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NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。6月19日に放送された第24回「変わらぬ人」では、源頼朝(大泉洋)の弟・範頼(迫田孝也)と娘の大姫(南沙良)の死という一見、無関係な二つの悲劇が、三谷幸喜の巧みな脚本で一つのドラマにまとめ上げられた。
無関係とは言ったものの、二つの悲劇はいずれも頼朝が原因で身内に起こった出来事という点は共通している。それは結局、いつまでたっても、他人どころか、身内すらも信用できず、娘でさえも駒としか考えない頼朝の孤独さを際立たせることとなった。
その点では、「変わらぬ人」というサブタイトルは、頼朝のことを指しているといえる。だが、この回に登場した“変わらぬ人”は、頼朝だけではない。
自らの身に危険が及びながらも、「風邪でふせっている」と居留守を使って面会を拒絶した事の元凶・比企能員(佐藤二朗)に怒りをぶつけることなく、一人で全てを背負い込んだ範頼の変わらぬ実直さ。
そして、亡きいいなずけ・源義高(市川染五郎)への思いを捨て切れず、自らを死に追い込んだ大姫。頼朝の野望の犠牲となった2人も、やはり“変わらぬ人”だった。
仮に、範頼が強引に能員を頼朝の前に引きずり出していれば…。仮に、大姫が義高への思いをどこかで断ち切れていれば…。いずれも“変わらぬ人”でなければ、今回のような悲劇は避けられたのではないか…。そんな思いが湧いてくる。
その一方で、自分自身の身に置き換えてみると、「人はそう簡単に変われるものだろうか?」という疑問も浮かんでくる。もちろん、状況に合わせて変われる柔軟な人間もいるだろう。
劇中でも、思いを寄せていた木曽義仲(青木崇高)を失った後、和田義盛(横田栄司)の下で生き延びた巴(秋元才加)が、大姫に「人は変わるのです。生きている限り、前へ進まなければならないのです」と語っている。
だが、範頼や大姫のように、自らの信念や長年貫いてきた思いを簡単には変えられない人がいるのも、また事実ではないだろうか。