【映画コラム】5月の公開映画から

2026年6月5日 / 12:19

「サンキュー、チャック」
(5月1日公開)★★★
チャックとは一体何者なのか
 大規模な自然災害と人災が次々と地球を襲い、世界は終わりを迎えつつあった。すると、街頭やテレビ、ラジオに突如として、「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という謎の広告が大量に現れる。人々が終末の到来を感じる中、場面は一転して広告の主であるチャックの視点に切り替わり、彼の人生をたどる物語が描かれる。
 「スタンド・バイ・ミー」「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」など、ホラーではないスティーブン・キング原作映画の1編。監督はマイク・フラナガン。3部構成で、世界の終末から時間をさかのぼっていく手法だ。その中で、チャックの生涯、数字とダンス、家(部屋)などを糸口にして、人生、時間、終末論といった哲学的なテーマが語られる。ただ、チャックとは一体何者なのかという謎解きの面白さはあるが、全てにつじつまが合うわけではないし、変化球勝負なので、割り切れない思いが残る。

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「幕末ヒポクラテスたち」
(8日公開)★★★
〝医療時代劇〟もなかなか面白い
 幕末、京都の郊外の村に住む大倉太吉(佐々木蔵之介)は、貧富や身分を問わず市井の人々を救う、寛容で好奇心旺盛な蘭方医。ある日、気性の激しい大店の道楽息子・新左(藤原季節)を手術で救ったことを契機に、2人の人生が大きく変化していく。
 現代の京都の医大生たちを描いた「ヒポクラテスたち」で知られる大森一樹監督が企画したが、撮影準備中に大森監督が逝去したことで、遺志を継いだ緒方明監督が完成させた。大森監督ゆかりのキャスト、スタッフ陣が多数参加している。「雪の花ーともに在りて」の主人公で天然痘と闘った笠原良策と同時代の蘭方医の話。どちらも漢方医と蘭方医の対立や立場の違いを描いているが、こちらは時折笑いも交えたライトな仕上がりになっている。こうした“医療時代劇”もなかなか面白い。大森監督とは和歌山県の田辺映画祭に審査員として参加した際に、何度か親しく話をしたので、本作の完成には感慨深いものがあった。

©︎2026「幕末ヒポクラテスたち」製作委員会

「君のクイズ」(15日公開)★★★★
クイズという世界の奥深さ
 賞金1千万円を懸けたクイズ番組「Qー1グランプリ」の決勝戦。「クイズ界の絶対王者」三島玲央(中村倫也)と「世界を頭の中に保存した男」本庄絆(神木隆之介)が優勝を争う中、最終問題の早押しクイズで本庄はまだ問題が1文字も読まれていないにもかかわらず正解し、優勝を果たす。本庄はなぜ不可能とも思える「ゼロ文字正答」を成し得たのか。三島はその謎を解明すべく、検証番組に出演するが…。
 小川哲の同名ミステリー小説を吉野耕平監督が映画化。謎解きミステリーやエンターテインメントとして、見る者に推理する楽しさやだまされる快感を与えると同時に、クイズという世界の奥深さも感じさせる。さらに“人生における正解”とは何かを問いかけるところもある。先日、思いがけず有名クイズ番組に出場した。独特の緊張感を味わい、ボタンの押し方や解答の選択の難しさを体験し、クイズ番組制作の裏側も垣間見ただけに、この映画をとても生々しく感じた。

©︎2026映画『君のクイズ』製作委員会

「ミステリー・アリーナ」
(22日公開)★★★
唐沢寿明の怪演が見もの
 司会者の樺山桃太郎(唐沢寿明)がハイテンションで盛り上げる生放送の人気推理クイズ番組「ミステリー・アリーナ」。ある難問に正解者が連続して現れず、賞金は100億円までアップされていた。今回出題される問題は「嵐の中、孤立した洋館で起きた殺人事件」。この問題に、激戦の予選会を勝ち上がった6人の解答者が挑むことになる。だが、推理を外した出場者には恐ろしい結末と陰謀が待ち受けていた。
 深水黎一郎の同名小説を、堤幸彦監督が映画化。まずはアフロヘアにド派手な衣装、そしてハイテンションで毒舌を吐く樺山を演じ切った唐沢の怪演が見もの。そして、解答者の推理を再現ドラマとして見せ、それを樺山が論破していくやりとりを見ていると、多くの人々が映画やテレビについての考察をする今の時代に、出るべくして出た映画(原作)だと思った。番組の裏側やクイズの真相に隠された秘密を明かすという意味では、「君のクイズ」と対で見ると面白さが増す。

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「スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー」
(22日公開)★★★
西部劇や時代劇の要素を盛り込む
 銀河帝国崩壊後も新共和国の統治は行き届かず、無法者や帝国軍残党がはびこる混沌とした時代が続いていた。そんな中、強大なフォースを秘めた孤児グローグーを守ることを決意した賞金稼ぎのマンダロリアン(ペドロ・パスカル)は、危険に満ちた銀河を旅しながら、次第にグローグーと親子のような絆を育んでいく。
 SFサーガ「スター・ウォーズ」シリーズの約7年ぶりとなる劇場長編映画。ドラマシリーズ「マンダロリアン」で描かれてきた物語を、ジョン・ファブロー監督が壮大なスケールで描く。「スター・ウォーズ」の世界に西部劇や日本の時代劇(特に「子連れ狼」)の要素を盛り込んだ新機軸。ただ、ドラマシリーズを見ていないと、マンダロリアンとグローグーの関係性の変化や物語のディテールがよく分からないので、いきなり本作を見ると唐突な感じがするのは否めない。従って、あくまでも「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフという印象にとどまる。

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(映画ライター 田中雄二)

★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価。


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