広瀬すず「この女性たちの化学反応は一体何なんだという、すごく不思議な感覚になります」『遠い山なみの光』【インタビュー】

2025年9月9日 / 10:15

-年を取ってからの悦子を見て、いろいろとふに落ちたところがあったと聞きましたが。

 そうですね。羊さんの悦子さんを通して見ると、被爆体験にはこういう形もあるのかという痛みを突きつけられるような感じがしました。多分、人それぞれに見え方や感じ方や最後に残るものは違うと思いますが。答えがないからこそ、ぜひ見て、知っていただいて、感じていただけたらと思います。

-吉田羊さんの演技を見てどのように感じましたか。

 悦子さんが30年の間に何を見て、何を考えていたのか。ニキと話している時も、ずっと相手を真っすぐに見続けている。そこに何が見えていたのかをすごく知りたくなりました。同じ役と言っても、共通認識も含めて共有することがほとんどなかったので、ほんとに作品を見てから、こういった悦子さんだったんだというのを知ったほどでした。自分が知っている自分自身の悦子さんとは全く違う人物のように感じて、その痛みが想像できたので、見る人にもストレートに届くのではないかと思いました。

-この映画も、最近の『ゆきてかへらぬ』もそうでしたが、大人の女性の役が増えてきたことについてはどう思いますか。

 10代からこのお仕事をさせてもらって、本当にこの世界しか知らないので、自分の人生経験と頂く役とのつり合いが取れていないような気もします。今回も旦那さんを支える、昔ながらの夫婦の形みたいなものがありましたが、そうした経験も全くないので…。まだ学園物をやっていた方が感性が近いのですが、実際は部活なども多くは経験していないので…。自分の人生経験と合っていないと思うことが圧倒的に増えてきて、知らない世界ばかりなので、大丈夫かなと思うことが多いです。10年前は学園物や青春物の先頭にいるようなパワフルな女の子の役が多かったのですが、最近はそういう役はあまりないし、そうした変化を、面白いな、楽しいなと感じたり、今の自分はこういうことを求められているんだということが、年々変化しているのを知ることができるので、面白いのは面白いんですけど、知らない世界なので大丈夫かなと思う自分もいます。

-ではちょっと背伸びをしている感じなのですか。

 特に背伸びをしているわけではないんですけど、等身大でいても、人生経験が伴っていないというか、自分が生きていく上で、道を選択することに悩んだことがほとんどないという特殊な環境にいたからこそ、主婦の役でもOLの役でも、役を身近なものとして表現する難しい作業だからこそ、最近は役をすんなりと受け入れることが減ったような気がします、それはそれで作品について考えたりする時間が増えて、楽しいのは楽しいのですけど、どうしようかなと思ってしまうこともあります。

-完成作を見た印象はどんな感じでしたか。

 不思議なことに、2人の悦子さんと娘のニキと佐知子さんの顔がすごく重なって見えてきて。特に、(ニキ役の)カミラ(・アイコ)さんと二階堂さんが似ているというのもあるのかもしれないですけど、佐知子さんとニキが重なって見えて、それが佐知子さんの娘の万里子にもつながっていくと思うと、この女性たちの化学反応は一体何なんだみたいな。何か4人が重なって見えてくることが、すごく共鳴しているようにも感じられて、それが1人の人物にも見えるし、すごく不思議な感覚になりました。だからトリッキーな感じで受け取られるかもしれませんが、すごく素直に寄り添える作品でもあると思います。人それぞれに、答えも見えているものも感じるものも違うと思うので、公開されたら、いろんな人の意見や言葉を聞きたいと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2025 A Pale View of Hills Film Partners

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

長尾謙杜&山田杏奈&石原慎也(Saucy Dog)が話題の映画でタッグ!「主題歌が主人公たちの気持ちを表している」『恋に至る病』【インタビュー】

映画2025年10月24日

-そうやってお2人が繰り広げる物語がドラマチックな分、エンディングに流れる「奇跡を待ってたって」が心に染み入ってきます。 石原 映画の内容をきちんと踏まえた曲にしたかったので、エンディングが始まって何秒で風景が変わり…といったことを細かく計 … 続きを読む

市毛良枝「現代の家族のいろんな姿を見ていただけると思うし、その中で少しでもホッとしていただけたらいいなと思います」『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』【インタビュー】

映画2025年10月23日

-文子が生涯学習の講座に行きますが、生涯学習についてはどう思いますか。  実は、以前、静岡県の生涯学習の委員をやっていました。それから最初に出した『山なんて嫌いだった』という本の後書きに「いつか少し時間ができたら大学に行って勉強してみたい」 … 続きを読む

林裕太「北村匠海さんや綾野剛さんとのつながりを感じました」期待の若手俳優が先輩2人と作り上げた迫真のサスペンス『愚か者の身分』【インタビュー】

映画2025年10月22日

-その場でとっさに反応したように見える迫真のお芝居でした。では、マモルにとってもう一つ大事な要素である北村さん演じるタクヤとのバディ感は、どのように作っていったのでしょうか。  北村さんと一緒に現場で作っていった感じです。僕が最初、緊張して … 続きを読む

南琴奈「今までに見たことがないような映画を楽しんでいただけたらと思います」『ミーツ・ザ・ワールド』【インタビュー】

映画2025年10月22日

-ライと似ているところや共感するところはありましたか。  全てを理解することはできないですけど、すごく分かる部分も多かったです。もちろん私は今死にたいわけではありませんが、ライさんの死に対する考え方も理解できるところはあって、言っていること … 続きを読む

timelesz・橋本将生「『大切な人を守りたい』という気持ちは共感できる」 菊池風磨のアドバイスも明かす【インタビュー】

ドラマ2025年10月21日

-恒松さんが演じるピュアで心優しい澪と、どこかあやしげな魅力を持つ冷静でクールな眞希、この2つの人格の女性のうち、橋本さんはどちらに引かれますか?  どっちだろう、ちょっと考えてもいいですか……!? うーん……どちらも魅力的です(笑)。 - … 続きを読む

Willfriends

page top