【週末映画コラム】カメラを回すという行為をひたすら見せる『愛にイナズマ』/どんでん返しが連続する多重構造のストーリー『ドミノ』

2023年10月27日 / 07:00

『ドミノ』(10月27日公開)

 

(C) 2023 Hypnotic Film Holdings LLC LG

 ダニー・ローク刑事(ベン・アフレック)の最愛の娘が行方不明に。ロークは心身のバランスを崩したが、正気を保つために仕事に復帰する。そんな中、銀行強盗を予告する密告があり、現場に向かったロークは、そこに現れた謎の男(ウィリアム・フィクトナー)が娘の行方を知っていると確信する。だが、男は周囲の人々を意のままに操って逃亡する。

 打つ手がないロークは、占いや催眠術を熟知するダイアナ(アリシー・ブラガ)に協力を求める。彼女によれば、ロークが追う男は相手の脳をハッキングしているという。彼女の話す“絶対に捕まらない男”の秘密に、ロークは混乱するが…。

 原題は「催眠術(=Hypnotic)」。ロバート・ロドリゲス監督が「観客には何が現実なのか分からないところが面白いと思う」と胸を張るように、事象が目まぐるしく変化し、どんでん返しが連続する多重構造のストーリーや、それに伴う仕掛けも秀逸。しかも、映画の特性である、同じ場面を違った角度(視点)から何度も見せることができるという利点も生かしている。

 ところで、ロドリゲス監督は「謎が謎を呼ぶドミノのような展開は、アルフレッド・ヒッチコックの諸作からインスパイアされた」と語っているが、こちらは、クリストファー・ノーラン監督が時間の逆行を描いた『メメント』(00)や『TENET テネット』(20)、相手の潜在意識に入り込み思考を植えつける『インセプション』(10)、あるいは運命調整局の存在を描いたジョージ・ノルフィ監督の『アジャストメント』(11)といった、類似性のある作品のイメージが頭に浮かんだ。

 ただ、それらに比べると、複雑な話を94分にまとめた手際の良さが光るこの映画には、よくできたB級のSFやサスペンス映画が持つ味わいがあると感じた。

(田中雄二)

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