【芸能コラム】高橋一生の名演が引き出す小野政次の魅力 「おんな城主 直虎」

2017年2月24日 / 18:39
小野政次を演じる高橋一生

小野政次を演じる高橋一生

 第4回のラストから主人公・次郎法師(後の井伊直虎)に扮(ふん)した柴咲コウが登場し、本格的なうねりを見せ始めた「おんな城主 直虎」。天真らんまんな次郎法師に加えて、すがすがしい魅力を振りまく井伊直親役の三浦春馬、ひょうひょうとした南渓和尚役の小林薫など、役者陣もそれぞれに好演を見せている。中でも、今後の鍵を握りそうな人物として注目したいのが、高橋一生演じる小野政次である。

 井伊家の家臣でありながら、主家・今川家から目付役を任されている小野家は、家中で今川寄りと疎まれる存在。家老を務める政次は、次郎法師、直親と幼なじみとはいえ、井伊家の血筋である2人とは違い、単純に井伊側に立てない難しい立場に置かれている。

 それだけに、役者としては演じがいのある役に違いない。当サイトのインタビューで高橋は、政次を演じる上で外せないこととして「それはやはり、おとわに対する思いですね」との言葉に続けて、次のように語っている。

 「心の流れとして、表向きはこう見えるけど、その実どう思っているのか、という部分は並行して考えなくてはなりません」

 表と裏を意識しているという高橋の緻密な演技が光ったのが、政次の苦悩にスポットを当てた第7回「検地がやってきた」である。

 今川家に直親の帰参を許してもらう代わりに、井伊家は領地の点検となる「検地」を実施することとなる。だが井伊家には、今川に申告していない隠し里があった。この隠し里を隠し通そうとする直親は、政次に協力を依頼。ただし、事が露見すれば今川から責任を問われるのは、目付である政次。その苦しい立場を察した直親は、隠し里の詳細を記した台帳“指出(さしだし)”を渡して、隠すかどうかの判断は任せると告げる…。

 以上がおおまかなストーリーだが、この後の高橋の一連の演技が圧巻だった。

 一見、思いやりがあるように見える直親の行為だが、政次にしてみれば責任を丸投げされたに過ぎない。さらに追い打ちをかけるように、「直親に協力してほしい」と、次郎法師までが政次のもとを訪れる。幼なじみとしての絆は感じながらも、こちらの立場を理解せず、一方的に要求を突き付ける2人に対して沸き上がる怒り。とはいえ、多少の憎まれ口をたたきつつも、やはり裏切ることはできず、万一のことも考えた上で協力する姿勢を見せるが…。

 表面上は冷静に振る舞いつつも、端々から複雑な心情をにじみ出させる高橋の演技は、最終的な事のいきさつまで含めて説得力十分。思わず画面にくぎ付けになった。井伊と今川の間に立つ政次は、今後も苦しい板挟みの状況が続くに違いない。果たして高橋は、そんな政次をどのように演じていくのか。第7回の熱演には、今後を期待させるのに十分な力があった。

 昨年の「真田丸」では、草刈正雄が豪快に演じた真田昌幸に人気が集まった。それとは色合いが大きく異なるものの、陰のある政次も魅力的な人物。高橋の熱演を見ていると、昌幸のように政次も人気を集めるのではないか…。そんな予感すら漂ってくる。今後も高橋=政次の動向に注目して、物語の行方を見守っていきたい。(井上健一)


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