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次郎法師(柴咲コウ)、井伊直親(三浦春馬)と幼いころから固い絆で結ばれた鶴丸こと小野政次が、第5回から成長した姿で登場した。演じているのは、これまで「軍師官兵衛」(14)などの大河ドラマに出演してきた高橋一生。家老として井伊家を支える一方、幼なじみの2人との関係にも苦悩する政次役に込めた思いを語った。
おとわ、亀之丞、鶴丸の3人は、第4回まで子ども時代が続きましたが、見てくださった方はきっと、「これは絶対必要だった」と分かってくださるはずです。あの幼少期でしか出せない説得力があり、それは僕たちが登場した後の展開にとても響いてくるはずなので。そう考えると必要なルート取りなのですが、それでも最低限になっていたのが残念なくらいです。10回ぐらいやればいいのにと思うほど、大事なパートでした。
子役の方たちの演技を参考に、子どものころだったらどんな感じだろうと考えながら演じています。例えば子どものころ、鶴丸がおとわに向かって「ばか」と言って怒る場面がありました。そういうことがあると、鶴丸は意外と怒りっぽいんだな、ということが分かります。すると、大人になった政次も表面上は穏やかでも、内心ではあの時のように怒っているんだろうな、と想像できる場面が出てきます。そういう時は子どものころとのつながりを意識して演じています。その辺りを、見ている皆さんにも感じ取ってもらえるといいですね。
最初に12冊ぐらいまとめて台本を頂きました。小説を読むのとは違い、台本を読む時は自分の役を「どんなふうに演じようか」と考えながら読むので、1冊読むとくたびれてしまって、普通は時間を空けないと続きが読めないんです。でも今回は12冊一気に読んでしまいました。それぐらい台本が面白かったです。
それはやはり、おとわに対する思いですね。心の流れとして、表向きはこう見えるけど、その実どう思っているのか、という部分は並行して考えなくてはなりません。場面によっては、視聴者をミスリードする必要もあるので、表面と裏面は常に意識しています。表と裏が逆転して、裏が一瞬表に出てしまい、表が裏に引っ込むような瞬間もありますから。その辺りは意識してハンドルを握っているつもりです。
子どものころのおとわは、自分が女の子であることをほぼ意識していない幼少期特有の状態だと思います。時には男の子のように見えたり、またある時には女の子っぽく見えたりするけど、政次からは女の子にしか見えない。本人だけがそれに気づいていないという構図ですね。政次は、そのころのイメージをずっと引きずっていて、“直虎”を名乗るあたりから、みんなのために生きる“竜宮小僧”と思う時もあれば、女性として見てしまう時もあるのではないでしょうか。
子どものころの直親は、井伊家の当主にならなければいけないと気構えつつ、その一方で体が弱いことも自覚していました。健康的でさわやかな青年に成長して井伊谷に戻ってきた時、その姿を見た政次の弟の玄蕃(井上芳雄)が、「いろいろ苦労されたけど、真っすぐ育たれて」と語る場面があります。でも政次は、政治を行う上では時に非情な判断も求められるので、腹黒いところも持ち合わせようとして強くなっているのだろう、というところまで見抜いていると思います。
成長するに従って、父親の気持ちが分かるようになってくるのではないでしょうか。子どものころは単純に悪いことを考えている父親だと思っていましたが、自分が後を継いだことによって、父が自ら悪役を引き受けていたという現実に直面することになります。父親からは「おまえは必ず自分と同じようになる」とも言われます。それに腹を立てつつも、井伊家の家臣である以上はそうならざるを得ないというメッセージだと受け止めていたりもするのかな、と思っています。
そうですね。でも血がそうさせるのか、運命がそうさせるのか分からないけど、そうなっていく。それが自覚できていることは悲しいでしょうね。
龍潭寺に井伊家とその家臣たちのお墓があるのですが、その中でも小野家代々の墓はメーンストリートに存在するんです。小野政次という人物は、井伊家にとって裏切り者だったと言われているにもかかわらず、お墓はメーンストリートにある。しかも、案内してくれた方の説明によると、小野家はかなりきちんと政治をやっていたそうです。「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、そういった事情を知ると、裏切り者と呼ばれる小野家も、実は井伊家を守った一つの要素だったことが実感できました。だから、絶対に小野家を勘違いさせるようなことにはしませんと祈りながら、その場で手を合わせました。
大河ドラマには、史実を踏まえるという前提がありますが、井伊家の資料は非常に少なく、僕が演じる小野家に関してもあまり残っていないそうです。それでも、なるべく史実を反映させていく形にはなりますが、あまりこだわり過ぎると窮屈になってしまいます。テレビドラマも映画も、物語というものは基本的には全部作られたものです。脚本家や俳優や監督が作り上げる世界観によって、説得力が生まれると思うんです。その点に関しては、スタッフの皆さんが「本当は違う」と思われないように、ものすごく尽力してくれています。だから全部委ねて、僕は台本に集中して、見てくださる方の心を動かせるように、伸び伸びやらせていただくつもりです。
(取材・文/井上健一)
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