錦怜那)

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映画『望郷』は9月16日(土)から、新宿武蔵野館ほか全国拡大上映。
制作・配給:エイベックス・デジタル


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