「妻として、光秀の隣で同じものを見られる人に」木村文乃(熙子)【「麒麟がくる」インタビュー】

2020年4月10日 / 05:00

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。これまで独り身だった主人公・明智光秀(長谷川博己)が、ついに妻を迎えた。その相手とは、美濃の土豪・妻木氏の娘・熙子。光秀の正室となった熙子は、以後、戦乱に明け暮れる夫を支え、明智家を守っていくことになる。熙子を演じるのは、「精霊の守り人」(16)や「サギデカ」(19)など、数々の作品で活躍する木村文乃。撮影の舞台裏や、2度目の夫婦役となる長谷川の印象などを語ってくれた。

熙子役の木村文乃

-第12回、光秀が熙子にプロポーズするシーンが、木村さんの初めての撮影だったそうですが、振り返ってみていかがですか。

 初めての撮影で、光秀の隣に立つ女性として、他の人とは違う「だからこの人が選ばれたんだな」というものを出さなければいけなかったので、それをどう表現するか、長谷川さんや監督と話し合いました。その結果、お芝居を台本から少し変更して演じることになりました。ただ、当日はものすごく寒かったです(笑)。朝早いロケだったので、霜が引くのを待ってからの撮影で…。でもその分、日が差してきたら、ものすごくきれいだったことを覚えています。

-長谷川さんとは以前、民放のドラマでも夫婦役を演じていましたが、改めて夫婦役で共演される感想は?

 幸せなことだな…と。とにかく穏やかな方なので、隣にいて、何となく話したりするような時間が、とても穏やかに感じられます。撮影に来ているのに、家にいるような安心感もあって。それは、前回から変わりません。現場をよく見ていらっしゃるので、ふとした瞬間に投げかけてくれる言葉に、温かい気持ちにさせられます。先日も撮影のとき、長谷川さんが映っていない私単独のカットまで、きちんとモニターで確認して、ぽろっと「熙子っぽいね」と言ってくださったんです。その一言で「ちゃんと(光秀の)妻としていられているな」と安心することができました。

-長谷川さんの座長ぶりはいかがでしょうか。

 長谷川さんはあまり控室に戻らず、スタジオの脇にある前室にいらっしゃることが多いです。そこで皆さんと、お話をされているんです。それもあいさつ程度ではなく、一人一人、しっかり話し込む感じで。そうやって考えを共有して、座長として立っていらっしゃるんだろうな…と。

-そのほか、長谷川さんとのエピソードで印象に残ったことは?

 とにかく紳士です。撮影では、セットの隙間を縫ってカメラ前に立つことが多く、その隙間に笹や枝や、いろいろな機材がたくさんあるのですが、歩いていくとき、それを全て長谷川さんがよけてくれるんです。マイクも毎回、ボタンで自分の分を電源オン、オフするのですが、私が長谷川さんの後ろで順番待ちをしていると、自分より先に私のマイクをオフにしてくださったり…。そんなふうにジェントルな方です(笑)。

-第九回で光秀と会った初登場シーンの感想は?

 ドキドキしながら演じていました。自分が一番キラキラしていた時代を思い出しながら、頑張ってやりましたが、ちょっと照れくさかったです(笑)。ただ、熙子を演じる上で「胆力があるということを大事にしてほしい」と言われていたので、ふわっとした出方の中にも、後に武将の隣に立つ女性として、恥ずかしくないような人間にしなければ…ということは意識しました。

-熙子を演じる上で心掛けていることは?

 時代劇の女性というと、「三歩下がって」というイメージがありますが、最初に演出の大原(拓)さんから「(光秀の)横を歩いてください」と言われたんです。だから、帰蝶(川口春奈)や駒(門脇麦)がいる中で、熙子が選ばれた理由を考えたとき、ちゃんと隣で同じものを見られる人でいなければ…と。また、熙子は目先のことに左右されず、何が大切かということをしっかり持っている人です。そういうところは私も好きなので、これからも大事にしていきたいと思っています。

-役作りのためにリサーチなどはしましたか。

 熙子に関しては、あらかじめ「伝えられているさまざまな逸話とは関係なく描いていきたい」と伺っていたので、史実を調べて深く人物像を掘り下げることはしませんでした。それよりも、台本から受け取る印象と、監督たちがどう描こうとしているかを大事にしています。

-熙子を演じる中で、どんな手応えを感じていますか。

 長谷川さんとの共演は2度目ですし、あまり人を緊張させる方でもないので、その柔らかい雰囲気に乗って、明智家として本当の家族のように撮影できている感覚があります。母上様の(石川)さゆりさんも、とても気さくにお話ししてくださるので、人生の先輩のお話をいろいろと伺って、撮影していないときも、楽しく過ごさせていただいています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

原田琥之佑「この映画は、何でもあるけど、何にもないみたいなところが一番の魅力だと思います」『海辺へ行く道』【インタビュー】

映画2025年8月26日

 海辺の街に暮らす14歳の美術部員と仲間たちに起きたちょっと不思議なひと夏の出来事を小豆島でのロケで描く、横浜聡子監督の『海辺へ行く道』が8月29日から全国公開される。本作で主人公の高校生・奏介を演じた原田琥之佑に話を聞いた。 -最初に脚本 … 続きを読む

上田竜也&橋本良亮、舞台初共演を通して「絆はより強固になる」 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月26日

 シリーズ累計500万部を突破する、東川篤哉による大ヒット小説「謎解きはディナーのあとで」が、舞台オリジナルストーリーで音楽劇として上演される。原作は、毒舌執事とお嬢様刑事が繰り広げる軽快なやりとりと本格的な謎解きが話題となり、2011年に … 続きを読む

青山貴洋監督「問診シーンが最大の課題に」日曜劇場『19番目のカルテ』【インタビュー】

ドラマ2025年8月25日

 体の不調を感じていても、何科を受診すべきか分からない…。そんな悩みを抱える人は少なくない。そうした現代の医療課題に向き合う存在が「総合診療医」だ。日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS系)は、まさにその最前線で患者と向き合う医師たちの姿を描 … 続きを読む

中園ミホ 連続テレビ小説「あんぱん」は「やなせたかしさんが書かせてくださった」執筆を終えた脚本家が物語を振り返る【インタビュー】

ドラマ2025年8月22日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、いよいよクライマックスが近づいてきた。このタ … 続きを読む

森田剛「戦争と背中合わせの世界であるということは今も変わらない」 19世紀を代表する未完の戯曲に挑む パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月22日

 森田剛が主演する舞台、パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」が9月23日に開幕する。本作は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーが遺した未完の戯曲を、2017年にジャック・ソーンが翻案した作品を日本で初めて上演。冷戦下の1981 … 続きを読む

Willfriends

page top