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NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。7月3日に放送された第26回「悲しむ前に」では、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)の死と、それによって揺れ動く幕府内の騒動が描かれた。これから物語はどうなっていくのか。今後の展望も交えつつ、脚本の三谷幸喜が作品への思いを語ってくれた。
意識を失ってそのまま死んでいくのではなく、一度よみがえらせたいと思っていました。でも、目が覚めたとき、政子に何と言えばいいんだろうかと考え抜いた末、思い出したのが、第1回で政子が持ってきた料理を見て、頼朝が「これは何ですか?」と尋ねるシーンだったんです。そこで、「これは何ですか?」ともう一度、言わせてみようと。
できれば、あのときと同じものを政子が持ってきて思い出す形にしたかったので、台本にそう書いたんですが、考証の先生から「季節が違うので、同じものは出せない」と指摘されて(笑)。でも、物語としての面白さを優先することにしました。結果的には、政子(を演じる小池栄子)さんが素晴らしかったと聞き、よかったと思っています。
ずっと不思議だったのが、北条政子の名が“悪女”として広まっていることなんです。例えば、織田信長だったら分かるんですが、政子は”悪女“と言われるほどのことはしていないんじゃないかと思うんですね。物語の中で描いていくと、やはり彼女はその局面に応じて、妻として、母として、やるべきことをやっているだけなのに、事態がどんどん悪化していく。だから、むしろ悲劇の主人公のような気がしています。そういう意味では、決して悪女ではなく、真摯(しんし)に生きた1人の女性であり、そういう政子の生涯を描けることをうれしく思っています。
今回が僕にとって3作目の大河ドラマになりますが、(源)義経のように登場が限定的な人物は別として、主人公や1年を通して登場する人物、今回なら義時や政子に関しては、実は長期展望みたいなものは作っていないんです。先読みはせず、何か事件が起きる都度、彼らが何を考え、どう対応していくのかを考えながら書く。そうでないと、彼らの人生を最後から逆算して描く形になるのが嫌なんですよね。
だから、義時に関しても決してブラックにしよう、ダークサイドに落とそうと思って書いてるわけではないんです。歴史上の義時と、僕の書いている義時が同じ人生をたどっていくと、どうしてもそっちに行ってしまうというか。不思議ですが、そんなイメージです。だから、中盤を迎えた今も、義時がホワイトとブラックの間のどの辺にいるのか、僕にも分からないし、この後どうなっていくのか分かりません。それはこれから、僕が書いている義時と、僕自身と、演じる小栗さんで見つけていくという、そんな感じです。
僕が監督した映画に出ていただいたとき、短い撮影期間でしたが、やってほしいことを的確に演じてくださいました。小栗旬という俳優の持っている力は以前から実感していました。相性というのかな、小栗さんは、僕と共通言語を持っている方だなと、そのときに感じました。今回、僕は演出には関わっていませんが、小栗さんは、同じように僕の思いをきちんと受け取って演じてくださっているのが分かり、とても満足しています。前半も素晴らしいのですが、年齢を重ねてからの義時も、前半にも増して素晴らしい。まだ映像は見られていないんですが。僕の勝手な思いですが、これが小栗さんの新しい代表作になるのではないでしょうか。
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