「栄輔から現代にはない日本人のパワーを感じています」松下優也(岩佐栄輔)【べっぴんさん インタビュー】

2017年2月27日 / 14:02

 NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に岩佐栄輔役で出演中の松下優也。物語の前半では、出征中の夫・紀夫(永山絢斗)の帰りを待つ、主人公すみれ(芳根京子)を物心両面で支えた栄輔だったが、紀夫の帰還を機にすみれのもとから潔く去る。その後、栄輔は若者ファッションの会社エイスの社長として華麗に再登場。すみれに対する厳しい態度などの“キャラ変”ぶりも話題となったが、彼の心の奥底にある真意とは…? ボーカル&ダンスグループ「X4」のメンバーとしても活躍する松下が、栄輔の思いを代弁した。

 

岩佐栄輔を演じる松下優也(左)

岩佐栄輔を演じる松下優也(左)

-朝ドラ初出演おめでとうございます。視聴者の“栄輔人気”を受け、松下さん自身は環境の変化をどう感じていますか。

 デビューしたのが18歳で、キャリアとしては9年目なんですけど、こういう取材を受けること自体あまりなかったので、そこにまず驚いています(笑)。

-一度栄輔が姿を消した時点では“栄輔ロス”という言葉も生まれました。それについてはどう感じましたか。

 ちょっとだけホッとしました。僕は絶対に“○○ロス”と言われないといけないポジションにいたので、「これで何も言われへんかったらどうしよう」と思っていました(笑)。だから“栄輔ロス”って見た時は「俺も何人かにはロスってもらえたんや、良かった」と思いました。

-物語の中では13年を経ての再登場となりました。アメリカから社長となって帰ってきた栄輔ですが、演じる上で内面の変化を意識しましたか。

 そもそも最初に登場した時の栄輔は、ちょっとやんちゃなんだけど、人間味にあふれていて優しさも兼ね備えている…というキャラクターでした。再登場時は、決して栄輔の芯にあるものは変わらないのですが、これまで全面に出ていた温かさや、優しかった部分が、表面的には見えないようにしようと思いました。

-13年間で栄輔も大分変わった印象を受けましたが、役作りでベースにしたのはどんな思いだったのでしょう。

 あの時代にアメリカに渡り、周りの誰もが自分のことを知らない環境で過ごした人間は、13年間の時の中で、どこまで変わるのかな…ということをすごく考えました。通常“いやいや、こんなことにならないでしょ”というようなことが、13年もあれば、あり得ると思ったんです。でも、決して変わらないものも持ち続けたかった。それは家族への思いや、栄輔が持っている本来の優しさ、情に厚い部分だったりします。

-かつて闇市ですみれの幼なじみである潔(高良健吾)に助けられ、「兄貴」と慕っていた栄輔ですが、今の栄輔にとって潔の存在は仕事上のライバル? それとも今でも兄貴なのでしょうか。

 本心では兄貴です。ただそれは絶対に表面に出さないです。男としてのプライドもあるし、やっぱり潔さんに対して、憧れや尊敬があるからこそ、そういう態度になってしまうのだと思います。

-栄輔を演じていて、自分と重なる部分はありますか。また、栄輔を視聴者にどう捉えてほしいと思いますか。

 栄輔よりは僕の方がもうちょっと愛想がいいかな…と思います(笑)。また、再登場した栄輔を演じる上では、「人間というのは決して表面だけでは判断しちゃいけない」という部分を感じ取ってもらいたいなと思って演じました。ちょっと悪そうなやつに見えてしまうかもしれませんが、栄輔って別に何も悪いことはしていないんです。偽善ではなく、本当の善を行う…。栄輔なりの正義というのがあるので、見る方向によってその印象は変わると思います。

-常に先を見据えて突き進む栄輔ですが、そのエネルギーはどこから来ているのでしょう。

 あまり描かれてはいませんが、栄輔には「この日本を変えたい」というビジョンがあるのだと思います。俺がトップになって、俺が成功して…という考えではなくて、そういうことによって「この日本を変えたい」と願っているのが栄輔。その勢いというのはとてつもないものなんです。

-ものすごいパワーを感じますよね。

 そういう勢いって現代にはないものだと思うんです。逆に今だったらむしろ違和感を感じるだろうし、周りにたたかれちゃうかもしれない。今は出る杭は打たれる時代。あの時代の勢いのある人たちというのは、本当にめちゃめちゃ勢いがあったように感じるし、僕にも憧れがあります。僕は今よりもあの時代に生まれたかったなと思います。現代にはない日本人のパワーを栄輔からすごく感じるのでとてもうらやましいです。

-ポケットに手を突っ込んでいる栄輔の姿が、インターネット上で非常に話題となっています。

 あれは特に、演出として「ポケットに手を突っ込んでいてください」と言われたわけじゃないんです。ただ、あの時代のファッション、アイビールックなどを調べたりすると、結構そういうスタイルが多かったんです。栄輔がアメリカから日本に持ち帰った文化というのは、別に奇抜なものではなく、アメリカのトラディショナルなスタイルだったんですね。なので、もちろん潔さんたちに対して「虚勢を張っている」という意味合いもありますが、栄輔の中では「日本人の当たり前を崩す」「意識改革をしたい」という精神的な表れでもあると思っています。

-ポケットに手を入れて人と話すのは失礼にあたると感じる人もいますが…。

 栄輔からしたら「それを失礼と捉える感覚がそもそも違うんだ」という考えです。ファッションというのは、いい服を着たりすることではなく、その人の生きざま、ライフスタイルそのものという考えです。まあ僕もそこまであの格好が話題になるとは思っていなかったです。SNSの時代やな…と思いました(笑)。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(3)無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力

舞台・ミュージカル2025年9月12日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼無鉄砲小僧、恐れを知らぬ行動力 … 続きを読む

北村匠海 連続テレビ小説「あんぱん」は「とても大きな財産になりました」【インタビュー】

ドラマ2025年9月12日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、ついに『アンパンマン』の誕生にたどり着いた。 … 続きを読む

中山優馬「僕にとっての“希望”」 舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~の再始動で見せるきらめき【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月11日

 中山優馬が主演する舞台「大誘拐」~四人で大スペクタクル~が10月10日に再始動する。本作は、天藤真の小説「大誘拐」を原作とした舞台で、2024年に舞台化。82歳の小柄な老婆が国家権力とマスコミを手玉に取り、百億円を略取した大事件を描く。今 … 続きを読む

広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

映画2025年9月9日

 ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロが自身の出生地・長崎を舞台に執筆した長編小説デビュー作を、石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー『遠い山なみの光』が9月5日から全国公開された。1950年代の長崎に暮らす主人公の悦子をはじめ、悦子 … 続きを読む

Willfriends

page top