【インタビュー】舞台 未来座 祭(SAI)「夢追う子」松本幸四郎×尾上紫「人間が持っているエネルギーを発して届けたい」

2020年4月27日 / 05:30

 2021年6月に東京・国立劇場小劇場で第4回日本舞踊未来座 祭(SAI)「夢追う子」が上演される。本公演は、20年6月に同所で上演される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を予防する観点から公演が延期となったもの。「日本の祭」を日本舞踊で表現し、祭る、祝う、競うを踊る作品となる。具体的にはどのような内容となるのか、出演予定だった松本幸四郎と尾上紫(ゆかり)に話を聞いた。(※このインタビューは3月に行われた)

松本幸四郎(左)と尾上紫

-今回のSAIは「祭」がテーマで、その背景にはオリンピックの存在があるそうですが。

幸四郎 新作舞踊を発表する場として、毎年6月に「未来座 SAI」という公演をしているのですが、この「SAI」という言葉に意味を持たせようと考え、1回目は「賽」、2回目は「裁」、3回目は「彩」という文字を当てました。さて4回目はどうしようかと思ったとき、恐らく一番最初に思い浮かぶであろう「祭」で行こうと思いました。折しも東京オリンピックがありますが、スポーツというものは競い、まつるものであり、「踊り」にも、競う踊りや物を投げる踊り、泳いだり飛んだりする踊りもあります。最終的には天(神)に向かって舞う、という点でスポーツと踊りは共通するのではないかと考え、思いっきり体を動かす踊りを作れたら、と思ったんです。

-幸四郎さんは、今回は構成・演出だけでなく、出演もされるそうですが、具体的にはどのような役を務めるのですか。

幸四郎 説明するのが難しいのですが、理想を言えば47人全員が主役という作品を作ろうと思っていますので、誰が何の役かと聞かれたら、僕も含めてあらゆる役をやります、と答えたいです。時には神であり、子どもであり、女性であり、また水や火、風であったり…。これは踊りでしかできない表現ではないかと思っています。

-ということは、紫さんもあらゆる場面にあらゆる役どころで登場するんですか?

 そうなりますね。今までも幸四郎さんとはご一緒させていただき、踊ってきましたが、本当にいろんなことをさせられるんです(笑)。これまでの未来座公演ではとにかくよく走らされました。舞台の上で走らされ、見えていないところでも走らされ…(笑)。

幸四郎 (笑)。

 でもそうやって体を動かして全身で表現すると、例えば、1時間ぐらいの踊りでもどんどん追い込まれて、集中して自分が研ぎ澄まされていくんです。それがすごく楽しくて、今回もどんな踊りとなるのか、どんなことをさせられるのか(笑)、ドキドキしながら私にできることを精いっぱい務めたいと思います。

-ちなみに過去の公演で「これはかなりヘビーだったな」と思うものは?

 全部です(即答)!

幸四郎 (爆笑)。

 いつもへとへとで。でもだんだん心構えができてくるんです。第1回目の「賽」では幸四郎さんが振り付けをされたときに、「またか!」と。でも「またか」といいながら笑っている自分がいるんです。毎回知らない自分を引き出してくれますし、舞台をご覧いただいた方にもそう言われるんです。そこはとても信頼していて、幸四郎さんに付いていけば、知らない自分を見出すことができ、それをお客さまにも感じていただくことができると思っています。

幸四郎 紫さんに関しては、疲れた紫さんとか、不安な顔をしている紫さんを見たことがないと思うんです。それを見てみたくてね(笑)。

 いつも言われるんですが、十分疲れていますから(笑)。

幸四郎 (笑)。紫さんはマグマみたいなものを抱えている人なので、それをどう発散するのかと期待しているので「…とりあえず、走るか!」ということになりがちで(笑)

 本当にひどいんですから(笑)!

-お二人はいつから互いのことを知ったんですか。

幸四郎 初めて見たのは「鏡獅子」か。(18代目)中村勘三郎のおじさんが、歌舞伎座で「鏡獅子」をやったときに、紫さんが胡蝶役をやっていて、舞台稽古でものすごく衝撃を受けたんです。それがきっかけで自分も踊りをやろうと思ったぐらい。

 小学5年生か6年生ぐらいかなあ。私も子どものときから幸四郎さんの舞台を拝見していて、年齢も近かったんですが、子どもなのに子どもっぽくない、大人っぽさを感じていました。その後、中学、高校時代におはやしの稽古場でご一緒したりする機会があったんですが、全然しゃべらないんです。それなのにつづみを打ち始めるとものすごく洗練されていて、稽古の先生も「とにかく素晴らしい」って褒めていて、ああいうふうにならないと、もっと稽古をしないと、と思っていました。その後、舞台を拝見したときは、舞台の中で華やかに存在する姿にどこか憧れていました。

幸四郎 紫さんの踊りには、研ぎ澄まされたものを感じていて、それで美しさがある。何かを信じてやっているという姿がすてきだなと思っています。例えるなら小刀。何かが凝縮されている感があります。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上松也「金田一耕助を演じる喜びがふつふつと」奥智哉「今の時代にふさわしい作品に」名作ミステリー映画で共演『八つ墓村』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 横溝正史原作の名作ミステリーが、令和の時代によみがえる!これまで繰り返し映像化されてきた『八つ墓村』が装いも新たに映画化され、9月18日から全国公開となる。  岡山県の山奥にひっそりとたたずむ八つ墓村で起きる連続殺人の謎に、名探偵・金田一 … 続きを読む

有村架純、石田ひかり、姫野花春「見終わった後ですごく幸せな気持ちになれる映画です」『さとこはいつも』【インタビュー】

映画2026年9月18日

 沖田修一監督が、年齢も育った環境も異なる3人の「さとこ」という女性の人生が交差していく様子をオリジナルストーリーで描いた『さとこはいつも』が、9月18日から全国公開。本作で、35歳の沙都子を演じた有村架純、55歳の里子を演じた石田ひかり、 … 続きを読む

見上愛「樹里ちゃんは周りを安心させる空気感を持っている」上坂樹里「愛さんが私を直美にしてくれました」主演の2人が撮影を振り返る【連続テレビ小説「風、薫る」インタビュー】

ドラマ2026年9月17日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「風、薫る」。田中ひかるの著書『明治のナイチンゲール 大関和物語』を原案に、明治時代、当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込んだ一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)という2人のナースの冒険物語 … 続きを読む

丸山隆平「きっと誰も見たことがないものになる」 舞台「water」で挑む半自伝的作品【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年9月14日

 丸山隆平と、演劇団体マームとジプシーの主宰を務め、劇作家・演出家として注目される藤田貴大が企画し、作り上げる舞台「water」が9月27日から上演される。本作は、丸山の記憶の断片を散りばめながら、藤田の視点で見つけた京都という土地、そして … 続きを読む

倉悠貴 豊臣兄弟を支える軍師・黒田官兵衛を好演中「最後までしっかり演じ切りたい」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年9月13日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=羽柴秀長/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。劇中、軍師 … 続きを読む

page top