【インタビュー】映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』夏帆“20代の代表作”にする気概で真っ向勝負!「自分をさらけ出す挑戦でもあった」

2019年10月10日 / 14:27

 「今までで一番やりたい役に出会えた」。夏帆が充実感にあふれた表情を見せる作品は、いつの間にか大人になってしまい、いろいろな葛藤を抱えながらも懸命に生きる全ての人たちに送る、共感度MAXの映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(10月11日公開)。しかし夏帆といえば、『天然コケッコー』(07)、『海街diary』(15)など、過去にもさまざまな素晴らしい作品や役と巡り合ってきている。本作に特別な思いを寄せる理由とはなんだろうか…?

 上手に生きているように見えて、実は不器用で、心は完全にすさみ切ったCMディレクター砂田(夏帆)が、自由奔放な“秘密”の友達・清浦(シム・ウンギョン)を連れて、祖母の見舞いのために大嫌いな地元・茨城に帰り、本当の自分を見つけて成長していく姿を描いた本作は、『嘘を愛する女』(18/中江和仁監督)、『ルームロンダリング』(18/片桐健滋監督)など、新進気鋭の若手映像作家を生み出すプロジェクト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」で、2016年審査員特別賞に輝いた。CMディレクターとして活躍する箱田優子の第1回監督作だ。

CMディレクターの砂田を演じた夏帆

-「今までで一番やりたい役に出会えた」と感じたそうですが、その真意を聞かせてください。

 今の自分で真っ向から勝負して、20代の代表作になるような作品を作りたいと考えていたときにこの映画と出会いました。オファーを受けた当時というよりは、演じているうちに砂田と自分に重なる部分が多いと感じて他人とは思えず、徐々に「こういう役をやりたかったのかもしれない…」と思うようになりました。

-重なる部分とは?

 いろいろあります。自分ではうまくやっているつもりでも、実はできていない不器用なところや、子どもの頃に思い描いた自分になれているのか? という葛藤、気がつけば自分も親も年を取り、祖父母は死に向かっていて、その時間の流れを止められないことに焦っているところなどが重なります。

-人生や仕事に対しても迷いや悩みはありますか。

 そうですね。20代になってからずっと、この先どう生きるべきか? と考えているし、どういうふうに仕事と向き合い、どんな役をすべきか、そして自分に合うものは何だろう、自分にしかできないものは何だろう、などと考えています。そんな迷いを抱えているからこそ、砂田は今の自分にしか演じられなかったのかもしれません。

-演じる中で、ご自身と砂田がシンクロする瞬間もあったのでしょうか。

 今回は他人を演じるというよりは、自分をどれだけさらけ出せるか、という挑戦でもありましたが、やはり重なるところが多いからか、だんだんと砂田と自分の境目があいまいになっている感じはありました。

-ロケハンにも同行されたと聞きました。力の入れようを感じますね。

 ロケハンには、ただ付いていっただけです(笑)。というのも、砂田という役は箱田さんが投影されているし、最初は撮影で箱田さんのご実家を使うかもしれないという話があったので、箱田さんと一緒に地元に行って、そこの空気を感じたいと思いました。結局、撮影でご実家は使いませんでしたが、クランクイン前に箱田さんのプライベートの顔を見ることで役作りにつながったのでよかったです。

-共感性が高く、心にしみるせりふもたくさんありますが、夏帆さんにとって印象的なものはどれでしょうか。

 砂田が愛想笑いをしているときに、スナックのママに「かわいいって言われるかもしれないけど、ブスだかんね」と言われるシーンは印象的でした。たまに、初対面なのに、こちらがハッとするような確信づいたことを言ってくる人っていますよね。自分はうまく立ち振る舞っているつもりでも、実はそれとは裏腹の心がバレている…みたいな。皆さん見ていてドキッとするかもしれませんね。

-“韓国の至宝”と呼ばれるシムさんとの共演はいかがでしたか。

 とてもすてきな方でした。役への理解が深く、それでいて自由に演技をされている姿が素晴らしかったです。アドリブの入れ方も絶妙で勉強になりました。今回は全編通してアドリブが多かったので、掛け合いも楽しかったです。

-砂田は地元に戻ることで人生の転機を迎えますが、夏帆さんにとって女優としての転機となった作品は何でしょうか。

 10代の頃に出演した『天然コケッコー』です。もともと女優を目指して芸能界に入ったわけではなかったけど、この作品を通して演じることが好きになりました。今でも「あの作品はいいよね」と言ってもらうことも多くて、そういう評価をしてもらえる作品は少ないので、転機になった作品と言えます。

-順風満帆の女優人生に見えますが、挫折しそうになったときもあるのでしょうか。

 大きな失敗をしたとか、誰かに何かを言われたとかではないですが、数年前にいろいろなことが重なり、仕事を続けることが難しいな…と挫折しそうになったことはあります。でも、10代からこの仕事をしてきて、学歴も職歴もないし、この世界以外のことは何もできないし、やりたいことも見付からなくて、だったらもうちょっとここで頑張ってみようと思いました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『六人の嘘つきな大学生』(11月22日公開)  大手エンターテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用の最終選考に残った6人の就活生への課題は「6人でチームを作り、1カ月後のグループディスカッションに臨むこと」だった。  全員での内定獲得 … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top