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2021年6月に東京・国立劇場小劇場で第4回日本舞踊未来座 祭(SAI)「夢追う子」が上演される。本公演は、20年6月に同所で上演される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を予防する観点から公演が延期となったもの。「日本の祭」を日本舞踊で表現し、祭る、祝う、競うを踊る作品となる。具体的にはどのような内容となるのか、出演予定だった松本幸四郎と尾上紫(ゆかり)に話を聞いた。(※このインタビューは3月に行われた)
幸四郎 新作舞踊を発表する場として、毎年6月に「未来座 SAI」という公演をしているのですが、この「SAI」という言葉に意味を持たせようと考え、1回目は「賽」、2回目は「裁」、3回目は「彩」という文字を当てました。さて4回目はどうしようかと思ったとき、恐らく一番最初に思い浮かぶであろう「祭」で行こうと思いました。折しも東京オリンピックがありますが、スポーツというものは競い、まつるものであり、「踊り」にも、競う踊りや物を投げる踊り、泳いだり飛んだりする踊りもあります。最終的には天(神)に向かって舞う、という点でスポーツと踊りは共通するのではないかと考え、思いっきり体を動かす踊りを作れたら、と思ったんです。
幸四郎 説明するのが難しいのですが、理想を言えば47人全員が主役という作品を作ろうと思っていますので、誰が何の役かと聞かれたら、僕も含めてあらゆる役をやります、と答えたいです。時には神であり、子どもであり、女性であり、また水や火、風であったり…。これは踊りでしかできない表現ではないかと思っています。
紫 そうなりますね。今までも幸四郎さんとはご一緒させていただき、踊ってきましたが、本当にいろんなことをさせられるんです(笑)。これまでの未来座公演ではとにかくよく走らされました。舞台の上で走らされ、見えていないところでも走らされ…(笑)。
幸四郎 (笑)。
紫 でもそうやって体を動かして全身で表現すると、例えば、1時間ぐらいの踊りでもどんどん追い込まれて、集中して自分が研ぎ澄まされていくんです。それがすごく楽しくて、今回もどんな踊りとなるのか、どんなことをさせられるのか(笑)、ドキドキしながら私にできることを精いっぱい務めたいと思います。
紫 全部です(即答)!
幸四郎 (爆笑)。
紫 いつもへとへとで。でもだんだん心構えができてくるんです。第1回目の「賽」では幸四郎さんが振り付けをされたときに、「またか!」と。でも「またか」といいながら笑っている自分がいるんです。毎回知らない自分を引き出してくれますし、舞台をご覧いただいた方にもそう言われるんです。そこはとても信頼していて、幸四郎さんに付いていけば、知らない自分を見出すことができ、それをお客さまにも感じていただくことができると思っています。
幸四郎 紫さんに関しては、疲れた紫さんとか、不安な顔をしている紫さんを見たことがないと思うんです。それを見てみたくてね(笑)。
紫 いつも言われるんですが、十分疲れていますから(笑)。
幸四郎 (笑)。紫さんはマグマみたいなものを抱えている人なので、それをどう発散するのかと期待しているので「…とりあえず、走るか!」ということになりがちで(笑)
紫 本当にひどいんですから(笑)!
幸四郎 初めて見たのは「鏡獅子」か。(18代目)中村勘三郎のおじさんが、歌舞伎座で「鏡獅子」をやったときに、紫さんが胡蝶役をやっていて、舞台稽古でものすごく衝撃を受けたんです。それがきっかけで自分も踊りをやろうと思ったぐらい。
紫 小学5年生か6年生ぐらいかなあ。私も子どものときから幸四郎さんの舞台を拝見していて、年齢も近かったんですが、子どもなのに子どもっぽくない、大人っぽさを感じていました。その後、中学、高校時代におはやしの稽古場でご一緒したりする機会があったんですが、全然しゃべらないんです。それなのにつづみを打ち始めるとものすごく洗練されていて、稽古の先生も「とにかく素晴らしい」って褒めていて、ああいうふうにならないと、もっと稽古をしないと、と思っていました。その後、舞台を拝見したときは、舞台の中で華やかに存在する姿にどこか憧れていました。
幸四郎 紫さんの踊りには、研ぎ澄まされたものを感じていて、それで美しさがある。何かを信じてやっているという姿がすてきだなと思っています。例えるなら小刀。何かが凝縮されている感があります。
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