「母親の強さを疑似体験して、私自身の幅が広がっていけば」貫地谷しほり(しの)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年3月6日 / 06:02

 井伊家の後継者候補・直親(三浦春馬)が結婚。その妻となった女性が、井伊家の家臣・奥山家の娘しのである。だが、当のしのは、子宝に恵まれないことで思い悩み、次郎法師(後の直虎=柴咲コウ)に嫉妬するなど前途多難な様子。演じる貫地谷しほりが、後に井伊家当主・直政の母となるしの役に込めた思いや共演者とのエピソード、今後への期待などを語った。

 

しの役の貫地谷しほり

しの役の貫地谷しほり

-しのをどんな気持ちで演じていますか。

 次郎法師に嫉妬することについては、そこまで人をいちずに思うことができるしのがかわいいと思って演じています。しのは直親の妻ですが、幼いころからの絆で結ばれた次郎法師と直親の関係はどうしたって切れないし、その一方で自分には子を産まなければならないという重圧がある。そして4年も子に恵まれない状況の中で、誰にも打ち明けることのできない感情を次郎法師にぶつけてしまうことは女性として理解できます。

-しのと次郎法師の関係をどのように考えていますか。

 子どもができないしのが、次郎法師に嫉妬して当てつけを繰り返した挙句、「なぜこんなに私を恨むのか」と聞かれて、「では私は誰を恨めばいいのですか」と答えます。そこに現れた直親に次郎法師が「なぜ、しの殿はかように一人なのじゃ!」と怒ってくれる場面は、聞いていてウルッときてしまいました。「こんなに分かってくれているのに、素直になれなくてごめんなさい」という気持ちで。親や知り合いとけんかした時、自分が悪いと分かっているのに素直に謝れないことってありますよね。しのはそんな複雑な思いを抱えています。

-しのは、夫の直親をどう見ているのでしょうか。

 婚儀の最中、直親の様子をチラチラと見ていたシーンにしのの気持ちが現れています。親が決めた結婚ですけど、しの自身は直親に魅力を感じているのに、肝心の直親は仕事で頭がいっぱいで、全く自分のことを見てくれない。すごく寂しいでしょうね。「そうじゃないんだよ」って直親がちょっとフォローしてくれれば済むんですけど。でも、直親はお家のことに一生懸命ですからね。不器用なのだと思います。

-直親役の三浦春馬さんの印象はいかがですか。

 三浦さんと共演するのは初めてですが、今までドラマなどで拝見していて、すてきなお芝居をされる方だと思っています。普段からすごく気遣ってくださって、本当に王子様みたいです。一緒にリハーサルをしていると、そんな三浦さんの優しさがこぼれ出てしまうみたいで、監督から「もっとぞんざいに」と指示されたりしています。しのの立場としてはだいぶ傷ついていますけど、見つめ合って「すまなかった。話をしようか」と言われる場面があったりして、ツンデレされている気分です(笑)。

-しのの妹・なつは山口紗弥加さんが演じていますね。

 そうなんですよ。年上の山口さんがなぜ妹なのかと思ったのですが(笑)、とてもかわいらしいなつだったので、「まあいいか」という気持ちになりました(笑)。実は以前、山口さんに似ていると言われたことがあるんです。それで今回、やっと姉妹役がきたと思ったら、姉と妹が逆転していました(笑)。でも、台本に書かれていることをきちんと表現していけば、必然的にしのとなつの個性は出てくると思います。

-森下佳子さんの脚本の印象はいかがでしょうか。

 ト書き一行に考えさせられるので、台本を読むのが毎回楽しみです。例えば「(ずっと泣いていたしのが)ピタリと泣くのを止め」というト書きがありました。その一行に、森下さんが考えるしのという女性の姿が込められていると思うので、それは一体どんな姿なんだろうと探っていくことがとても面白いです。ただ、それを演技で表現することはすごく難しいので、森下さんが見てどう思われるのか、ちょっとドキドキしますね。

-貫地谷さんはこれまで何度も大河ドラマに出演されていますが、戦国時代の女性については、どんな印象をお持ちですか。

 「八重の桜」の時、主人公の八重(綾瀬はるか)は鉄砲を持ってどんどん外に出て行くけど、私が演じたのは、後ろで家を守らなければならない女性でした。直虎も、自分がこうだと思ったら動ける人です。でも、しのはそうはいきません。そこにもどかしさも感じています。何かしたいのにできない。家族がどんどん戦(いくさ)で死んでいくのに、「行ってらっしゃい」と送り出し、無事を信じて待ち、家を守っていなければならないのは、すごくつらいですよね。私も普段から、もっと自分らしく生きられる道があるのではないかということを考えています。現代は戦国時代と違い、毎日が死と隣り合わせという感覚はありませんが、女性の生き方という意味では参考になるので、時代劇に出るたびにいろいろなことを学んでいます。

-今までで印象に残った場面は?

 子宝祈願でお経を上げるシーンがありましたが、小林薫さんや市原隼人さんが一斉に大般若経を読み上げているんです。教典の蛇腹を空中で広げたりして。初めて見たので戸惑いましたが、すごい迫力と美しさで心がきれいになった気がしました。撮影前も、普段なら勇ましい人たちがずらっといる所に、お坊さんが並んでいたので、穏やかな気持ちでスタジオに入れました。

-しのを演じる上で、一番見てほしい部分はどんなところでしょう。

 やっぱり母の強さですね。若いころは、涙もろくて他人と争っても負けてしまうような人ですが、母になるとどんどん強くなっていくはずです。今までは私が子どもを演じて、いろいろな先輩女優の方たちに受け止めていただきましたが、今回は自分が息子を見守っていく立場になります。それをどう演じるかが大きな課題です。私はまだ子どもはいませんが、年齢を重ねて母親になった人と会う機会が増えるにつれて、母親のすごさを感じることが増えてきました。そういうものを疑似体験して、少しでも私自身の幅が広がっていけばと期待しています。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】アメリカ映画の底力を感じさせる『バリー・シール アメリカをはめた男』

映画2017年10月21日

 1970年代、大手航空会社のパイロットとして活躍し、その後、CIAから極秘密輸作戦の操縦士にスカウトされ、麻薬の密輸で巨万の富を得た男。その数奇な人生を、実話を基に映画化した『バリー・シール アメリカをはめた男』が公開された。  トム・ク … 続きを読む

【芸能コラム】クランクアップの現場で感じた作品を取り巻く数々の愛 「おんな城主 直虎」

ドラマ2017年10月16日

 「愛を感じながら撮影することができて、とてもうれしく思っています」  これは、主演の柴咲コウが10月11日、静岡県浜松市内でNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」のクランクアップを迎えた際にあいさつで語った言葉だ。季節外れの夏日となったこの … 続きを読む

「正信はものの考え方が柔軟で、半分亡霊みたいな人」六角精児(本多正信)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

ドラマ2017年10月15日

 草履番としての働きを家康(阿部サダヲ)に認められた万千代(菅田将暉)の下に、後釜として“ノブ”と名乗る中年男がやってきた。自分が小姓になるためには、一人前の草履番に育ってもらわなければと、動きの鈍いノブにいら立つ万千代。だがこの男こそ、か … 続きを読む

「万千代が直政になる過程に、直虎がどう関わっていくのかが楽しみ」柴咲コウ(井伊直虎)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

ドラマ2017年10月8日

 井伊谷が徳川領となり、直虎は農民として暮らす一方、“井伊万千代”と名を改めた虎松(菅田将暉)は、徳川家康(阿部サダヲ)に仕えることとなった。ところがそれは、万千代の養家・松下家を裏切る結果となり、直虎は事態収拾に奔走することに。果たして直 … 続きを読む

【映画コラム】果たして前後篇にする必要があったのか…『あゝ、荒野』前篇

映画2017年10月7日

 寺山修司の長編小説の舞台を、1960年代後半の新宿から2021年に移して映画化した『あゝ、荒野』 前篇が公開された。(後篇は21日公開)。  共に孤独な日々を送る新次(菅田将暉)と建二(ヤン・イクチュン)が出会い、プロボクサーの新宿新次と … 続きを読む

page top